金融市場NOW

イタリアで新連立政権が発足

2019年09月02日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

現在の連立政権は崩壊。五つ星運動と民主党の左派連立政権が発足。

  • 五つ星運動と同盟の連立政権が終焉を迎える。
  • 新たな連立政権樹立か解散総選挙が必要となったが、解散総選挙に後ろ向きであった議会の解散権を持つマッタレッラ大統領は、新連立政権樹立へ向け、各党代表らと協議。
  • 五つ星運動と民主党の左派による連立政権が発足。連立政権が策定する2020年度の予算案に注目。

反EUの連立政権が崩壊

イタリアの政局が新たな展開を迎えています。イタリア政府は左派である五つ星運動と右派である同盟というEU(欧州連合)懐疑派政党の連立政権となっていました。連立政権発足当初は五つ星運動の支持率が高かったものの、足元では同盟の支持率のほうが高くなっており、5月に実施された欧州議会選挙では同盟が第一党となっています【表1】。五つ星運動と同盟は反EUという理念では一致しているものの、基本的な政策の方向性は異なっていました。方向性の違いによる確執が強まった結果、同盟がコンテ首相(連立政権)に対する不信任案を提出するに至りました。8月20日に採決が行われる予定でしたが、コンテ首相が採決前に自ら辞任を表明することで、現在の連立政権に終止符が打たれることとなりました。

表1:イタリア選挙時の各政党の得票率

  • 出所:各種報道をもとにニッセイアセットマネジメントが作成
政党名 イタリア下院議員構成比 2019年欧州議会選挙得票率
五つ星運動 34.3 17.1
同盟 19.8 34.3
民主党 17.6 22.7
フォルツァ・イタリア 16.5 8.8
イタリアの同胞 5.2 6.5

イタリアの公的債務は高水準

グラフ1:イタリア・スペイン・ポルトガルの公的債務

  • 出所:Eurostatのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

イタリアの公的債務の対GDP(国内総生産)比率はEU内でも高い水準であり、かつ、低下傾向にないことから【グラフ1】、その水準を引き下げるために、単年度の予算案で財政赤字を抑制することが欧州委員会より求められています。5月の欧州議会選挙で第一党となった同盟のサルビーニ党首は、ユーロ圏の財政規律を無視してでも、財政支出(減税)を行いたいと公言していることもあり、同盟が主導権を握る可能性が高いと考えられている解散総選挙の可能性が報じられた際には、イタリアの国債金利は急上昇しました。

左派の連立政権が新たに発足

議会を解散する権限を持つマッタレッラ大統領は、財政赤字削減を盛り込んだ2020年度の予算案が、年内に欧州委員会で承認されなかった場合には、付加価値税(VAT)を22%から25.2%に上げる必要があることから、予算案策定が後ずれする可能性のある解散総選挙には後ろ向きであると言われており、新連立政権樹立に向けて各党代表らと協議を行いました。その結果、下院で第一党である五つ星運動と第三党である民主党による左派の連立政権が新たに樹立されることとなりました。

今後のイタリアの予算案に注目

今後は新連立政権が10月に欧州委員会に提出する2020年度予算案に注目が集まるものと思われます。市場が懸念していた解散総選挙の実施や同盟主導による右派の連立政権の発足は免れたことから、国債金利は再び低下基調となっています。しかし、第一党である五つ星運動は財政拡張的な政策を望んでいると言われているため、財政赤字削減を盛り込まない予算案が提出された場合には、2018年同様にイタリア政府と欧州委員会の軋轢が生じ、国債金利が再び急上昇するおそれがあると考えられることから、今後のイタリア政府の動向には注意が必要と思われます。

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