金融市場NOW
デンマーク・カバード債券の足元の状況について
2022年02月10日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
欧州(ドイツ)長期金利は上昇
- 市場では2022年内に利上げを開始するとの見方も出てきていた中、2月3日開催されたECB(欧州中央銀行)理事会後の記者会見において、ラガルド総裁は記録的なインフレ率の上昇を受けてこれまで繰り返してきた年内利上げ開始の可能性は低いとの見解を示しませんでした。市場はECBの姿勢をタカ派(金融引締め推進派)的と捉え、欧州長期金利(ドイツ10年国債利回り)は上昇しました。その後もECBが利上げ開始時期を前倒しするとの見方は根強く、長期金利は上昇基調で推移しています。
- ユーロ圏の消費者物価指数<1月速報値:前年同月比>は+5.1%と前月(2021年12月)から0.1ポイント上昇し、物価上昇は加速しています。ウクライナ情勢などの地政学的リスクの高まりによるエネルギー価格の上昇も物価を押し上げる可能性があると思われます。
- 昨年末より上昇基調となっていた欧州長期金利は、1月下旬以降上昇傾向を強めプラス圏で推移し、デンマーク・カバード債券の利回りも欧州長期金利に連れて上昇しました(債券価格は下落)(グラフ1、2)。2020年3月の価格水準をも下回り割安な水準にあると想定されます。
デンマーク・カバード債券の格付けはAAAを維持
- 債券市場の値動きが激しくなる中、デンマーク・カバード債券の対円為替ヘッジ後の利回りは2%を超える水準であり、欧州各国の国債と比較して相対的に利回りが高い水準にあります(グラフ3)。
- デンマーク・カバード債券の格付はAAAを維持しており、相対的に高い信用力を保持しています。
今後の見通し
1.欧州債券市場における過度な利上げ織り込みの解消
- ECBはテーパリング(量的緩和縮小)終了後に利上げを行う姿勢を示しており、テーパリングが開始されていない現状において、市場が利上げの織り込みに動いている状況はやや行き過ぎ感があると思われます。ラガルド総裁の記者会見の中でインフレ見通しは「特に短期的に」リスクが大きくなったことが強調されており、利上げの条件を満たすことを予想しているわけではないと考えられます。今後のインフレ動向には注意が必要ですが、過度な利上げ織り込みは修正されていくと思われます。また、デンマークにおいては、金融政策の目的が自国通貨の安定にあり、現行の為替水準は利上げをする状況にないと想定されます。
2.債券市場が落ち着きを取り戻す
- 金融政策の先行き不透明感等を背景に債券市場は値幅の激しい動きとなっていますが、徐々に金融政策が正常化に向かう中で、落ち着きを取り戻すと予想されます。債券価格の落ち着きはデンマーク・カバード債券の理論上の価格算出に優位に働くことから、良好な投資環境へ回帰していくものと想定されます。
3.デンマーク・カバード債券の需給改善
- コロナ禍の行動制限下において、デンマークでは住宅購入ニーズが旺盛となり、2021年前半は金利上昇局面でもデンマーク・カバード債券の発行量が多く、需給の悪化要因となっていましたが、昨夏以降、住宅販売は鈍化し発行量は低位となっています。
- 住宅ローンの借り換えは、既に金利低下局面において借り換え済みとなっていると見込まれることなどから、借換えに伴う債券発行は限定的になると予想され、需給は改善されていくと見込まれます。
- 今後欧米各国は金融政策の正常化に向かうことが予想されます。金利水準の上昇により各国国債への投資は収益確保が難しくなってくることが見込まれ、デンマーク金融当局による緩和的な金融政策の継続が想定されることから、相対的に高い利回りが好感されデンマーク・カバード債券への需要は高まっていくことが予想されます。
金融市場動向
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