金融市場NOW

良好な米国の景況感と悪化する欧州の景況感

2020年11月27日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

ワクチン実用化期待から、先行きの見通しは楽観的

  • 米国の総合PMIが好不況の節目と言われる50を上回る一方で、ユーロ圏の総合PMIは50を割り込む。
  • 米国では製造業、サービス業ともに50を大きく上回る水準。一方、欧州では製造業こそ50を上回ったもののサービス業は50を大きく下回る。
  • ワクチンへの期待もあり、欧米ともに先行きの景気は改善するとの見通しが優勢。

米国とユーロ圏で景況感が大きく異なる

グラフ1:米国及びユーロ圏の総合PMIの推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

IHSマークイットが11月23日に発表した2020年11月の米国総合PMI(購買担当者景況感指数、速報値)は57.9と10月の56.3から1.6ポイント上昇しました。一方で、ユーロ圏の総合PMIは45.1と10月の50.0から4.9ポイント低下し、5カ月ぶりに好不況の節目とされる50を割り込みました(グラフ1)。大西洋をはさんで対照的な結果となっています。

米国は製造業・サービス業ともに改善

総合PMIが上昇した米国は、製造業PMIも56.7(前月比+3.3)、サービス業PMIも57.7(同+0.8)と上昇し、市場予想(それぞれ53.0と55.0)も大きく上回りました。11月に公表された米国の経済指標の多くは景気回復ペースが鈍化していることを示唆しましたが、PMIはそれに反する内容となりました。新型コロナウイルス感染拡大懸念はあるものの、大統領選挙を巡る不透明感が払しょくされつつあることやバイデン政権によるコロナ対策への期待等がそれを上回り、米国景気に対する強気な見方が増えていることが背景にあるようです。

ユーロ圏はサービス業の低下が顕著

総合PMIが下落したユーロ圏では、製造業PMIが53.6(前月比-1.2)と50を上回った一方、サービス業PMIが41.3(同-5.6)と50を大きく下回る水準となりました。レストランやバーの営業停止など対面サービス業が大きく落ち込んだことやコロナ禍の影響を受けた国に対する支援策である復興基金を巡る混乱が続いていること等が景況感に悪影響を及ぼしたものと思われます。ユーロ圏では足元の経済指標や今回のPMIの結果を受けて、2020年10~12月期のGDP(国内総生産)が再びマイナスに落ち込む可能性が出てきたとの声も聞こえてきました。

欧米ともに先行きの見通しは楽観的

現時点では欧米の景況感に大きな差があるものの、足元のワクチン開発の進展(表1)を受けて、米国もユーロ圏も12カ月先の景気は改善するとの見通しが優勢となっています。年内にもワクチンが承認されるとの期待感もあり、低迷しているユーロ圏の景況感も改善する可能性が高いものと思われます。

表1:ワクチン臨床試験結果等を巡る最近の報道

  • 出所:各種報道をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
11月9日 ファイザー社 90%を超える予防効果が認められた
11月16日 モデルナ社 94.5%の予防効果が認められた
11月20日 ファイザー社 11/9発表のワクチンの緊急使用許可を米FDA(食品医薬品局)に申請
11月23日 アストラゼネカ社 平均で70%の有効性が認められた

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