金融市場NOW

英国議会 3か月のEU離脱期限再延期法案が成立

2019年09月10日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

ジョンソン首相は10月中旬の解散総選挙の実施を再提案も否決

  • 英国議会ではEU(欧州連合)離脱期限の3か月の再延期を政府に強制する法案が成立。ジョンソン首相は10月15日の解散総選挙を2度提案するも否決。
  • 今後解散総選挙に向かうとの見方が多いが、離脱問題解決の糸口を見つけ出すことができるか。

再延期法案が成立

英国議会は、EU離脱期限の再延期法案を成立させました。この法案は政府が(EUと合意できず)合意なき離脱を行う場合には10月19日までに議会の承認が必要となり、期限を過ぎた場合には、2020年1月31日までの離脱期限の再延期をEUに申し出なければならないというものです。

10月31日の離脱期限を厳守するとしていたジョンソン首相は、国民に信を問うため解散総選挙を2度提案しました(下院の2/3の賛成が必要)が否決されました。野党勢力は、ジョンソン首相が再延期法案を無視し、EUへ離脱延期申請を拒否することなどを警戒していることから、合意なき離脱を完全に見送ることが確実となれば、総選挙を支持する姿勢を示しています。ただし、ジョンソン政権の幹部は「法令遵守は当然だが、注意深く再延期法案の法令解釈(必ず守らなければならないのかなど)をする必要がある」と発言しています。

解散総選挙の可能性は高まっている

離脱が再延期されたとしても、離脱問題が解決するわけではないことから、最終的には解散総選挙に向かうとの見方が大勢です。現在の政党支持率(グラフ1)などから、選挙結果は以下の状況が想定されます。

  1. 保守党が単独過半数に及ばずとも僅差で勝利⇒現連立政権と同じ構図なり、混沌とした状況の長期化が想定されます。
  2. 労働党が僅差で勝利し、自由民主党などと連立政権樹立⇒EU残留を選択肢に含む再国民投票の実施や穏健な離脱方針へ変更される可能性があります。
  3. 保守党が圧勝し単独政権樹立⇒離脱協定合意の障害となっているバックストップ条項(アイルランドとの物理的国境の再発防止条項)削除に拘るDUP(民主統一党)と連立が解消されるため、EUとの再交渉余地も生まれるものと思われますが、交渉で妥協点が見つけられなければ、合意なき離脱となる可能性もあります。

一連の採決で政権側は敗北しましたが、保守党は造反した議員21名を除名しました。これにより議員ごとにバラついていた党の投票行動がまとまり、党の方針が明確になったと見られています。“はっきりしない党”とみなされ、強硬離脱を訴えるなど主張が明確なブレグジット党などに流れていた有権者の支持が保守党へと戻ってくるとの見方も出てきました。再延期法案が可決した直後4日のポンドは上昇しました(グラフ2)が、議会が再開する10月14日に向けて、解散総選挙などを巡る与野党の駆け引きが一層激しくなることが想定され、市場が神経質に反応する日々が続くものと思われます。

グラフ1:各政党支持率

  • 出所:YouGovのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:英国株とポンドの推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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