国内株式議決権行使の方針と判断基準
当社では、「受益者」の中長期的なリターン向上とリスクの低減を目的とした調査・投資活動を運用プロセスの中核としています。具体的には、企業との対話を活用し、投資先企業の企業価値に影響を与えるサステナビリティ(中長期的な持続可能性)を把握するために、当社独自のESG評価手法を活用し、中長期的な視点での企業評価・投資判断を行っています。
この運用プロセスで重要となるのは、「企業との対話」です。当社では、「議決権の行使」も「企業との対話」のひとつの手段として位置付けていますが、実りある対話が、投資先企業の市場評価向上、環境・社会課題へのレジリエンス(強靭性)の強化、そして、企業価値向上へと繋がり、受益者と投資先企業の共創(Co-Creation)が果たされると考えています。また、このような取り組みは、投資先企業の環境・社会課題解決力の向上を通じ、サステナブルな社会の実現にも貢献できると考えています。
このような考えのもと、国内株式議決権行使に関し、方針ならびに判断基準を以下のとおり定めています。但し、投資先企業との対話等により、定型的・画一的な判断ではなく、より実態に即した判断を行うよう努めています。
2024年2月、「国内株式議決権行使の方針と判断基準」(以下、基準)を改訂しました。改訂後の新基準は2024年6月の株主総会から適用となります。なお、主な改訂内容につきましては下記添付の「基準<2024年6月以降>」をご参照ください。
- 以下の内容は基準<2024年6月以降>を掲載しています。
基準<2024年5月まで>は上記の印刷用PDFをご覧ください。
1.剰余金処分
方針
- 剰余金処分案については、株主還元のベースである配当の利益に対する割合(配当性向)や
資産の有効活用を示す長期的な資本収益性が市場の平均水準を超えている場合、賛成します。
また、過大な金融資産を保有する企業においても十分な株主還元(配当+自社株買い)を実施する場合には賛成します。 - また、企業の事業サイクルや成長段階において、適正な内部留保・株主還元の水準は
異なると考えているため、中長期視点に重点を置いた調査や対話(エンゲージメント)を通じ、
将来の資金需要等を踏まえた上で、賛否の行使判断を行うよう努めます。
<判断基準>
以下の基準に該当する場合、原則、反対します。
(1)配当性向
- 配当性向25%未満、かつ、資本収益性が長期的に市場平均以下(直近3期連続でROEが上場企業の市場中位以下)の場合
- 直近3期連続で配当性向が100%以上あるいは赤字配当(但し、著しい業績低迷(直近3期連続経常損失あるいは純損失)に該当する時は3期未満でも対象)の場合
- 監査意見が「適正意見」でない場合
- 但し、特別損益等の一時的な影響で、配当性向が過少(25%未満)もしくは過大(100%以上)となっていると判断できる場合、一時的な影響を勘案した上で判断を行います。
<上記に該当するものの例外的な判断を行い賛成する場合の考え方の例>
- 中長期の業績予想において、ROEの向上を予想し、予想したROEが市場平均を上回ると判断できる場合(1.に対応)
- 配当性向の改善が期待でき、上記の配当性向に係る基準を上回ると判断できる場合(1.に対応)
- 財務体質が脆弱で、配当余力が乏しい場合(1.に対応)
- 内部留保が十分で、過大配当(配当性向100%以上・赤字配当)が事業に悪影響を及ぼす恐れがないと判断できる場合(2.に対応)
(2)過大な金融資産を保有する企業(※)
上記に該当し、総還元性向(配当+自社株買)が50%未満の場合
- 「過大な金融資産を保有する企業」とは、
<自己資本比率:50%以上、かつ、ネット金融資産(現預金+有価証券-有利子負債)/総資産:20%以上、かつ、ネット金融資産/売上高:30%以上>
の企業
