金融市場NOW

英国の外出制限緩和効果に注目

2020年05月22日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

「Stay Home」から「Stay Alert」へ

  • 新型コロナウイルスの被害が大きい英国は、景気後退を防止するために、政府・中央銀行が政策を総動員。
  • 長引く外出制限によるさらなる経済の落ち込みを防ぐため、英国政府は外出制限を緩和する方針。地方自治政府が慎重な姿勢を示す中、景気への影響に注目。

新型コロナウイルスの影響が大きい英国

グラフ1:英国GDPの推移(前期比)

  • 出所:英国国立統計局のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

新型コロナウイルス感染者数で世界第4位、死亡者数で第2位(2020年5月19日現在:ジョンズ・ホプキンス大学調査)と被害が大きな国の一つである英国の2020年1~3月期の実質GDP(国内総生産)速報値は、前期比2.0%減となりました。リーマン・ショックの影響が残る2008年10~12月期(2.1%減)以来、約11年ぶりのマイナス幅です(グラフ1)。英国では感染拡大によるさらなる景気後退を防止するために政府、中央銀行ともに手厚い政策を打ち出しています。

英国政府・中央銀行は大規模な対策を実施

英国政府は月2,500ポンドを上限に月収の8割を保証しており、「Stay Home(家にいよう)」の推進による新型コロナウイルス感染拡大防止に注力しています。なお、2020年6月末までの予定であった当政策は、ウイルス感染の影響が大きいことを受けて、10月末まで延期されることが公表されました。財政悪化が懸念されるものの、景気悪化を止めようとする英国の本気度がうかがえます。

BOE(イングランド銀行:中央銀行)は景気刺激策として約4年間0.75%に据え置いていた政策金利を史上最低の0.1%まで引き下げました。併せて、国債等を買い入れて市場に資金を行き渡らせる量的緩和策を2,000億ポンド拡大しました。市場では、6月の金融政策委員会で量的緩和策の拡大が予想されています。また、BOE副総裁がさらなる追加緩和の可能性に言及したことを受けてEUや日本のようなマイナス金利政策を予想する声も出てきています。

外出制限緩和の効果に注目

グラフ2:英国の新型コロナウイルス感染者数・死亡者数

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

新型コロナウイルスの新規感染者数・死亡者数ともに減少傾向であることから(グラフ2)、英国はロックダウン(都市封鎖)は引き続き実施するものの、「Stay Home」から「Stay Alert(警戒を続けよう)」へスローガンを変更し、1⽇1度としていた運動のための外出制限を取り払うなど、外出制限緩和に向けたはじめの一歩を踏み出すことを公表しました。しかし、スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの各自治政府は性急な緩和は「出さなくてもいい死者を出すことになる」と外出制限緩和に慎重な姿勢を示しています。英国内が一枚岩となっていない中、外出制限緩和がどのように景気に影響を及ぼすかに注目が集まるものと思われます。

金融市場動向一覧へ

「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点

当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。

【当資料に関する留意点】

  • 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
  • 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
  • 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
  • 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。