金融市場NOW

デンマーク・カバード債券の足元の状況について

2022年10月07日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

欧州(ドイツ)長期金利は上昇基調を強める

  • ECB(欧州中央銀行)は9月の定例理事会で、政策金利を0.75%引き上げることを決定しました。ラガルド総裁は記者会見において、「インフレ率は中長期にわたり政策目標を上回る可能性が高い。今後数回の会合で更なる利上げを行う見通しである。」と発言しました。また、今後の金融政策についても、「データ次第であるものの、必要であれば大幅な利上げも辞さない。」とインフレ抑制に注力する姿勢を明確にし、複数会合での利上げの継続を示唆したことから、欧州長期金利(ドイツ10年国債利回り)は上昇しました(グラフ1)。

グラフ1:米10年国債利回りとドイツ10年国債利回り推移

  • 出所:ブルームバーグ等のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
  • ユーロ圏の消費者物価指数<9月速報値:前年同月比>は+10.0%と前月(8月)から0.9ポイント大幅上昇し、伸び率は統計を遡ることができる1997年以降で最大となりました(グラフ2)。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、エネルギー価格が同+40.8%となったほか、食料・アルコール・たばこも同+11.8%となりました。

グラフ2:ユーロ圏CPI(消費者物価指数)の推移

  • 出所:ブルームバーグ等のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
  • インフレ抑制のため、欧米をはじめとする主要国の金融当局が相次いで大幅利上げに動いたことから、各国の長期金利は上昇しており、欧州長期金利も上昇基調を強めています。デンマーク・カバード債券の利回りも欧州長期金利に連れて上昇しました(債券価格は下落)(グラフ3、4)。

グラフ3:欧州(ドイツ)国債とデンマーク・カバード債券の推移

  • デンマーク・カバード債券:ニクレディトDMBトータルリターンインデックス(現地通貨ベース)
  • ドイツ国債:FTSE世界国債インデックスの各国国債インデックス(トータルリターン、現地通貨ベース)
  • 出所:ブルームバーグ等のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

グラフ4:クーポン別デンマーク・カバード債券価格の動向

  • ニクレディト・レアルクレディト(2050年10月償還)クーポン別デンマーク・カバード債券価格の推移
  • 出所:ブルームバーグ等のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

デンマーク・カバード債券の格付けはAAA

  • 債券市場の値動きが激しくなる中、デンマーク・カバード債券の対円為替ヘッジ後の利回りは3.1%近い水準であり、欧州各国の国債と比較して相対的に利回りが高い水準にあります(グラフ5)。
  • デンマーク・カバード債券の格付はAAAを維持しており、相対的に高い信用力を保持しています。
    • ニクレディトDMBインデックス構成銘柄の証券格付の平均

グラフ5:欧州国債とデンマーク・カバード債券の利回り(2022年9月末時点)

  • 対円為替ヘッジ後利回り:最終利回り+為替ヘッジコスト・プレミアム
  • デンマーク・カバード債券:ニクレディトDMBインデックス
  • 各国国債:ブルームバーグ各国国債インデックス
  • 出所:ブルームバーグ等のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
  • *上記で使用した為替ヘッジコスト・プレミアムは、1ヵ月物フォワードレート等を用いて計算した想定値(年率換算)であり、実際の為替ヘッジコスト・プレミアムとは異なります。

今後の見通し

  • デンマーク・カバード債券の見通し
    • ロシア・ウクライナ情勢の長期化にともなう資源価格の高騰等を受けて、世界的にインフレが高進しています。インフレ抑制のため主要各国の中央銀行が利上げに動く中、金融政策の正常化には慎重な姿勢を示していたECBも利上げに舵を切り、今後もインフレ抑制に注力する姿勢を明確にしたことから、当面は、欧州長期金利に上昇圧力がかかりやすくなるものと予想します。
    • 一般に、金利上昇局面では期限前償還が発生しにくくなるため、デンマーク・カバード債券はデュレーションが長くなるという特性があります。そのため、デンマーク・カバード債券は当面、価格変動が大きくなる可能性はありますが、相対的に高い格付けと利回りを背景に次第に落ち着きを取り戻し、デンマーク・カバード債券への需要は次第に高まってくるものと思われます。なお、足元では、債券発行量が抑制されていることに加え、低クーポン債を中心に買い戻しがみられています。
      • 金利の変動に対する債券の価格変動の大きさを表す。一般に、デュレーションが長い債券ほど金利の動きに対する債券価格の感応度は大きくなる。
  • ヘッジコストの見通し
    • インフレ抑制のため、米国をはじめとする主要国の金融当局が積極的に利上げを進めるなか、日本と海外との金利差拡大によりヘッジコストは上昇しています。
    • デンマーク国立銀行は、9月8日にECBが0.75%の利上げを実施したことを受け、同日に政策金利を0.75%引き上げることを決定しました。デンマークの対円ヘッジコストは上昇傾向にあるものの、デンマーク・カバード債券は、他の欧州圏国債と比較しても相対的に高いヘッジ後利回りを維持しています(グラフ5)。
    • デンマーク国立銀行による利上げ実施後も、対ユーロでデンマーククローネ高が継続しており、依然として政策目標レートから乖離がある状況が続いています。
    • 今後もデンマーク国立銀行はECBの利上げに追随する可能性があることや、為替水準の安定のために利上げを実施することも予想され、ヘッジコストは上昇することが想定されます。
  • 期限前償還の見通し
    • 急速な金利上昇に伴って5.0%債の発行が中心となっています。大幅な金利低下がなければ期限前償還は当面抑制されると見込んでいます。
  • ECBによる金融政策の見通し
    • 9月時点でのインフレ見通しは、2022~2023年を中心に大幅に上方修正され、2024年もECBの中期的目標である2.0%を上回る見通しが示されました。
    • ECBの中期的なインフレ目標である2.0%達成に向け、景気悪化のリスクを容認しながらも、インフレ抑制を優先していく見込みです。ラガルド総裁は、0.75%の利上げは通常ではないとしながらも、インフレ目標に回帰するための政策金利水準からは大きく離れているとの認識を示しており、今後は、9月の理事会を含めて2回以上5回未満の利上げの可能性を示唆しています。

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