日本版スチュワードシップ・コードへの対応

私たちニッセイアセットマネジメント(以下、「当社」という)は、日本株運用において「受益者」の中長期的なリターン向上を目的とした調査・投資活動をプロセスの中核としています。具体的には、企業の経営ビジョンや経営戦略などに基づき、企業との対話・精査を経て中長期の業績予想を行い、企業価値評価を実施しています。

このプロセスにおいて重要となるのは「企業との対話」です。実りある対話が投資先企業の市場からの評価向上及び企業価値向上につながり、結果的に受益者と投資先企業の共創(Co-Creation)が果たされるものと確信しています。

こうした取り組みにより、当社は金融仲介機能を担う資産運用会社として、日本の経済・社会の発展に貢献していきたいと考えています。

以上の考え方は、日本版スチュワードシップ・コードの考え方と合致するものと考え、2014年5月にコード受け入れを表明しました。また、2017年5月に改訂されたコードについても、その7つの原則に賛同し、受け入れを表明しました。

今後とも責任ある機関投資家として自らのスチュワードシップ活動に必要となる能力の更なる向上を図るとともに、コードへの対応について毎年見直し・更新を行っていきます。


原則1

機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである

スチュワードシップ責任とは、『投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「受益者」の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任』です。

当社は、日本株運用においてスチュワードシップ責任を果たすため、以下の方針を策定しています。

  • 「企業との対話」を重視し、中長期的な視点での企業価値の評価・投資判断を行うよう努めます。
  • 「企業との対話」を実りあるものとするため、
    経営層との対話に重点を置き、企業活動への深い洞察と理解に努めます。
  • 「企業との対話」の場面では投資家としての意見を伝え、お互いの意見を交換することにより、
    企業価値の向上を実現し、受益者と投資先企業の双方がその恩恵を受けることができるよう努めます。
  • 議決権の行使を「企業との対話」のひとつの手段として位置づけ、
    スチュワードシップ責任を果たすよう努めます。

原則2

機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである

当社は、スチュワードシップ責任を果たすにあたり、利益相反について以下の方針を策定しています。

  • スチュワードシップ責任を果たすにあたっては、
    受益者のみの利益(投資先企業の企業価値の向上または毀損防止)を考慮します。
  • 利益相反が生じうる局面を具体的に特定し、議決権行使や対話において
    利益相反を実効的に防止する仕組みを構築することにより受益者の利益の保護に努めます。

当社では、スチュワードシップ活動の中で利益相反が生じうる局面については、具体的に以下の通り、特定しています。

  • 利益相反の生じる可能性が特に高い局面
    当社の利害関係人等(当社及び親会社である日本生命保険相互会社(以下、「日本生命」という)の子会社・関連会社等)、当社役員及び日本生命の役員等が取締役・監査役等に就任している(候補者を含む)企業に対する議決権行使および対話
  • 利益相反の生じる可能性が高い局面
    当社の大口取引先、日本生命の株式保有比率が高い企業等に対する議決権行使および対話

上記局面において、利益相反を防止する仕組みは以下の通りです。

議決権行使については、独立した社外取締役を過半数とする「責任投資監督委員会※1」で協議の上、運用部門担当役員が議決権行使の判断基準を定めます。原則として、この判断基準に従って行使判断を行うことで、議決権行使のプロセスの透明性を確保します。

さらに、上記(1)に該当する「利益相反の生じる可能性が特に高い局面」の議決権行使においては、議決権行使助言会社の助言に従い判断を行い、利益相反の可能性を排除します。(責任投資監督委員会にも報告)

上記(2)に該当する議決権行使において、当社の判断基準と異なる判断を行う場合、原則、事前に「責任投資監督委員会」で利益相反防止の観点から協議を行った上で行使判断を行います。(1)、(2)に該当しない行使判断においても、判断基準と異なる判断を行った場合、行使結果を責任投資監督委員会に報告します。

また、上記の(1)、(2)に該当する企業との対話については、課題の重要度等に基づき、責任投資監督委員会に報告します。

議決権行使について

  • 責任投資監督委員会
    利益相反管理の観点からスチュワードシップ活動等の適切な運営を確保することを目的として設置。独立した社外取締役2名とコンプライアンス・リスク管理統括部門担当役員1名で構成。

