金融市場NOW

英国議会 いまだにEU離脱方針を絞り切れず

2019年04月02日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

2度目の示唆的投票でも離脱方針を絞り切れず

  • 自身の進退をかけたメイ首相案が3回目の否決。離脱期限の長期延期がメインシナリオに。
  • 議会は2度目の示唆的投票でも方針を絞り切れず、政治的な分断は深刻な状態に。英国の手詰まり状態を受けて、欧州市場を中心にEU離脱問題がリスクとして存在感を増している。

2度目の示唆的投票で可決できず

3月29日英国下院議会はこれまで2回否決されていたメイ首相の離脱協定案を否決しました。首相は協定案支持と引き換えに辞任を表明していましたが、十分な支持は得られませんでした。英国は先にEU(欧州連合)と合意した4月12日までに離脱の方針の明示が必要となり、合意なき離脱もしくは5月の欧州議会選挙参加を含めた長期の離脱期限延期(EUの承認が必要)の可能性が高まっています。

議会は3月27日に事態打開のため政府に対抗し、8案の離脱方針への「示唆的投票」を行いましたが、可決される方針はありませんでした。4月1日にも1回目の投票結果を加味した4案(1つは追加案)の示唆的投票を行いましたが、すべての案が否決されました。示唆的投票に拘束力はなく、4案はEUとの合意もないため、不透明な状況に変わりはないものの、打開策を探る上で結果が注目されていました。

表:示唆的投票の決議結果

  • 各種報道資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
離脱方針内容 3/27(1回目) 4/1(2回目)
結果 票差 結果 票差
恒久的で包括的な関税同盟 ×
否決
8 ×
否決
3
可決された離脱案の確認のための2回目の国民投票 ×
否決
27 ×
否決
12
EUへ予算拠出しつつ単一市場残留と包括的な関税同盟(通称:単一市場2.0) ×
否決
95 ×
否決
21
EUが離脱期限の延期を認めない場合でも、合意なき離脱を回避(追加案) ×
否決
101

関税同盟残留が最も僅差で否決

グラフ:金利と為替の動き

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

議会は合意なき離脱の回避を可決しているため、現実的には長期の離脱期限延期がメインシナリオと想定されますが、今後の示唆的投票で方針が絞り込まれたとしても政府による執行には困難も予想されます。与党保守党は分裂状態にはあるものの、3回目の投票で首相案には277票の賛成が集まっており、例えば関税同盟(3票差で否決)残留など第3国との自由な貿易協定を放棄する“穏健すぎる”離脱方針に与党から支持が得られるのか不透明な状況です。状況を打破するため、解散・総選挙の可能性も指摘されていますが、英国議会の解散は日本のように政権側の意向では行えず、内閣不信任案の可決か下院での2/3以上の賛成多数で可決が必要となります。支持率が下落している与党の中には解散ムードをけん制する動きも出ているようです。離脱方針の明示期限が迫る中、現地ではまさにデッドロック(手詰まり状態)と報じられており、このまま時間が経過すれば偶発的な合意なき離脱の可能性も指摘されています。ビジネス面や国民生活にまで影響が及ぶため警戒感が一層高まっており、通貨ポンドや英国金利は採決を控えた政治家の発言などに神経質に反応する展開となっています。世界的な景気減速への警戒感が高まってからは欧州市場を中心に英国の離脱問題がリスクとして存在感を増してきており、投資家が固唾を飲んで見守る状態が当面続くと思われます。

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