金融市場NOW

EU離脱交渉 暫定合意も払拭されない不透明感

2018年11月19日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

EUとの合意案に英国閣議も承認。反対する閣僚が辞任を表明する展開に

  • 英国EU離脱交渉はEU側と暫定合意、英国閣議承認を受け、英国議会の採決へ
  • 公表された合意内容には、EU側への妥協が多くみられると英国内では批判が高まっている。反対する閣僚の辞任もあり、12月以降の英国議会の採決へ向けて波乱の展開

英国議会で合意案の審議も難航が予想される。「綱渡り」の国内外の交渉・調整は続く

難航していた英国のEU(欧州連合)離脱交渉は、EU側と暫定合意し、14日に開催された英国臨時閣議で承認されました。公表された合意書面は500ページを超える資料となっており、政治家などは詳細分析を進めています。最も交渉が難航したとされるバックストップ条項<離脱(2019年3月末)後、2020年12月末の移行期間終了までに通商協定等の交渉がまとまらない場合の安全策>ですが、実質的に英国全体が関税同盟・単一市場に残留することで合意しました。英国側は北アイルランドのみが関税面において(他の英国とは違う)特別な扱いを強いられることはないとしていますが、EU関係者からは北アイルランドのみがEUルール内に残留するとも取れる発言がありました。合意書面を分析した一部専門家からも同様の指摘があり、英国の自主性や一体性を重要視する与党:強硬離脱派や閣外協力を行う北アイルランド地域政党:民主統一党(DUP)からは異論が出ており、一部閣僚は閣議後辞任を表明しています。

移行期間中に通商面などで交渉が完了すればバックストップ条項は未発動となりますが、発動後の交渉進展具合から終了可能な状況であるかを判断するために、移行期間終了の6ヵ月前にEU・英国と独立したメンバーで構成される仲裁委員会で検証を行い、判断されることになりました。英国内では離脱に関する自主決定権が制限され、長期間にわたりEUルール下で貿易を継続することになると懸念の声があがっています。暫定合意や閣議承認を受けて、EUは25日に臨時首脳会議の開催を予定しており、各国の承認を得ることとなります。英国では閣議を経て、12月以降に議会下院にて採決を目指すこととなりますが難航が予想されます。与党保守党の強硬離脱派や野党労働党など現時点で反対を唱える勢力もあり、今後閣僚による説得や合意案の詳細分析など議会採決に向けて動きがあるものと思われます。一部ではメイ首相への不信任動議(15%の議員賛同で信任投票)なども与党内でささやかれており、予断を許さない状況です。

国境問題は歴史的背景もあり解決には時間が必要か、実質棚上げされるとの見方も

バックストップ条項の背景には厳格な国境警備を英国(北アイルランド)とEU(アイルランド)双方に避けたい意向があります。古くは北アイルランドの帰属をめぐる争いもあり、一方で英国とアイルランドは早くから自由貿易協定締結や両国間の国境を開放しており、離脱後の実務的な解決策に注目が集まるところですが、当面棚上げになるとの見方もあります。離脱後も長期間の協議が続き、問題の長期化と不透明感が継続することも想定されます。ポンドは暫定合意、閣議承認を受け反発しましたが、閣僚の辞任表明を受けて下落しており、マーケットは離脱協定の行方を冷静に見極めているものと思われます。

図1:バックストップ条項にかかる合意内容(一部報道)

出所:各種報道資料等のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ1:年初来の為替の推移

出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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