金融市場NOW

イタリア経済が欧州経済回復の妨げに

2019年11月27日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

新連立政権発足から3ヵ月 景気低迷に変化は見えず

  • 2020年度のイタリア予算案は、財政拡張的なものとならず。
  • イタリア経済の低迷は継続。財政出動による景気対策も困難で、景気回復には時間がかかりそう。
  • 景気低迷は政権与党にとって逆風。地方選挙で政権与党の敗北が続けば、解散総選挙も視野に。

2020年度予算案は特段問題視されず

イタリアでは9月に五つ星運動と民主党によるEU(欧州連合)寄りの新連立政権が発足しました。反EU姿勢が強く、財政出動に前向きであった「同盟」が連立政権から外れた結果、市場が懸念していた2020年度予算案は、財政拡張的なものとはなりませんでした。やや拡大した対GDP(国内総生産)比の財政赤字は、欧州委員会から指摘を受けたものの、即座に修正を要求されるほどではなく、大きく問題視されることはありませんでした。

イタリア経済の低迷が継続

グラフ1:イタリアの製造業PMI

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

IMF(国際通貨基金)や欧州委員会の予測ではイタリア経済の低迷は継続する見込みです。財政拡張的でない予算は、財政出動による景気対策を打ち出せないことにつながり、イタリア経済の回復が遅れることになるものと思われます。足元の経済指標を見ても、製造業PMI(購買担当者景況感指数)は13ヵ月連続で好不況の境目と言われる50を下回る状況が続くほか【グラフ1】、10月の小売売上高も前年同月比プラスこそ記録したものの市場予想を下回り、なかなか経済が浮上する兆しが見えてこないようです。

10月の地方選挙では野党である同盟が圧勝

今後も低成長が継続する場合、国民の批判の矛先が連立政権に向かうこともありそうです。10月末に行われた新連立政権初の地方選挙では、与党が圧倒的な地盤を有している地域で、野党である「同盟」の圧勝という結果も見られました。報道等によれば、従来からの与党支持者の中には「与党の政策はいいと思うが問題の解決につながっていない」として、選挙では「同盟」に投票した人もいるようです。

ドイツとイタリアの10年国債金利差が再拡大

グラフ2:ドイツ・イタリア10年国債金利

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

2020年1月に与党の支持率が高い地域で行われる選挙は連立政権にとって試金石となりそうです。再び野党が勝利するようなことになれば、連立政権崩壊の危機(解散総選挙)につながることも考えられます。解散総選挙が現実味を帯びてくれば、イタリアの金融市場は波乱含みの展開となることが予想されます。現在、ドイツとイタリアの10年国債の金利差が再び拡大しつつあります。これまで利回りがドイツ国債より高いイタリア国債には資金が流入し、二国間の国債の金利差は縮小する傾向がありましたが、イタリアの景況感や政局を懸念し、イタリアから資金が流出している可能性がありそうです。これまで欧州景気低迷の原因となっていたドイツ経済にやや底打ちの兆しが見えますが、イタリア経済は回復の兆しが現れず、今後、欧州の景気回復を妨げるリスクの一つとなることも想定されます。

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