金融市場NOW

英国 6月EU首脳会議で離脱協定合意を目指す

2018年06月12日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

離脱協定が合意できなければ移行期間も不透明に

  • 6月下旬に開催されるEU(欧州連合)首脳会議で英国のEU離脱協定について交渉が予定される。英国内では政府方針に反対の意見も多く、EU首脳会議までに英国内で賛同を得られるかが不透明。
  • 欧州産業界からビジネスへの影響を避けるためスケジュールの明確化を求める声が出ている。スケジュールが迫り、これまでの交渉のように、英国が譲歩しEUの求める条件で合意するとの見方も。

混沌とするEU離脱交渉。英国内議会では政府方針に反対の声も

6月28日~29日に開催されるEU首脳会議でEU離脱協定の合意を目指したい英国政府は高度に合理化された関税手続きによる新たな関税協定の締結を目指し、国内議会で審議を進めています。政府の基本方針は単一市場アクセスと関税同盟から離脱するものの、できる限り摩擦の少ない財の取引を継続できるような関税協定を望んでいます(一部産業では準加盟国として残留)。しかし、英国上院議会では、単一市場へ残留する選択肢を残す修正法案が可決され、またいくつかの項目において政府案が否決されており、下院に差し戻され審議されています。英国内の離脱協定の承認ができなければ6月下旬のEU首脳会議での合意もできず、暫定合意されている移行期間の確保も不透明となります。2019年3月の離脱から逆算すれば、遅くとも今年10月末までに離脱協定や『EUと英国の将来の関係』で合意しなければならず、移行期間を設けない合意なき無秩序な離脱が現実味を帯びてきます。EU側でも、英国政府の基本方針とする新たな関税協定は、部分的に単一市場アクセスを許容するようなものであり、単一市場の恩恵を受けるには、現状のまま残留することを求めており、EU側との離脱協定交渉の難航が想定されます。

欧州産業円卓会議はスケジュールの確定を要望。英国内への投資減少が危惧される

離脱へ向けて時間が迫る中、政府は関税協定の交渉が難航することを見越して、EU側の関税ルールを継続して適用する妥協案の検討を開始したり、一部超党派国会議員の間では単一市場へアクセスや関税同盟へ残留するソフトな離脱を望む声も出てきています。また、欧州の50社程度の大企業で構成する欧州産業円卓会議は声明で離脱スケジュールの確定を求めました。同会議所属企業は合計で約2兆ユーロの利益と数百万人の雇用を生みだしており、離脱にかかる不透明な投資環境が企業の投資を減少させる懸念があると警告しました。最近のマーケットは離脱動向に以前より大きな反応を示さず、むしろ離脱決定後のポンド安から、輸入物価上昇によるインフレ率の上昇を受けた利上げ観測などの金融政策の動向や各経済指標に反応を示す状況となっています。利上げが想定された5月の政策決定会合では経済指標の下振れなどを受けて、現状維持となりましたが8月の利上げを見込む市場参加者の声もあります。マーケットが離脱動向よりも金融政策に反応する背景には、これまでの交渉では期限が迫り英国側が折れる形で交渉が進展してきましたが、今回も最終的には英国側が妥協し合意にいたるとの見方があるものと思われます。

グラフ:直近の英国株式とポンドの推移

出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

表:英国EU離脱までの主な日程

出所:各種報道等資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
主な日程 主な予定等
2018年6月12日 英国下院議会で離脱法案投票予定。(一部上院で否決され差し戻し審議中)
2018年6月中 英国政府、離脱後の英国・EUの関係をまとめた白書公表予定⇒一旦公表を延期。
2018年6月28日 EU首脳会議:アイルランドとの国境問題を含めた離脱協定の交渉
2018年10月18日 EU首脳会議:EUと英国の将来の関係について合意を双方が希望
2018年10月31日 離脱協定交渉完結予定
2018年12月13日 EU首脳会議:2018年最後の首脳会議。10月までにまとまらない協定の最終決着予定
2019年3月29日 英国EU離脱
2020年12月31日 移行期間終了

金融市場動向一覧へ

「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点

当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。

【当資料に関する留意点】

  • 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
  • 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
  • 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
  • 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。