金融市場NOW

英・EU通商協議 合意に至らず交渉継続を表明

2020年12月16日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

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金融市場ラインマーカー

最大の争点は豊富な水産資源を持つ英国領海を巡る漁業権か

  • 英国・EU(欧州連合)の通商協議は、双方が交渉の期限と定める13日を過ぎるも交渉の継続を表明。
  • 英国内事情などを考慮すれば、年内の大筋合意に楽観的な見方が大勢を占めている。しかし双方の貿易品に関税が賦課される2021年1月1日は迫っており、リスク回避姿勢が強まることには注意が必要。

交渉継続を表明も期限は明示せず

大詰めの交渉が続く英国・EUの通商協定協議は、交渉期限の13日までに合意に達することができず、交渉が継続されています。なお、交渉の期限は明示されていません。英ジョンソン首相は、通商協定なしとなる可能性を警告し、EUも交渉決裂に備えて、経済などの混乱回避を目的とした6カ月間の英・EU間の輸送トラック双方乗り入れなどの対応計画を公表しました(表1)。ただし、双方の担当者は協議を続けており、数日内の合意もあり得るとコメントされています。

表1:EU緊急時対応計画

  • 出所:各種報道資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
項目 内容
航空旅客輸送 6カ月間の英国~EU間の一定の航空サービス提供
航空の安全 航空機の運航停止回避のため、EU航空機の航空安全を保証。
道路の接続 6カ月間の貨物輸送、旅客輸送について往来の保証。
漁業 2021年から1年間もしくは、漁業協定が締結されるまで双方船舶が双方の水域での操業を保証。

最大の争点は漁業権か

双方の溝が埋まらないのは「英国海域でのEU諸国の漁業権」、「公正な競争環境の確保」、「(公正な競争環境が確保できない場合などの)紛争解決ルール」の3項目と見られます。争点の3項目のうち、「公正な競争環境の確保」と「紛争解決ルール」についてはEUが譲歩の姿勢を見せているとの報道もあり、最大の争点は漁業権であると見られています。英仏は豊富な水産資源を保有する英国領海を巡り長年対立しています。仏マクロン大統領は2022年の大統領選を控えて、多くの漁業従事者や水産加工業者など国民に国益を守る強い姿勢を示す必要から、EUが譲歩することがないようけん制しているようです。

市場は楽観的な見方

グラフ1:英ポンド・ユーロの推移

  • 出所:ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

交渉期限を控えて対ドルで下落していた英ポンドは14日、交渉継続を好感し反発しました。一方でユーロの反応は限定的なものとなりました。一部の市場参加者は、一連の“通商協議問題”は英国にのみ問題であり、EUへの影響は限定的とみているようです。また、英国においても、ジョンソン首相の支持率が30%程度まで低下しており、与党保守党の支持率と野党労働党の支持率はほぼ拮抗しつつあります。このことから交渉を長引かせることは国民に支持されていないように思われます。EU離脱強硬派として首相を支えてきたカミングス上級顧問が辞任を表明しています。理由は明らかにされていませんが、EUへ強硬姿勢を示す戦術を主導してきた要人の辞任により英国は譲歩する余地が生まれたとの見方があります。また、通商協議の交渉材料に、1998年の英国領北アイルランドの和平協定を軽視するともとれる法案の成立に動いた英政権の姿勢について、次期米大統領就任が事実上確定したバイデン氏も批判しており、「あらゆる米英の通商協定は北アイルランド和平を尊重することが条件になる」と発言しています。英首相の支持率低下、対EU強硬派要人の辞任、対米関係の悪化懸念などの状況から、英国が譲歩して年内に大筋合意する可能性は高いとの楽観的な見方が大勢を占めています。しかし英国、EU双方の貿易品への関税賦課が開始され混乱が予想される2021年1月1日が迫っており、リスク回避姿勢が急速に強まることには注意が必要と思われます。

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