金融市場NOW

EU臨時首脳会議で「欧州復興基金」の設立に合意

2020年07月28日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

補助金額3,900億ユーロ、融資金額3,600億ユーロで合意

  • 延べ5日間にわたるEU臨時首脳会議で「欧州復興基金」の設立が全会一致で合意。
  • 返済義務のない補助金額を巡り、協議は難航したが、補助金額を3,900億ユーロとすることで合意。
  • 市場は合意を好感し、リスク選好姿勢を強める。

EU加盟国は欧州復興基金の設立で合意

新型コロナウイルスで景気が大きく後退した欧州経済を立て直すための、「欧州復興基金」について、EU(欧州連合)臨時首脳会議において協議が行われ、返済不要の補助金が3,900億ユーロ、返済が必要な融資が3,600億ユーロの総額7,500億ユーロ規模とすることで合意されました。EU臨時首脳会議は7月17~18日の予定でしたが、7月よりEU議長国となったドイツの強い意向もあり、21日まで延長されて合意に至りました。欧州委員会が公表したEUの2020年の成長率見通しが前年比-8.3%と従来予想(同-7.4%)からさらに悪化する見込みで、財政支援が遅れた場合には財政事情が苦しいイタリア等のさらなる財政悪化の懸念が背景にあるようです。また、ドイツ国債とのスプレッド(利回り差)が再び拡大することも懸念されていました。

当初は、7,500億ユーロのうち5,000億ユーロを補助金、残りの2,500億ユーロを融資とする案が欧州委員会から提案されていましたが、倹約4カ国と言われるオランダ・オーストリア・デンマーク・スウェーデンの反対意見が強く、協議は平行線をたどっていました。今回の首脳会議で合意を図るため、ミシェルEU大統領は補助金額を減額する修正案を提示しましたが、倹約4カ国の反対姿勢を覆すには至りませんでした。しかし、度重なる交渉の結果、支援対象国が条件を満たしていない場合に資金提供を一時的に停止する仕組みが組み込まれたことで倹約4カ国も態度を軟化させたものと思われます。ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁も先日の定例理事会後の記者会見で復興基金が設立されることを強く歓迎すると発言しており、欧州は金融、財政両面で域内を支援する体制が整ったと言えそうです。

合意の概要

  • 3,900億ユーロの返済不要の補助金と3,600億ユーロの融資
  • 補助金の70%は2021~2022年の2年間で拠出。残りの30%は2023年に拠出
  • 各国への割り当ては欧州委員会の提案に基づき決定
  • 欧州委員会が加盟国が策定した目標の達成状況の評価を行う
  • 支援対象国が利用条件から逸脱した場合には資金提供が一時的に停止される
  • 出所:欧州理事会資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

市場は合意を好感し、ユーロ買いに

グラフ1:市場は合意を好感

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

市場は復興基金の合意を好感し、為替市場はユーロ買いドル売りで反応しました。また、欧州景気の不安材料が1つ解消されたとの見方から投資家のリスク選好姿勢が強まり、ドイツ国債とイタリア国債のスプレッドが縮小しました(イタリア国債が選好)。欧州では少なくとも2021年6月まではパンデミック緊急購入プログラムによる資金供給が継続することが決定されているため、南欧諸国の資金繰り不安が解消されれば、ユーロ高、ドイツ・イタリア国債スプレッド縮小の動きが続くことも想定されます。

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