金融市場NOW

英国 堅調な経済見通しもEU離脱協議の進展が前提

2018年04月06日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

堅調な経済見通しも離脱交渉の進展次第

  • 英国金融政策委員会は金融政策の現状維持を決定。経済見通しは上方修正されるもEU(欧州連合)離脱交渉の進展が前提となっており、英国経済の行方は離脱交渉次第という構図は変わらず。
  • 移行期間などで暫定合意も政府の方針に英国内には異論がくすぶる。離脱後を見越した影響はまだ顕在化していないものの、影響が想定される業種では速やかな交渉の進展を望む声も。

金融政策維持も、参加者2名が利上げを主張。英国株安、英ポンド高へ

3月22日に開催された英国金融政策委員会では、7対2の賛成多数で金融政策を現状維持としました。市場では予想外に2委員が利上げを主張したことがタカ派(金融引締め推進派)的と捉えられ、株価は下落し、英ポンドは上昇しました。会合ではインフレ率は短期的にはやや低下する見通しも示されましたが、2月のインフレ率(前年同月比:+2.7%)は政策目標の2%を上回る水準で推移していることから、次回5月の会合で利上げが行われるとの見方が強くなっています。2月に発表された四半期報告書では、今後3年間で0.25%の利上げが3回想定されるとし、堅調な世界経済の成長を受けて、GDP (国内総生産)見通しが前回(昨年11月)から上方修正されました。しかし経済見通しは英国のEU離脱に伴い、新しい貿易協定が締結されスムーズに経済活動が適応することが前提とされており、離脱交渉の進展が今後の英国経済に大きな影響を及ぼす状況にあることが引き続き確認されました。

移行期間など大筋合意も英国内には異論がくすぶる

グラフ1:離脱決定以降の英国株と英ポンドの動き

出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

3月19日、英国とEUは英国のEU離脱後の移行期間などについて大筋合意しました。移行期間(2020年12月31日まで)の他、移行期間中に英国独自の貿易協定の交渉・批准が可能となったことなどの条項が合意に至りました。英国メイ首相は3月の演説で、EUの単一市場と関税同盟から完全に離脱し、一部の分野ではEUの規制を維持する方針を説明しました。ただ、英国国会はEUとの最終合意に議会の採決が必要とする離脱法案を可決しており、また、一部の議員は仮に合意が否決となった場合、合意決裂による無秩序な離脱のみの選択でなく、離脱そのものの再検討を含めた複数の選択肢を用意すべきと主張しています。

現状、経済指標などには離脱後を先取りする影響は出ていないようですが、EU圏にまたがる営業エリアを持つ業種では、今後の離脱交渉の行方次第でビジネスモデルや契約などで大幅な対応を迫られる可能性を危惧する声があるようです。例えば、約3,000万人の英国・EU圏をまたぐ契約を結ぶ保険業、EU圏への輸送で各トラックへの税関検査次第ではサプライチェーンに影響が出かねない物流業、EU圏のみならず第3国との航空協定締結次第で発行したチケットがキャンセルとなりかねない航空業などは、できるだけ早期の各協定の合意を望んでいる模様です。堅調な世界景気の拡大継続が、EU離脱後の英国経済への影響をいくらか和らげるとの見方もあるものの、米中の貿易戦争懸念など世界経済への不確定要因がくすぶる中、速やかな離脱交渉の進捗が期待されるところです。

EUとの主な暫定合意項目

暫定合意項目
移行期間は離脱日2019年3月29日から2020年12月31日までとする。
英国の漁業海域は移行期間中保障されるが、移行期間内に新条約等が締結されない限りEUの共通漁業政策を適用する。
移行期間中に相互の領内に入国した市民は、離脱前に入国した場合と同様の権利を与えられる。
英国は移行期間中でも貿易協定の交渉、合意や締結ができる。ただし、移行期間中はEUの貿易協定を適用する。
アイルランドとは厳格な国境管理を避ける基本方針を維持し、具体的な解決策が決まらなければ北アイルランドはEU貿易圏に留まる。

出所:各種報道資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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