金融市場NOW

米ロ対立で資源価格高騰

2018年04月23日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

インフレ観測の高まりで米金利に上昇圧力が加わる懸念も

  • 米ロの対立が深まり、非鉄金属や原油等の資源価格が騰勢を強めている。アルミ先物価格は約10年ぶりの水準に、原油先物価格は約3年半ぶりの水準まで上昇。
  • 資源価格の上昇・高止まりが続けば、インフレ懸念の高まり等から米10年国債金利が上昇スピードを速め、世界の株式市場や為替市場が不安定になる可能性も。

米国とロシアの対立が深まり、非鉄金属等の資源価格が上昇しています。トランプ米政権は4月6日、シリアへの武器売却や米国へのサイバー攻撃などを理由に、ロシアに対する制裁を発動しました。プーチン大統領に近いとされるオリガルヒ(新興財閥)やその関連企業など、数多くの法人や個人が対象となっており、その中には世界生産の6%(2017年時点)を占めるアルミ大手、ルサール社が含まれています。制裁発動で同社製品が市場から締め出され、供給不足に陥るとの観測から、ロンドン金属取引所(LME)のアルミ先物価格は、制裁発動前日から4月18日までの間に26%上昇し、約10年ぶりの水準まで高騰しています。また、同社を巡る経営不安は同社が約30%の株式を保有する世界第2位のニッケル生産会社、ノリリスク・ニッケルにも及んでいます。供給懸念からLMEのニッケル先物価格は制裁発動前日から4月18日までに15%上昇し、約3年ぶりの水準に達しています。米ロ関係の悪化は原油市場にも影響を与えています。石油輸出国機構(OPEC)とOPEC非加盟主要国による協調減産期間の延長観測が高まる中、化学兵器使用を巡り、米国と英仏によるシリア攻撃が行われました。同攻撃でシリア・アサド政権を支えてきたロシアとの対立が厳しさを増し、協調減産で絞り込まれている供給が中東情勢の混乱で更に減少するとの見方等から騰勢を強め、4月18日の原油(WTI)先物価格は約3年半ぶりに1バレル68ドル台まで上昇しました(グラフ1)。

他の企業による増産が開始されたり、現在ルサール社製品を使っている企業が調達先を切り替えるまで、アルミやニッケル等の非鉄金属価格は当面上昇もしくは高止まりする可能性があります。価格上昇による米国シェール(頁岩)オイルの増産も想定されますが、米国の原油備蓄(戦略備蓄除く)が1月末時点で昨年3月末のピークより約20%減少する等、一時期に比べると供給不足感は否めず、非鉄金属同様原油価格も高止まりすることが考えられます。資源価格の高騰・高止まりは物価動向にも影響を与えます。エネルギーや貴金属、穀物等の総合的な動きを示すCRB指数(国際商品先物指数)と米10年国債金利は時間差を伴いながらほぼ同方向に動いています(グラフ2)。資源価格の上昇が続けばインフレ懸念の高まり等から米10年国債金利に上昇(価格下落)圧力が加わる可能性もあります。

グラフ1:資源価格(先物)の推移

出所:ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:CRB指数と米10年国債金利の推移

出所:ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

金融市場動向一覧へ

「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点

当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。

【当資料に関する留意点】

  • 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
  • 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
  • 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
  • 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。