- 但し、総還元性向が50%未満の企業においても、資本収益性が長期的に市場の上位(直近3期連続でROEが上場企業の上位25%以上)、かつ、配当性向が25%以上の場合、賛成します。また、一時的な影響で、総還元性向が過少となっていると判断できる場合、一時的な影響を勘案した上で判断を行います。
<上記に該当するものの例外的な判断を行い賛成する場合の考え方の例>
- 今後、企業価値向上に必要な資金需要の発生等が予想でき、上記のネット金融資産に係る基準を下回る可能性が高いと判断できる場合
- 将来の株主還元についても改善が予想され、上記の総還元性向に係る基準を上回る可能性が高いと判断できる場合
2. 取締役の選任
方針
- 取締役会を構成する取締役は、企業の中長期的な企業価値最大化を支えるコーポレートガバナンスにおいて
中心的な役割を果たすとともに、戦略や経営の執行に責任を持つ経営陣に対し、実効性の高い監督を行うことが期待されています。
このような観点から、取締役会において建設的な議論が行われる体制・規模、経営陣から独立した
適切なモニタリング体制があると判断される場合には取締役選任議案に賛成します。
適切なモニタリング体制構築において代表取締役は最も重要な役割を担っていると考えています。また、取締役会の監督において、「企業価値向上に向け、資本コストを意識し、資本効率向上に向けた経営ができているか」「企業価値に影響を与えるサステナビリティ要因を、適切に識別し、管理できているか」といった事項は、特に重要と考えています。
<判断基準>
以下の基準に該当する場合、原則、反対します。
(1)取締役会の増員・規模
- 以下の事由以外で、取締役(社外取締役を除く)の増員が行われ、その理由が明確かつ合理的に説明されていない場合の代表取締役の選任
- 指名委員会等、及び監査等委員会設置会社への移行
- 持続的な業績拡大
- 合併、統合、買収などによる増員
- 不可抗力の事情で前年に欠員となっており、かつ、その事情について、株主総会関連書類に開示がある場合
- 増員後も取締役会の過半が独立した社外取締役で構成されている場合
- 女性の社内取締役増員に伴う、取締役(社外取締役を除く)の増員(1名まで)
- 取締役会の人数が著しく多い(20名超)場合の代表取締役の選任(但し、監査役会設置会社においては15名超とする)
<上記に該当するものの例外的な判断を行い賛成する場合の考え方の例>
- 新規分野進出、新規の規制(レギュレーション)導入に伴う新部門設置や大幅な人員増加などモニタリング機能拡充の必要性が高まるなどの理由がある場合(1.に対応)
- 取締役会の多様性の拡大(1.ⅵ以外の場合)が、実効性向上に資すると判断できる場合(1.に対応)
- 合併・統合・買収による一時的な増加や事業拡大に伴うなどの理由がある場合(2.に対応)
(2)取締役会の構成
- 独立した社外取締役が2名未満の場合の代表取締役の選任
- 支配株主(親会社を含む)が存在する場合で、独立した社外取締役が2名未満、または、1/3未満の場合の代表取締役の選任
- プライム市場上場企業において、独立した社外取締役が2名未満、または、1/3未満の場合の代表取締役の選任(2025年6月から全上場企業に適用対象を拡大)
- プライム市場上場企業において、支配株主(親会社を含む)が存在する場合で、独立した社外取締役が過半数いない場合の代表取締役の選任(2025年6月から全上場企業に適用対象を拡大)
- 「独立性の基準」に関しては、「(3)社外取締役の選任」を適用
- プライム市場上場企業において、女性取締役が存在しない場合の代表取締役の選任(2025年6月から全上場企業に適用対象を拡大)
<上記に該当するものの例外的な判断を行い賛成する場合の考え方の例>
不可抗力の事情で欠員等の理由がある場合
(3)社外取締役の選任
- 社外取締役候補者の独立性に疑義がある(以下の「独立性基準」に抵触する)場合の社外取締役の選任
【独立性基準】
- 金融商品取引所に独立役員として届けられていない、又は、届け出の予定がない場合(株主総会関連書類<事業報告書を含む>で確認)