原則3

機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである

当社では、企業価値を中長期の業績予想をもとに算出しますが、そのためには財務情報に加えて非財務情報※2の活用が不可欠と考えています※3

運用担当者は、「企業との対話」を通じて非財務情報を積極的に収集し、当該企業の中長期的な経営ビジョンや業界の構造変化などの外部環境等を勘案した上で、中長期の業績予想を行います。その際、特に重要となる経営戦略の妥当性を評価するため、経営層とのミーティングでの対話を踏まえ、産業ライフサイクル分析・競争力を確認するためのSWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)等を行います。また、必要に応じて工場等の現場訪問、取引先等のステークホルダーや競合先の調査も実施しています。

財務情報と非財務情報を有機的に統合した報告形態※4を採用する企業が日本でも増加していますが、これらを精査することでより確信度の高い中長期の業績予想につなげます。また、コーポレートガバナンス・コードの導入により、ガバナンス情報をはじめとした非財務情報の追加提供が広がると考えており、この機会を積極的にとらえ投資先企業の状況をより的確に把握するよう努めます。

さらに、当社では投資先企業の持続的成長力(サステナビリティ)を把握するための軸として、ESG評価を行うことが重要であると考えています。そのため当社独自のESG評価を運用プロセスに組み込み、中長期の業績予想の確信度を向上させるよう努めています。

気候変動問題や持続可能な開発目標(SDGs)※5への対応など企業に対する要請が高まる中、ESG評価を通じて投資先企業の持続的成長力(サステナビリティ)を把握することの重要性が一層高まるものと考えています。

ESG評価は以下の視点により実施していますが、適宜(少なくとも年1回)調査対象企業を再評価し、適切なモニタリングを行える仕組みを構築しています。

  • 気候変動問題をはじめとする環境問題への取り組みが企業価値向上につながっているか(E:環境の視点)
  • ステークホルダー(従業員・顧客・取引先等)との関係が企業価値向上につながっているか(S:社会の視点)
  • ガバナンスの仕組み、体制等が企業価値向上につながっているか(G:ガバナンスの視点)

当社では、ESG評価の重要性を提唱するPRI※6(国連責任投資原則)に賛同し、その発足した年(2006年)に署名を行いました。

また、当社は財務情報や個別企業のニュースフローを常に確認し、中長期の業績予想や企業価値に与える影響度について毎朝の運用担当者会議で共有化するなど、投資先企業の状況を適時に把握し評価に反映できるモニタリング態勢を整えています。

なお、議決権行使業務を通じて得た情報(役員構成、定款変更等)についても、「企業との対話」において積極的に活用します。

  1. 非財務情報
    企業の中長期的経営ビジョン、ビジネスモデル、業界の構造変化などの外部環境、これらを踏まえた経営戦略、企業価値を創出するためのガバナンス体制等。
  2. 当社は投資先企業との対話において、未公表の重要事実を受領することは企図していません。万一受領した場合には、当該企業の株式の売買を停止し、インサイダー取引規制に抵触することを防止しています。
  3. 統合した報告形態
    企業が財務情報だけでなく非財務情報も用い、投資家を中心とするステークホルダーに中長期的な企業価値創造プロセスを示す報告形態で、「統合報告」と称されることもあります。
  4. 持続可能な開発目標(SDGs)
    2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までの目標。17のゴール・169のターゲットから構成され、「地球上の誰一人として取り残さない」ことが誓われています(外務省ホームページより)。
  5. PRI
    Principles for Responsible Investment。2006年に当時の国際連合事務総長であるコフィー・アナン氏が金融業界に対して提唱したイニシアティブであり、機関投資家の投資意思決定プロセスにESG課題を受託者責任の範囲内で反映させるべきとした投資原則。

原則4

機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである

当社は、経営戦略や企業価値創出のためのガバナンス体制等について中長期的な視点から投資先企業と意見交換を行い、認識の共有化に努めます。中長期的な視点での経営戦略等について投資先企業と当社との考え方に相違がある場合には、投資家としての意見を伝えて建設的な議論を行うことで、投資先企業の価値の向上を図ります。なお、パッシブ運用でのみ保有している銘柄についても課題の重要度等を考慮し、対話を行うよう努めます。アクティブ運用では、選択肢として株式の売却判断を否定するものではありません。

