金融市場NOW

国主導で「無電柱化」の進展を

2016年10月25日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

良好な景観 街並み維持

  • 景観維持のため、建築物や屋外広告を規制する動きが地方自治体で広がっている。
  • 現在、政府主導で2020年の東京五輪に向け、電線を地中に埋めて電柱をなくす「無電柱化」を進めている。
  • 土地の資産価値を高めるだけでなく、防災面での効果も見込まれるため、国主導での加速が期待される。

良好な景観を保ち、地域の魅力を高めるために、建築物や屋外広告を規制する動きが地方自治体の間で広がりつつあります。政府も法整備等で後押ししており、美しい街並みにより観光客誘致につなげる狙いもあるようです。実際に、良好な景観が都市の魅力を創出し、観光交流人口の増加に成功した自治体も多数見受けられます。(写真1)

景観に関する法規制は2004年に施行された「景観法」をはじめ多岐にわたり(表1)、景観規制に乗り出す自治体も増加傾向にあります(グラフ1)。近年特に注目されているのは、政府が2020年の東京五輪に向けて電線を地中に埋めて電柱をなくす「無電柱化」の取り組みです。国土交通省は2016年度補正予算で事業費を数十億円確保し、国道の無電柱化などに利用する方針であり、財務省は日本政策投資銀行から電力会社や通信会社に資金を貸し出す仕組みを新たに設け、後押ししていきます。

国内の電柱は約3,500万本で、現在も年7万本ペースで増加しています。ほぼ100%地中化されたロンドンやパリなどに比べ日本は整備が遅れており、地中化が最も早い東京23区でも約7%(道路延長ベース)にとどまっているのが現状です(グラフ2)。無電柱化は景観の改善で土地の資産価値を高めるとともに、地震等で倒壊する心配もないなど防災面でも効果が見込まれるため、今後、国主導で各自治体が取り組みを加速させることが期待されます。

写真1:良好な景観形成による観光交流人口の増加

出所:ニッセイアセットマネジメントが撮影
出所:ニッセイアセットマネジメントが撮影
※城下町地区(埼玉県川越市)

表1:景観に関する法規制は多岐にわたっている

出所:各種報道等、国土交通省のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成
法律名 主な内容
景観法 自治体が景観計画を定め、景観にそぐわない建物の是正を命じられる
屋外広告物法 自治体は条例に適合しない屋外広告の除却を命じられる
都市緑地法 良好な景観につながる緑地保全などを定める
電線共同溝の整備等に関する特別措置法 良好な景観につながる電線地中化の手続きなどを定める
文化財保護法 歴史的な街並みなどを保護する
都市計画法 用途地域ごとの土地利用を規制する
建築基準法 建物の構造や用途地域ごとの容積率などを規制する

グラフ1:景観計画を策定する自治体は増加傾向

景観計画を策定する自治体は増加傾向
※景観計画策定団体の推移
出所:各種報道等、国土交通省のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:無電柱化において日本は世界に出遅れている

無電柱化において日本は世界に出遅れている
※無電柱化の普及率
*ロンドン、パリは2004年、シンガポールは1998年、ソウルは2011年、東京は2013年の状況
出所:各種報道等、国土交通省のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

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