- 以下の出身者(現職あるいは退職後3年以内)(※1)
・「主要な借入先」(事業報告書記載)(※2)
・大株主(5%以上の株式保有) - 選任時点で、在任期間が10年超の候補者
- 社内取締役に三親等内の親族を持つ場合や、その他利害関係から相応しくないと考える候補者
- 兼務等の理由から過去の職務遂行が不十分(取締役会への出席率75%未満)である場合の社外取締役の再任(※3)
- 「現職あるいは退職後3年以内」とは、基準が該当する企業あるいは該当企業が属するグループ企業(子会社・関連会社)の「現職あるいは退職後3年以内」を意味します。
- 但し、借入金依存度が極めて少ない場合は、経営に与える影響度が小さいと考えられるため、“独立性あり”と判断します。
- 但し、不可抗力の事情があり、その事情が解消され、新年度の職務遂行に支障がないことが株主総会関連書類で開示されている場合は2.に該当しないと判断します。
<上記に該当するものの例外的な判断を行い賛成する場合の考え方の例>
経営再建中の企業で、外部サポートの必要から大株主や主要借入先出身者が社外取締役として派遣されるなど、合理的な理由がある場合(1.に対応)
(4)業績との関連
在任している期間において以下のいずれかに該当する場合の取締役の再任
- 著しい業績低迷(直近3期連続経常損失あるいは純損失)に該当する場合
- 資本収益性が長期的に低迷(直近3期連続でROEが上場企業の下位25%)、かつ、株価が低迷(直近3期の株価リターンが業種平均以下)している場合
- 但し、業績低迷・資本収益性低迷が一時的な要因でもたらされていると判断できる場合は、一時的な影響等を勘案した上で判断を行う。
<上記に該当するものの例外的な判断を行い賛成する場合の考え方の例>
- 中長期の業績予想において、業績の低迷を脱すると判断できる場合
- 天災(地震、台風等)等、経営でコントロール不能かつ一時的な大きな損失が業績悪化の原因である場合
(5)資本コスト・株価を意識した経営への対応
PBR(株価純資産倍率)が1倍未満で、東京証券取引所の「資本コストや株価を意識した経営の実現」への対応がない場合の代表取締役の選任(2025年6月から適用:2025年3月末以降の決算期末において確認)
- 資本コストを意識し、資本効率向上に努めることは、企業価値向上につながることから、すべての投資先企業において重要な取り組みと認識しており、投資家としても、建設的な対話により、その取り組みをサポートする必要があると考えています。一方、市場評価が低い企業(PBRが1倍未満の企業)においては、このような取り組みに努めることは、特に重要と考えているため、上記の基準を定めています。
- 「資本コストや株価を意識した経営の実現」への対応とは、東京証券取引所による開示要請に対応していること(「開示済」のステータス)を意味します。
(6)気候変動リスクに向けた対応
当社のポートフォリオにおいて気候変動リスク面で特に課題のある企業とClimate Action100+の対話先企業において、「最低限の対策」の開示がされていない場合(将来的には有価証券報告書の開示のみで判断)の代表取締役の選任
- 「気候変動リスク面で特に課題のある企業」とは、当社で運用するポートフォリオ(国内外の株式・社債)の持分排出量の上位約70%をカバーする企業
- 「最低限の対策」とは、スコープ1・2の排出量の開示、および、中間削減目標、2050年までの妥当な目標(ネットゼロを目指した)の設定を意味しますが、将来的にはこの水準を引き上げます。
(7)政策保有株式
以下のすべての場合に該当し、「議決権行使判断時点で確認可能な有価証券報告書」で、政策保有株式(みなし保有株式を含む)の保有額が純資産の20%以上の場合の代表取締役の選任(将来的には、対純資産の保有比率の水準を引き下げる)
- 資本収益性が長期的に市場平均以下(直近3年連続でROEが上場企業の中位以下)
