金融市場NOW

英国 先進国で唯一の景気後退局面入りの兆候

2017年08月15日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

OECD景気先行指数が英国に先進国唯一の景気後退入りの兆候を示す

  • 今後6ヵ月程度の経済活動を示すOECD(経済協力開発機構)景気先行指数において英国は先進国唯一の景気後退入りの兆候が示された。英国の4~6月期のGDPは「低空飛行」が続いている。
  • 7月20日に終了した第2回EU(欧州連合)離脱交渉では、今後はまず両域内の市民の権利保護、離脱に伴う「清算金」に加え、アイルランドとの国境問題も協議することに決定。

8月8日に今後6ヵ月程度の経済活動を示すOECD景気先行指数が発表されました。日本、米国などは「安定的な景気拡大傾向」、フランス、ドイツなどは「加速的な成長による景気拡大傾向」と示される一方、英国は先進国で唯一「景気後退局面入りの兆候」が示されました(グラフ) 。当指数は世界各国の経済指標などをもとに景気動向の先行きや転換点を示す指数として算出されています。英国は7月に発表された4~6⽉期の実質国内総⽣産(GDP)速報値が前期⽐+0.3%と、+0.7%だった昨年10~12⽉期や前年同期(+0.6%)と比較すると減速傾向にあるようです。政権基盤の不安定化によるEU離脱交渉の不透明感などが実体経済へ影響を及ぼしつつあるようです。

7月20日に終了した第2回EU離脱交渉では、交渉を2段階で進めることに同意し第1段階として10月のEU首脳会議までに、「1.両域内の市民の権利保護」、「2. 離脱に伴う『清算金』」に加え、「3. アイルランドとの国境問題」の完了を目指すことが決まりました。

「3. アイルランドの国境問題」についてですが、離脱後、北アイルランド(英国)とアイルランド(EU圏)は唯一の地続きの国境となります(図)。歴史的な背景からも経済的な結びつきが強く、アイルランドで製造した飲料を北アイルランドで加工し、再度アイルランドで保管するなど、自由な人と物の移動により成り立っている産業もあり、英国とアイルランド間では約40万人の雇用と年間約600億ユーロが産業により産み出されているといわれます。連立与党である北アイルランド民主統一党(DUP)は自由な人と物の移動の維持を求めていますが、保守党のEU離脱方針は国境管理による移民の制限を念頭に置いており、政治面で複雑なかじ取りを迫られる中、景気減速の兆候は今後の政策に影響を及ぼすことも想定されます。

グラフ:OECD景気先行指数の推移

OECD景気先行指数の推移
出所:OECDのデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

図:英国とアイルランドの国境

英国とアイルランドの国境
出所:外務省HPのデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

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