また、当社はESGや議決権の行使に係る専門人材であるコーポレート・ガバナンス・オフィサーを2007年9月より運用部門に配置しています。コーポレート・ガバナンス・オフィサーはグローバルなガバナンスやESG・CSRの動向を踏まえて、投資先企業と対話を行う運用担当者にアドバイスを行うとともに、必要に応じて運用担当者と協働で対話を行います。

なお、企業との対話は経営層・IR担当者との個別面談を中心に行っていますが、企業からの依頼に応じて経営幹部の方々を一同に会しての意見交換会を行うこともあります。

企業との対話の視点は次の通りです。

事業戦略

  • 経営理念・経営ビジョン・具体的な事業戦略が企業の中長期にわたる持続的な成長、
    企業価値の向上につながっているか
  • 企業価値を向上させる事業ポートフォリオ運営になっているか 等

財務戦略

  • 資本政策等が上記の事業戦略遂行にあたって
    適正なものとなっているか
  • 長期的な観点で見た株主還元が適正に行われているか 等

IR戦略

  • 投資家が適正に会社を評価するのに十分な情報開示が行われているか
  • IRについて企業の事業戦略や経営者のビジョンが投資家に十分伝わるものになっているか 等

ガバナンス/リスク管理

  • 取締役や監査役によるガバナンスが適正に機能する状況にあるか
  • 経営理念の浸透等により、社会、環境問題、反社会的行為を含む
    不祥事等のリスクに対する防止体制が十分か 等

上記のような「企業との目的を持った対話」に加え、書籍の刊行や論文の執筆、投資候補先企業等が参加する講演会や会合等で当社の日本株運用の哲学やプロセスを伝えたり、統合した報告形態の重要性を訴求したりするなど、積極的に対外発信活動に取り組んでいます。

このような取り組みが当社の日本株運用のプロセスに対する企業の理解を促進し、円滑な「目的を持った対話」と早期の認識共有化につながるものと考えています。

企業との対話には、上記のような当社単独での対話と他の機関投資家と協働して行う対話(集団的エンゲージメント)があります。協働して行う対話を実施するか否かの判断は、その対話内容・手法が、上述した当社のESGを重視した対話手法に合致したものであるか等を総合的に勘案しながら行います。

なお、同じ目的を持った他の機関投資家と協働して対話を行う手法の他、投資家団体等に加入し、市場のルールや企業行動・開示の慣行に働きかけを行い、企業価値向上を目指す手法もあります。当社は以下の投資家団体等に加入し、積極的に活動しています。

  • International Corporate Governance Network(ICGN)
  • Principles for Responsible Investment(PRI)
  • Asian Corporate Governance Association(ACGA)
  • Japan Sustainable Investment Forum(JSIF) 等

原則5

機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである

当社は、「議決権行使」と「議決権の行使結果の公表」について以下の方針を策定しています。

議決権の行使の方針

  • 議決権行使を「企業との対話」のひとつの手段として位置づけ、
    スチュワードシップ責任を果たすよう努めます。
  • 議決権行使の判断にあたっては、形式的な判断にとどまらず、日常の投資先企業との対話を活用し、
    個別企業の企業価値向上を念頭に、実情に応じた個別議案の審査に努めます。
  • また、その行使にあたっては、受益者のみの利益(投資先企業の企業価値の向上または毀損防止)を考慮し、
    利益相反の防止を行います。

当社では、「責任投資監督委員会」での協議を経て運用部門担当役員が決定する議決権行使判断基準に則り、運用部門内で個別議案の行使判断を行います。原則2に記述した通り、「利益相反の生じる可能性が特に高い局面」では利益相反を防止するため、議決権行使助言会社の判断に従います。その局面以外での議決権行使の判断にあたっては、形式的な判断にとどまることなく、日常の投資先企業との対話の活用により、実情に応じた個別議案の審査を行い、的確な行使判断に努めます。(利益相反への対応については原則2をご覧ください)

議決権の行使結果の公表方針

  • 議決権行使の結果である「議案別議決権行使状況」「議決権行使結果の概況」および
    「個別の投資先企業・議案ごとの議決権の行使結果」をホームページ上で定期的に公表します。

「議案別議決権行使状況(剰余金処分案、取締役・監査役選任議案等の集計)」やその概況について説明した「議決権行使結果の概況」の公表に加え、「国内株式議決権行使の方針と判断基準」と「個別の投資先企業及び議案ごとの議決権の行使結果」(反対理由も開示)も公表しています。

