金融市場NOW

2021年4~6月期世界貿易量過去最大の伸び

2021年09月10日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

海運市況高騰を背景に海運株が堅調

  • 2021年4~6月期の世界貿易量は前年同期比21.5%増加し、2000年以降で最大の伸び率を記録した。
  • 貿易量拡大を受けた海運市況の高騰を背景に、海運株が上昇傾向を続けている。
  • デルタ株による感染再拡大等により、年後半は貿易量が減少することも予想される。
  • 海運株が調整する場面も想定されるが、PER水準等から見て深押しは避けられると思われる。

(1)21年4~6月期世界貿易量が過去最大の伸び

グラフ1:世界貿易量の推移

  • 出所:オランダ経済政策分析局(CPB)データをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

オランダ経済政策分析局(CPB)によると、2021年4~6月期の世界貿易量(輸出量と輸入量の合計)は前年同期比21.5%増加し、統計が開始された2000年以降で最大の伸び率となりました。リーマン・ショック後の2010年4~6月期の同17.6%増を上回りました(グラフ1)。比較対象の2020年4~6月期が新型コロナウイルスの感染拡大による都市封鎖の影響等で落ち込んでいたことの反動に加え、欧米の経済対策や早期に感染を抑え込んだ中国の景気回復が過去最大の伸び率を記録する主な要因となりました。

(2)海運市況高騰を背景に海運株が堅調

貿易量の拡大を背景に、鉄鉱石等を運ぶ大型ばら積み船の用船料が高騰しています。ばら積み船の市況を表すバルチック海運指数(注1)は、足元では下落しているものの、8月27日には一時2009年11月以来の高値を付ける場面もありました(グラフ2)。2010年代の海運市況の長期低迷を背景に、海運会社が大型ばら積み船の新規発注を手控え、用船が不足していることも市況高騰に影響しているようです。

堅調な海運市況を反映し、海運株が上昇傾向を続けています。9月7日時点の世界海運株指数(注2)の年初からの上昇率は71.5%と、世界株価指数(注2)の同17.4%を大きく上回っています(グラフ3)。

  1. バルチック海運指数:ロンドンにあるバルチック海運取引所が算出・公表する外航不定期船(外航ばら積み船)運賃の総合指数(1985年1月4日=1,000)
  2. 世界株価指数:MSCI World Index(米ドル)、世界海運株指数:MSCI World Marine Index(米ドル)

グラフ2:バルチック海運指数の推移

  • 出所:ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ3:世界株価指数と世界海運株指数の推移

  • 出所:ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

(3)海運市況及び海運株の今後の見通し

デルタ株による新型コロナウイルスの感染再拡大で米国景気に鈍化の兆しが表れ始めていること、中国の鉄鉱石需要が一服しつつあること等から、年後半は貿易量が減少し、海運市況が弱含むことも想定されます。その影響が海運株に及ぶことも予想されますが、世界海運株指数の予想PER(株価収益率)が9月7日時点で5.2倍と、世界株価指数の20.3倍に比べて低水準であること等を勘案すると、深押しは避けられるものと思われます。

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