金融市場NOW

世界景気への不透明感から世界の貿易量は減少傾向

2020年02月10日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

米中貿易摩擦の緩和により、世界の貿易量が改善する可能性も

  • 米中貿易摩擦や英国のEU離脱問題の影響による世界景気への不透明感から、足元の世界の貿易量は減少傾向。
  • 1月15日に米中が「第一段階の通商合意」に至ったことから、世界の貿易量は徐々に回復する見込み。今後の世界貿易に関するデータに米中貿易摩擦に端を発した世界の景気減速に反転の兆しが現れるかに注目。

世界の貿易量は伸び悩む

グラフ1:世界の貿易量とコンテナ輸送量指数の推移

  • (データ期間)世界の貿易量:2016年1月~2019年11月(月次)
    世界コンテナ輸送量指数:2016年1月~2019年12月(月次)
  • 出所:CPB、RWILのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

2019年は、米中貿易摩擦問題や英国のEU(欧州連合)離脱懸念等を背景とした世界景気の減速観測から、世界の貿易量(輸出額と輸入額の平均値)は減少傾向です。CPB(オランダ経済政策分析局)が公表した「World Trade Monitor」によると11月の世界貿易量(81ヵ国・地域をカバーし、世界の貿易量の約99%を網羅)は前年同月比-1.1%と、6ヵ月連続のマイナスとなっており【グラフ1】、世界貿易にとって厳しい時期が続いていることが浮き彫りになりました。

WTO(世界貿易機関)も、過熱する貿易摩擦や世界経済の減速を受けて貿易量予測を2019年は前年比+1.2%(前回同+2.6%)、2020年は同+2.7%(前回同+3.0%)といずれも前回予測から下方修正しています。

コンテナ輸送量の伸びも低下中

ドイツのRWI(ライプニッツ経済研究所)とISL(海運経済研究所)が公表する「世界のコンテナ輸送量指数」(2010年を100とする指数)は、2019年4月以降世界の貿易量の減少と歩を合わせて伸びが低下しています。2019年12月には前年同月比で-2.2%と、2019年2月以来10ヵ月ぶりのマイナスを記録しました【グラフ1】 。

米ISM製造業景況感指数は改善を見せる

グラフ2:米ISM製造業景況感指数の推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

一方、2月3日に公表された米ISM(供給管理協会)製造業景況感指数は50.9となり、6ヵ月ぶりに好不況の分かれ目とされる50を上回りました【グラフ2】。米中が「第一段階の通商合意」に至ったことで、景況感が改善したものと思われます。米国製造業にはサプライチェーン(製品の原材料が生産されてから消費者に届くまでの一連の工程)が全世界に広がっている企業も多く、そのサプライチェーンを通じて世界の貿易量は改善することが想定されます。

今後の貿易に関するデータに注目

米中貿易摩擦をきっかけとした世界の貿易量の減少が世界景気減速の要因の一つとなったものと思われます。足元では新型コロナウイルスの感染拡大が世界景気に悪影響を及ぼす可能性は残るものの、2020年1月15日に米中が「第一段階の通商合意」に至ったことから、今後は米中貿易摩擦の緩和期待を背景に世界の貿易量も回復するものと思われます。今後公表される世界貿易に関するデータに世界景気の回復の兆しが現れるかどうかに市場の注目が集まりそうです。

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