金融市場NOW

英国の10月末までの離脱期限延期をEUが承認

2019年04月16日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

英国内の情勢に大きな変化なく依然不透明な状況

  • 欧州理事会は英国のEU離脱期限を最長10月末までの延期を承認。
  • 当面の合意なき離脱のリスクは低下したものの、期限の延期でかえって選択肢が広がり意見集約が困難になる可能性も指摘され、不透明な状況が先延ばしになっただけとの声も。

EUは期限延期の承認も英国へ厳しい態度

4月10日に欧州理事会は臨時首脳会談を開き、英国のEU(欧州連合)離脱期限の最長10月末まで延期を承認しました。英国は4月12日までに離脱方針を決定する予定でしたが、英国内で方針がまとまらず、メイ首相は延期を求めていました。長期延期も議論されましたが、早期離脱を求めるフランスなど各国の意見が調整され約半年の延期となりました。公表された取り決め事項(表1)には、延期期間中に準備が整えば離脱可能なこと、欧州議会選挙までに離脱できなければ選挙に参加すること、先に合意した離脱協定案の再交渉は認めないことなどが含まれています。また、改めてこれまでの立場を強調し、念を押すような表現も多く、英国に対する厳しい姿勢が感じとれます。一方でいつでも離脱手続きの撤回を認めることや、英国の状況次第では「将来の関係」に関する政治宣言を再考する準備がある旨も記載され、一部では寛容な姿勢も示されました。EUとして実務レベルでの議論を重ねることや、6月会合で進捗状況を確認することも決められました。

表1:主な取り決め事項

  • 出所:各種報道資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
主な取り決め事項の概要
EUは離脱協定の批准期限の延期を承認する。延期は2019年10月31日を超えないものとし、これまでに批准できなければ11月1日に離脱となる。
英国が2019年5月22日までに離脱協定案が批准できないのであれば、欧州議会選挙(5月23日~26日)へ参加しなければならない。参加できない場合は6月1日に離脱となる。
離脱協定は再交渉可能なものでないことを、欧州理事会は強調する。
「将来の関係」に関する政治宣言は、英国の状況次第によっては、EU側も再考の準備がある。
延期期間中、英国はEU加盟国としての義務と権利を保持し、離脱手続きの停止を通知する権利も保有する。

英国内では与野党での調整を継続か

グラフ1:金利と為替の動き

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

英国内では離脱方針決定に向けて、メイ首相は3度否決されている自身の離脱協定案が「可決できればすぐにでも離脱可能だ」と強硬離脱派へ支持を呼びかける一方で、野党(労働党)が支持する関税同盟残留なども視野に協議を続ける模様です。与野党の協議が決裂した場合には、先日の示唆的投票で多くの票を獲得した案を軸に意見集約を図っていくとの見方が大勢です。ただし、良くも悪くも期限の延長で時間を得たことから、当面の合意なき離脱のリスクは低下したものの、国民投票や総選挙、EUとの再交渉模索などの選択肢が広がり、不透明な状況が先延ばしになっただけとの見方もあります。

下院議会は22日まで休会予定であるため、与野党協議を含め水面下で意見集約を目指す動きが続くと思われます。英国金利は上昇傾向にあるものの欧州理事会当日の債券・為替市場はほとんど反応しませんでした(グラフ1)。各党の主張や政府の置かれた状況にほぼ変化はないことから、10月末が近づくにつれ合意なき離脱のリスクが再び高まると想定されます。欧州の景気減速懸念が秋にかけて払拭されなければ、離脱問題が市場にとって徐々に大きな重石となってくることが予想されます。

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