議決権行使判断の基準と個別の議決権の行使結果を公表することで、投資先企業に企業価値向上に向けての当社の考え方を理解していただけるものと考えています。


原則6

機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである

当社は、企業との対話の概況や議決権行使の状況を掲載した「スチュワードシップ活動の概況」を毎年ホームページに公表してきました。

企業との対話の概況には、企業との対話の視点や対話事例、当社のスチュワードシップ活動に対する投資先企業の理解を促進する目的で行った講演・レポート発信などの対外発信活動を記載しています。また、スチュワードシップ活動の変遷がわかるよう過去分も閲覧可能としています。

2017年度からは、コードの原則7に対応し、「スチュワードシップ活動の概況」を拡充し、「スチュワードシップ活動の振り返りと自己評価」として公表しています。(詳細は原則7を参照)

スチュワードシップ活動の振り返りと自己評価

なお、上記の報告活動を的確に行い、スチュワードシップ活動の実効性を向上させるため、当社では投資先企業との対話や議決権行使判断の内容等について記録するよう努めています。


原則7

機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである

当社では、日本株運用において「受益者」の中長期的なリターン向上を目的とした調査・投資活動を運用プロセスの中核としています。当運用プロセスでは、運用担当者は、真摯な態度での「企業との対話」を通じ、投資先企業の事業構造・事業環境・経営戦略等に対する深い理解が必要となります。運用担当者は、当運用プロセスの重要性を常に意識した上で「企業との対話」などのスチュワードシップ活動を繰り返し実践することにより、スチュワードシップ活動に伴う実力を高めることができるものと考えています。

当社は、こうした考えに基づき、2004年に、株式運用プロセスに中長期の業績予想が必要となる株式価値評価システム(SVS:Shareholder Value System)を導入し、2008年には、中長期の企業像を把握する上で重要なESG要因を組み込んでいます。

ESGについては、2006年にPRIに署名したほか、2007年にはグローバルなコーポレート・ガバナンスの団体であるICGN※7にも加盟するなど、これまでもグローバルな知見を取り入れてきました。このESGを組み込んだ運用プロセスを進化させるため、2016年3月に新たに「ESG推進室」を設置しました。ESGの調査をグローバルで行うとともに、運用担当者向けにESGリサーチ会議を開催し、知識の共有化・深化を図ります。

また、対話事例の共有化やベテランアナリストによる若手アナリストへの指導等を通じ、組織全体の対話力向上を推進しています。

以上の取り組みは、運用担当者の企業活動への深い理解を促すとともに、企業分析・評価における洞察力・対話力を一層高めることにつながり、スチュワードシップ活動に必要とされる実力の向上に資するものと考えています。

(コンプライアンスへの取り組み)
社内の定期的なコンプライアンス研修や全役職員が必携する「コンプライアンス・マニュアル」を通じ、インサイダー取引規制や利益相反防止等のコンプライアンス事項への役職員の遵守を徹底しています。

(経営体制について)
当社の経営陣は、スチュワードシップ責任を実効的に果たすための適切な能力・経験を備えた人材で構成されています。また、取締役会には、ガバナンス態勢の独立性・透明性を向上させるため、独立した社外取締役を2名招聘しています。

このような経営陣が実効性のあるスチュワードシップ活動に必要とされる組織構築や人材育成などの各課題に取り組んでいます。

(スチュワードシップ活動の振り返りと自己評価)
この「『日本版スチュワードシップ・コード』の受け入れについて」に記載した取り組みを一段と深化させるため、自らのガバナンス態勢・利益相反管理や、本コードの各原則の実施状況を定期的に振り返り、自己評価を行います。

その内容は、上述した「スチュワードシップ活動の振り返りと自己評価」としてホームページ上に公表します。

スチュワードシップ活動の振り返りと自己評価

  1. ICGN
    International Corporate Governance Network。コーポレート・ガバナンスの課題に関わる情報や見解を国際的に交換したり、ガバナンスの基準やガイドラインを設定するとともに、秀でたコーポレート・ガバナンスの実践を遂行するための様々な支援・助言を行う機関。世界各国から機関投資家・規制当局・学者・弁護士・コンサルタントなどの関連団体・個人が参加。