- 有価証券報告書で、今後、政策保有株式の基準を満たすと判断する十分な「保有株式の縮減の方針」と「進捗状況」の開示がない
- 「議決権行使判断時点で確認可能な有価証券報告書」とは、現状では、前年の有価証券報告書となる
- なお、有価証券報告書で開示されている「個別銘柄の保有理由」が合理的と判断される場合、これを勘案した上で、政策保有株式の保有額を算出し、判断を行う
(8)重大な反社会的行為の有無
取締役会が責任を負うべき事案で、企業の利益に重大な影響を及ぼす、または、社会的な影響が大きいと考える重大な反社会的行為(違法行為、不祥事等)が発生している場合の取締役候補全員の再任
- 但し、取締役の個人的な反社会的行為の場合については、当該取締役のみに反対します。
<上記に該当するものの例外的な判断を行い賛成する場合の考え方の例>
再発防止体制が整えられているなど、再発の蓋然性が低いと判断できる場合
(9)取締役会決議のみで決定した重要事項
以下の場合の代表取締役の選任
- 剰余金処分案が総会議案として付議されない場合で、その内容が反対すべき内容の場合
- 監査役の減員がある場合
- 但し、監査機能に支障(決算承認の遅れ、不祥事の発生等)がないと判断できる場合は賛成します。
(10)代表取締役が付議されていない場合の対応
(1)、(2)、(5)、(6)、(7)、(9)に該当する企業で、代表取締役の選任議案が付議されていない場合には、付議されている取締役全員に反対します。
3.監査役・監査等委員の選任
方針
- 監査役・監査等委員の選任では、企業経営リスク抑制の観点から、取締役の職務執行の監督、
反社会的行為の未然防止、外部会計監査人との協業による適正な財務報告の実施等を行うことが
可能な強固な独立性と監督機能があると判断される場合には賛成します。
<判断基準>
以下の基準に該当する場合、原則、反対します。
(1)重大な反社会的行為の有無
監査役・監査等委員の候補が責任を負うべき事案で、企業利益への重大な影響を及ぼす、または、社会的な影響が大きいと考える重大な反社会的行為(違法行為、不祥事等)が発生している場合の監査役・監査等委員の再任(全員)
- 但し、監査役・監査等委員の個人的な反社会的行為の場合については、当該の監査役・監査等委員のみに反対します。
(2)社外監査役の選任
- 社外監査役候補者が「独立性基準」に抵触する場合
(「独立性基準」は、社外取締役の「独立性基準」と同じ) - 兼務等の理由から、過去の職務遂行が不十分(監査役会及び取締役会への出席率75%未満)である場合
- 但し、不可抗力の事情があり、その事情が解消され、新年度の職務遂行に支障がないことが株主総会関連書類で開示されている場合は2.に該当しないと判断します。
- 補欠社外監査役候補者が社外取締役候補としても上程されている場合
(3)その他
補欠社内監査役候補者が社内取締役候補としても上程されている場合の補欠社内監査役の選任
4.取締役報酬枠・賞与
方針
- 取締役報酬・賞与の体系は、企業価値向上の観点(企業業績向上、不正などの
重大な反社会的行為の抑止等)から経営者に対する適切なインセンティブ付与となっていると
判断できる場合には、取締役報酬の増加・賞与支払いに賛成します。
<判断基準>
以下の基準に該当する場合(「6.株式報酬・ストックオプション」の場合を除く)、原則、反対します。
(1)業績との関連
「当期経常損失あるいは当期純損失」である場合、または、資本収益性が長期的に低迷(直近3期連続でROEが上場企業の下位25%)している場合
<上記に該当するものの例外的な判断を行い賛成する場合の考え方の例>
- 中長期の業績予想において、業績の低迷を脱するものと判断できる場合
- 天災(地震、台風等)等、経営でコントロール不能かつ一時的な大きな損失が業績悪化の原因である場合
- リストラ過程の企業等で、外部から経営者を招聘する場合や監督機能拡充に伴う役員増員に伴い報酬枠拡大が必要とされる場合
