金融市場NOW
デンマーク・カバード債券の足元の状況について
2022年03月15日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
欧州(ドイツ)長期金利は上昇
- ウクライナ情勢が緊迫化し、緊張緩和の兆しがみえない中、3月10日開催されたECB(欧州中央銀行)理事会後の記者会見において、ラガルド総裁は「ウクライナ情勢緊迫化が原油価格や資源価格を押し上げ、経済活動とインフレに重大な影響を及ぼしている。」と発言しました。また、今後のインフレ指標の結果次第では、資金供給策である資産購入プログラム(APP)を7-9月期にも早期終了させる旨を示しました。市場はECBの姿勢をタカ派(金融引締め推進派)的と捉え、欧州長期金利(ドイツ10年国債利回り)は上昇しました(グラフ1)。
- ユーロ圏の消費者物価指数<2月速報値:前年同月比>は+5.8%と前月(1月)から0.7ポイント上昇し、上昇幅は統計を遡れる1997年以降で最大となりました(グラフ2)。米国によるロシア産原油の禁輸措置などにより原油を始めとしたエネルギー価格は上昇しており、今後も物価を押し上げる可能性があると思われます。
- 昨年末より上昇基調となっていた欧州長期金利は、投資家のリスク回避姿勢の高まりにより一旦低下したものの、直近では上昇基調を強め、デンマーク・カバード債券の利回りも欧州長期金利に連れて上昇しました(債券価格は下落)(グラフ3、4)。2020年3月の価格水準をも下回り割安な水準にあると想定されます。
デンマーク・カバード債券の格付けはAAA
- 債券市場の値動きが激しくなる中、デンマーク・カバード債券の対円為替ヘッジ後の利回りは2%を超える水準であり、欧州各国の国債と比較して相対的に利回りが高い水準にあります(グラフ5)。
- デンマーク・カバード債券の格付はAAAを維持しており、相対的に高い信用力を保持しています。
今後の見通し
- ECBによる緩やかな金融政策正常化
- ECBは3月理事会でテーパリング(量的緩和縮小)終了の前倒しを示唆しました。一方、政策金利の引き上げについてはテーパリング終了の「しばらく後」としつつ、利上げペースは「緩やか」としています。足元のウクライナ情勢緊迫化による地政学リスクの高まりを背景に、エネルギー価格主導でインフレ懸念が高まっていることから、利上げ時期の前倒しを意図したわけではないことを強調しつつ、状況に応じて政策対応が可能であることを示す目的があったものと想定されます。マーケットでは利上げを織り込む動きがみられたものの、利上げの判断はデータ次第であることを強調していることから、慎重な政策判断が行われると想定され、過度な利上げ織り込みは修正されると思われます。また、デンマークにおいては、金融政策の目的が自国通貨の安定にあり、現行の為替水準では利上げをする状況にないと想定されます。
- 債券市場が落ち着きを取り戻す
- 金融政策の先行き不透明感や地政学リスクの台頭を背景に債券市場は値幅の激しい動きとなっていますが、ウクライナ情勢が収束し、金融政策が緩やかに正常化に向かえば、次第に落ち着きを取り戻すと予想されます。債券価格の落ち着きはデンマーク・カバード債券の価格動向に優位に働くと考えられることから、良好な投資環境へ回帰していくものと想定されます。
- デンマーク・カバード債券の需給改善
- コロナ禍の行動制限下において、デンマークでは住宅購入ニーズが旺盛となり、2021年前半は金利上昇局面でもデンマーク・カバード債券の発行量が多く、需給の悪化要因となっていましたが、昨夏以降、住宅販売は鈍化し発行量は低位となっています。
- 住宅ローンの借り換えは、既に金利低下局面において借り換え済みとなっていると見込まれることなどから、借換えに伴う債券発行は限定的になると予想され、需給は改善されていくと見込まれます。
- 今後欧米各国は金融政策の正常化に向かうことが予想されますが、当面はデンマーク金融当局による金融政策は相対的に緩和的なスタンスの継続が想定されることから、高いヘッジ後利回りが好感されデンマーク・カバード債券への需要は高まっていくことが予想されます。
金融市場動向
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