金融市場NOW

「気候変動」を抑制する手段としての脱炭素

2021年06月07日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

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金融市場ラインマーカー

脱炭素への取り組み、向かう先は「気候変動」の抑制

  • 石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル社に二酸化炭素排出削減などを命令する判決が下される。気候変動を引き起こす原因の一つとされる温暖化ガス削減を各国企業は求められる方向へ。
  • 脱炭素を経営目標に加える動きが広がる中、本来の目的である気候変動対策を意識した経営が今後重要に。

企業に気候変動抑制への取り組みを求める判決

5月26日オランダ・ハーグの裁判所は、石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル社に対して大幅な二酸化炭素の排出削減を命令する判決を下しました。この判決により今後企業は脱炭素による気候変動対策を求められることが想定されます。

気候変動に関する国際的な取り組み「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を抑制するため21世紀後半までに温暖化ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとることが目標とされました。かつて温暖化ガスによる地球温暖化が、気候変動の原因となっているという見方に、一部で懐疑的な声もありました。しかしIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書では「20世紀半ば以降の平均気温上昇などの気候変動は、その大部分が人類の活動による温暖化ガスの増加によってもたらされた可能性が極めて高い」としており、IPCC1.5℃特別報告書(図1)では温暖化が世界に与える影響に言及しています。国際社会では脱炭素による温暖化ガスの排出削減が気候変動を抑制する上で重要との考え方が一般的となっていると言えます。

図1:IPCC 1.5℃特別報告書のポイント

  • 気候変動は、既に世界中の人々、生態系及び生計に影響を与えている。
  • 地球温暖化を1.5℃に抑制することは(実現可能性について単純な回答はないが)不可能ではない。しかし、社会のあらゆる側面において前例のない移行が必要。
  • 地球温暖化を1.5℃に抑制することは、持続可能な開発や貧困撲滅等、気候変動以外の世界的な目標とともに達成可能。

出所:環境省「1.5℃特別報告書の概要」をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

ここ数年に集中する高温と自然災害

NOAA(米国海洋大気庁)によると、「産業革命以降の世界平均気温上昇の背景には、蓄積された熱量の大幅な増加があり、地域や季節で気温の極端な変化を引き起こし、積雪や海氷の減少、豪雨の増加などをもたらしている」としています。また、昨年は米国の歴史上5番目に平均気温の高い年であり、高温の上位5年は全て2012年以降に集中しています。2020年に起きた被害見積額が10億ドルを超える自然災害は22件で、過去最高となりました。被害見積額10億ドル以上の災害が6年連続で発生しています。2020年には、被害見積額が100億ドルを超える大型自然災害が3件発生しています(表1)。

表1:2020年の主な米国での自然災害

  • 出所:NOAA資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
災害等 発生時期 被害見積額(10億ドル) 死者(人)
ハリケーン(ローラ) 8/27 19.2 42
西部山火事 8/1 16.6 46
中部暴風雨 8/10 11.2 4
ハリケーン(サリー) 9/15 7.3 5
ハリケーン(イサイアス) 8/3 4.8 16
中部・西部干ばつ・熱波 6/1 4.5 45
ハリケーン(ゼータ) 10/28 4.4 6
南東部・東部竜巻 4/12 3.5 35

脱炭素、本来の目的は気候変動対策

気温上昇による山火事や豪雨などの大規模な自然災害は物流、輸送などに限らず、ほぼ全ての産業に物質的被害、経済的損害を与えると想定されます。

国内報道でも注目を浴びる脱炭素ですが、かつては二酸化炭素の排出を少なくする低炭素が主流でした。低炭素では地球の温暖化抑制が困難との考えから、パリ協定発効以降は、二酸化炭素排出量を実質ゼロとする脱炭素という概念が主流となりました。気候変動と人類の活動の因果関係を探る研究は、継続して進められており、今後脱炭素に加えて新たな取り組みが必要となることも否定できません。各国の企業は、脱炭素に限らずその本来の目的である気候変動対策を意識した経営が、今後益々求められることが想定されます。

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