(2)過少な株主還元
過少な株主還元を理由として、剰余金処分案に反対している場合(「1.剰余金処分」参照)
- 総会議案として付議されていない場合を含む
(3)重大な反社会的行為の有無
「2.取締役選任(6)重大な反社会的行為の有無」に該当する場合
(4)支給対象者
業績連動のある取締役報酬・賞与の支給対象者に、社外取締役など、モニタリングにおいて中立性が必要とされる者が含まれる場合
5.監査役・監査等委員の報酬
方針
- 企業経営の健全性確保・重大な反社会的行為の抑止のため、
監査役等には中立的な判断を行うことが期待されます。
監査役・監査等委員の報酬については、業績と連動しないこと(固定報酬)や
重大な反社会的行為がないと判断できる場合には賛成します。
<判断基準>
以下の基準に該当する場合(「6.株式報酬・ストックオプション」の場合を除く)、原則、反対します。
(1)重大な反社会的行為の有無
「3.監査役・監査等委員の選任(1)重大な反社会的行為の有無」に該当する場合
(2)業績連動
報酬が業績に連動する場合
6.株式報酬・ストックオプション
方針
- 株式報酬・ストックオプションは、株主価値の希薄化が一定程度に抑えられていることに加え、
中長期的な企業価値最大化の観点から、経営者(中立性を要請される社外取締役、監査役・監査等委員は除く)
に対する適切なインセンティブとなっていると判断できる場合には賛成します。
<判断基準>
以下の基準に該当する場合、原則、反対します。
(1)付与対象者・条件
- 付与対象者に、社外取締役、監査役など、モニタリングにおいて中立性が必要とされる者が含まれる場合
- 付与対象者、付与条件等の開示がないなど、発行の妥当性が判断できない場合
- 株式報酬型ストックオプション・特定譲渡制限付株式の場合で、権利行使可能な期間までが3年未満の場合
- 有償ストックオプション(株式報酬型ストックオプション以外)で、以下に該当する場合
- 権利行使価格が市場価格を下回るように設定されている場合
- 取締役会の判断で未行使分の行使価格等の引き下げなど重要な条件の変更を行うことが可能な場合
(2)希薄化
新株予約権行使により発行される株式が、発行済株式数に対して2%以上の希薄化をもたらす場合
7.退職慰労金
方針
- 退職慰労金は、取締役報酬と同様、中長期的な企業価値最大化の観点
(中長期的な企業業績の向上、反社会的行為の抑止)から、
経営者(中立性が必要となる社外取締役、監査役・監査等委員は除く)に対する
適切なインセンティブとなり、開示が十分に行われていると判断できる場合には賛成します。
<判断基準>
以下の基準に該当する場合、原則、反対します。
(1)支払対象者
退職慰労金の支払対象者に、社外取締役、監査役など中立性を必要とされている者が含まれている場合
- 但し、「退職慰労金制度廃止に伴う打ち切り支給」に関しては、中長期的な企業価値向上に資するインセンティブ体系への移行措置と考えられることから、下記の(2)(3)に該当しない場合には賛成します。
(2)業績との関連
- 著しい業績低迷(直近3期連続経常損失あるいは純損失)に該当する場合
- 資本収益性が長期的に低迷(直近3期連続でROEが上場企業の下位25%)、かつ、株価が低迷(直近3年の株価リターンが業種平均以下)している場合
<上記に該当するものの例外的な判断を行い賛成する場合の考え方の例>
- 中長期の業績予想において、業績の低迷を脱すると判断できる場合
- 天災(地震、台風等)等、経営でコントロール不能かつ一時的な大きな損失が業績悪化の原因である場合
(3)重大な反社会的行為の有無
「2.取締役選任(6)重大な反社会的行為の有無」に該当する場合
(4)支給額の開示
支給額の個別または総額が開示されていない場合
8.買収防衛策
方針
- 買収防衛策の導入・更新は、株主にとっては企業価値毀損のリスクが伴うため、その導入に関しては否定的に考えます。
