金融市場NOW

イタリアを巡る最近の市場動向

2018年11月05日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

国債格下げリスクは低下したものの、イタリア政府と欧州委員会の対立は続く

  • イタリア政府は2019年度の財政赤字目標を対GDP比2.4%とする予算案を策定。
  • イタリア政府が策定した予算案に対して欧州委員会は差し戻し、3週間以内の再提出を要求。
  • イタリア国債が投資不適格になる可能性は後退。
  • 格付け会社の格付けで「BB」格(Moody’sの表記は「Ba」)以下の格付けが付与されること。現在のイタリアの格付けは「BBB」(Baa)格。

11月に入り、金融市場を取り巻く環境は、米中貿易摩擦、サウジアラビア人記者殺害事件、米国の企業業績悪化懸念、イギリスのEU(欧州連合)離脱問題等、不確定要素が多くなっています。先日のECB(欧州中央銀行)理事会後のドラギ総裁の記者会見でも質問が出たように、イタリアの2019年度予算問題も市場を不安定にさせる要因の一つとなっています。

予算案を巡る混乱

イタリア政府は2019年度の財政赤字目標を対GDP比2.4%とする予算案を策定しましたが、公的債務水準がEU(欧州連合)の財政規律に沿って減少しない等の理由で欧州委員会はその予算案を差し戻し、11月13日までに再提出するように要請しています。しかしながら、イタリア政府高官の発言からは、財政赤字目標が引き下げられる可能性は低いものと見られます。イタリア政府が変更要請を拒んだ場合、最終的には、欧州委員会は最大でGDP比0.5%までの罰金を科すなどの制裁に向けた手続きに着手することになります。これまで欧州委員会が各国政府に対して制裁を科したことはなく、制裁が科された場合、市場は大きく混乱する可能性があります。

イタリア国債の格付け

市場ではイタリア国債が投資不適格になるのではないかとの懸念から、大きく売り込まれる展開となっていました(金利は上昇)。10月19日にMoody’sによる格下げ(Baa2⇒Baa3。見通しは安定的)、10月26日にS&Pによる見通しの変更(格付けはBBBで変わらず。見通しは安定的⇒ネガティブ(1、2年の間に格下げされる可能性がある))が行われましたが、イタリア国債がすぐに投資不適格になることはないと判断され、市場には安心感が漂い、買戻しが入る結果となりました(金利は低下)。

現時点ではイタリア国債が投資不適格になる可能性が遠のいたため、市場は一旦落ち着きを取り戻していますが、イタリアの予算案に関する問題はまだ解決しておらず、イタリア政府と欧州委員会の対立は当面続くものと見られ、引き続き注意が必要と考えています。

グラフ1:10年国債金利の推移

出所:ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

グラフ2:株価指数の推移

※2017年12月末を100として指数化 出所:ブルームバーグデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

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