金融市場NOW

米国・カナダに猛烈な熱波到来

2021年07月14日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

気候変動が危険な現象の発生を加速化させていると米大統領が発言

  • 6月下旬カナダ西部・米国太平洋岸北西部は熱波に襲われる。バイデン大統領は「気候変動が猛暑と長引く干ばつの重なる危険を加速させている」と発言。
  • 米IT大手7社は、気候変動対策に関する情報開示ルール強化に歓迎する姿勢を示す。

カナダ・リットンで観測史上最高気温

グラフ1:米太平洋北西部3州の高温記録

  • ※過去の高温記録の上位10%に、該当年の高温記録が占めた割合
    例:2000年であれば、1910~2000年の高気温記録上位10%に2000年の高温記録がどの程度占めたかを示す
  • 出所:NOAA資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

6月下旬、カナダ西部・米国太平洋岸北西部は猛烈な熱波に襲われました。カナダ・ブリティッシュコロンビア州のリットンでは、6月29日に観測史上最高気温となる49.6℃を記録しました。例年6月の気温は25℃程度で推移する同地域ではエアコンを所有していない家庭も多く、数百人の犠牲者を出しています。また、熱波により170か所以上の山火事が発生しています。

米国太平洋岸北西部のワシントン、オレゴン、アイダホ州でも高温を記録、大都市シアトルなどでも40℃を超える高温を記録し、エアコンや扇風機の売り切れが相次ぎました。シアトルでは、過去129年間で37.8℃を超えたのは3回だけでしたが、6月だけで連続して3日間37.8℃を超える高温となりました。このエリアでの高温の記録は直近20年に集中しており、温暖化の進行を示唆する結果となっています(グラフ1)。熱波の原因は複数の要因が重なったとされています。7月7日に『world weather attribution』のHPに掲載された欧米の大学など27人の科学者による国際研究チーム論文には、「今回の熱波は人為的な気候変動がなければほぼ起こり得なかった」旨が記載され、気候変動の致命的な影響を、世界は本当に理解しているのか疑問が残ると研究グループ参加者は警鐘を鳴らしています。

海洋大気庁の予算増額を要求

バイデン大統領は「(人為的な)気候変動が、猛暑と長引く干ばつの重なる危険な状況を加速化させている」と発言しています。バイデン政権は発足以来、気候変動対策に積極的に取り組む姿勢を示しており、2022年度のNOAA(米国海洋大気庁)の予算では、前年度比15億ドル増加の70億ドルを議会に求めています。調査費などの増額により、気象予測能力を改善し、地域社会が異常気象やそれによる災害への備えが可能となるように気象情報の提供を拡大していく姿勢を示しています(表1)。

表1:米海洋大気庁の主な要求予算項目

  • 出所:NOAA資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
項目 詳細等
調査
  • 気象予測能力の改善に向けた研究を強化
観測・予報
  • 入手可能な気象情報の提供の拡大
  • 気候変動の影響を受ける地域での雇用創出の支援
復元・復興
  • 環境の復元と地域の復興への投資
  • 2030年まで少なくても30%の土地と水資源を保存する政府目標への取り組み
風力発電関連
  • 2030年までに30ギガワットを風力で発電する政府目標への取り組み

IT大手7社は共同書簡を監督当局へ送付

カナダ西部・米国太平洋岸北西部の気温は徐々に落ち着きを取り戻しつつありますが、6月中旬から続いた高気温は、モスクワや北極圏、ニューヨーク、インド、イラクなど世界規模に広がっています。

異常気象などの気候変動による社会への影響が懸念される中、米国証券取引委員会(SEC)は、企業の環境対策などの開示ルールを見直すことを公表しています。米IT大手7社はSECに共同書簡を送り、企業の気候変動対策に関する定期的な情報開示を義務付けるよう求め、ルール見直しを歓迎する姿勢を示しています。今後、各国企業の間に、主体的に気候変動対策に取り組む姿勢が、企業価値向上に繋がるとの認識が広がっていくことが想定されます。

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