<判断基準>
買収防衛策導入・更新議案には、原則、反対します。
- なお、反対すべき買収防衛策が導入・更新される場合で、別途、総会議案として付議されていない場合には、取締役候補全員(再任)に反対します。
9.自己株式
方針
- 自己株式取得は、配当とともに株主還元のための主要な手段と考えるため、
中長期的な株主価値最大化の観点から、企業価値向上または毀損防止の観点から
問題がないことを確認した上で、原則、賛成します。
<判断基準>
以下に該当する場合、原則、反対します。
- 特定の株主からの取得で、取得価格が市場価格を著しく(30%程度)上回る場合
- 発行済株式数の10%超の自己株式の取得、かつ、特定の株主(支配株主等)の影響力拡大を主な目的とする場合
- 流動性を著しく悪化させる場合
- その他、企業価値向上または毀損防止の観点から、妥当でないと判断される場合
10.組織関連
(合併、営業譲渡、営業譲受、会社分割、株式交換、株式移転・分割等)
方針
- 企業経営にとって合併などの組織再編は重要な施策と考えています。
従いまして、取引価格の妥当性(合併比率など)、取引手法、中長期経営計画などとの整合性を考慮し、
企業価値毀損リスクなどの問題がないと判断できた場合、
経営の状況に最も精通している経営者の判断に賛成します。
<判断基準>
以下のに該当する場合、原則、反対します。
(1)組織関連情報の不備
合併など組織的再編に対する客観的な評価資料が招集通知に掲載されていないなど、その妥当性が判断できない場合
(2)その他
企業価値の向上または毀損防止の観点から、妥当でないと判断される場合
11.資本政策関連
(第三者割当増資、減資、増資などの資本調達等)
方針
- 中長期的な企業価値最大化の観点から、設備投資や買収などの
重要な経営判断の執行を支える資本政策は重要な意味を持つものと考えています。
従いまして、企業価値向上または毀損防止の観点から問題がないことが判断できる場合には賛成します。
<判断基準>
以下の基準に該当する場合、原則、反対します。
(1)第三者割当増資
特定の者への有利発行(市場価格に対し90%程度未満の価格での発行)が企業価値の毀損防止の観点から妥当でないと判断される場合
- 事業提携、経営再建など中長期的な企業価値最大化の観点から前向きに活用されることもありますが、不公正な価格で新株が特定の者へ発行され、既存株主が経済的な不利益を被るリスクがあるため、「払込金額と算定根拠」に関する開示事項を点検した上で、慎重に判断します。
(2)一般財団法人への自己株式の拠出
一般財団法人への有利な価格(市場価格に対し90%程度未満の価格)による自己株式拠出の場合
- 買収防衛策と同様の効果を持ち、中長期的な企業価値毀損のリスクがあると考えているため、反対します。
(3)その他の資本政策(減資・増資等の資本政策)
資本政策が企業価値の増大または毀損防止の観点から妥当でないと判断される場合
- 但し、リストラ等の過程での資本再編成に伴う減資については、賛成します。
<上記に該当するものの例外的な判断を行い賛成する場合の考え方の例>
資本政策が企業価値向上または毀損防止の観点から問題ないと明確に判断できる場合
12.定款変更
方針
- 定款はその会社のコーポレートガバナンス・企業経営の仕組みの根本ルールを定めるものであり、
その設定および変更の目的が、中長期的な企業価値最大化に資する、
あるいは、企業価値の毀損を防ぐと判断できる場合は賛成します。
<判断基準>
以下の基準に該当する場合、原則、反対します。
(1)発行可能株式総数
- 発行枠拡大に伴う新株発行増資で、資金使途や増資目的が明確でない場合
- 反対すべき買収防衛策導入に伴う発行可能株式総数の拡大である場合
(2)剰余金配当決定権限の取締役会授権
以下のいずれかに該当する場合
(但し、中間配当決定権限の場合は以下に関わらず賛成)
- 過半数以上の独立した社外取締役が設置されていないこと
- 「1.剰余金処分案」で剰余金の処分に反対していること
- 従前からの配当政策を含む資本政策が信頼できないこと
- 株主総会による決議を排除していること
- 企業価値向上または毀損防止の観点から妥当でないと判断されること
(3)その他の定款変更に関する議案
- 取締役の解任決議要件加重である場合
- 取締役の定数枠拡大で、合理的な理由がない場合
- 会計監査人との責任限定契約の場合
<上記に該当しない議案についての個別に判断を行う考え方>
企業価値向上または毀損防止の観点を踏まえ、個別に判断します
13.会計監査人
方針
- 会計監査人は、監査役とともに株主に報告される適正な財務諸表作成において
大きな責任を有するものと認識しています。従いまして、経営陣からの独立性とともに、
適正な外部監査が行われる体制が会計監査人にあると判断できる場合には賛成します。
<判断基準>
以下の基準に該当する場合、原則、反対します。
- 過去に重大な問題(粉飾決算など)に関わり、かつ、改善に向けた対策が不十分と判断される会計監査人への変更の場合
- 会計監査人の変更で、変更理由について経営陣の恣意性が強く、合理性がない場合
- 会計監査人の独立性や適格性に問題がある場合
(代表取締役の親族であることが明らかな場合や、その他利害関係から相応しくないと判断できる場合等)
14.株主提案
方針
- 中長期的な企業価値向上の観点から個別に議決権行使の判断を行います。
<判断基準>
- 判断基準1~13において賛成すべき内容の株主提案である場合、原則、賛成します。一方で、企業価値向上に資することがないと判断される個別具体的な業務執行に関わる内容の場合や、明確性や具体性を欠いており提案内容の妥当性が判断できない場合等には、反対します。判断基準1~13に該当しない株主提案についても、中長期的な企業価値向上の観点から個別に判断を行います。
- 役員報酬の個別開示を促進する提案には、原則、賛成します。
- 顧問・相談役の廃止等に関する提案については、コーポレートガバナンス報告書で、元代表取締役の相談役・顧問の存在が確認できる場合で、指名・報酬委員会(任意含む)の過半が独立した社外取締役で構成、あるいは、議長が独立した社外取締役、のいずれかを満たさない場合、原則、賛成します。
- 気候変動に関連する提案について、下記のすべてを満たす場合には、原則、賛成します。
- TCFDなどの気候変動に関する開示を求める議案で、企業価値の観点で気候変動要因が重要であるにもかかわらず適切な内容の開示が行われていないと判断される場合
- 気候変動に関し、事業再編などの企業行動の変革を求める議案で、企業価値向上に資すると判断できない個別具体的な行動までを一義的に指定する内容でない場合
- 政策保有株式縮減に関連する提案については、資本収益性に課題があると判断される場合、原則、賛成します。また、政策保有株式の目的と検証の結果の開示を求める提案についても、企業の対応が不十分と判断される場合、原則、賛成します。
- 取締役・監査役選任の提案で、経歴等が不明な場合や提案根拠が乏しい場合は、原則、反対します。
- 有価証券報告書の総会前開示、役員報酬体系におけるクローバック条項の導入(法令上の違反に限定された事項のみ)や企業価値向上において重要と考えられる項目の考慮、筆頭独立社外取締役の選任などを求める提案については、企業の対応が不十分と判断される場合、原則、賛成します。
- また、「経営上の重要な契約」の開示を求める提案や自己株式の償却、株主資本コストの開示を求める提案については、企業の対応が不十分と判断される場合、原則、賛成します。
- 上記に該当しない株主提案についても、中長期的な企業価値向上の観点から個別に判断を行います。
- 議決権行使の実効性を確保するため、今後とも、必要に応じ方針と判断基準のアップデートを行います。