金融市場NOW
J-REIT市場 現状と今後の見通し(4)
2012年09月11日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
(7)都心オフィス供給のピークアウトとオフィス市況改善期待
グラフ7:東京都心5区及びJ-REIT保有オフィスの空室率推移

- 都心5区の賃貸オフィス空室率(平均)は、足元高止まりしています【グラフ7】。これがJ-REIT市場、特にオフィス系REITの上値を抑える要因ともなっています【グラフ8】。
- 空室率高止まりの原因のひとつとして、「オフィスの2012年問題」があります。これは東京23区での新規オフィスの供給量が大きく増加し、その結果既存の物件の稼働率に悪影響を及ぼすとの見方です。しかし、この新規供給も6月でピークを超えたと見られています。
- 復興予算の本格執行等により国内景気は回復基調が続いていると思われます。新規供給の減少により、今後空室率の改善が進むものと見られ、それが後の賃料底打ち・上昇に繋がっていくものと考えられます。
- 東京証券取引所の分類では、8月末時点のJ-REIT市場全体の時価総額(約3.7兆円)の内、約6割をオフィス系REITが占めます【グラフ9】。賃貸オフィスマーケットの改善が明らかになれば、オフィス系REITに注目が集まり、市場のけん引役を果たす可能性もあります。
- 尚、J-REITは耐震性の優れた物件を多く保有しています。都心5区に比べ、J-REITが保有するオフィス(全国)の空室率は低い水準にあります【グラフ7】。また昨年3月の震災以降、空室率の低下が顕著になっています。借手が震災対応力を重視し始めた結果ですが、改めてJ-REIT保有物件の競争力の高さがうかがい知ることが出来ます。
グラフ8:J-REIT用途タイプ別指数の推移

グラフ9:J-REIT用途タイプ別構成比

- 国内不動産市況の回復期待、規制緩和への本格的な取組み開始等を受けて、J-REIT市場の潮目は変わりつつあるように思われます。
- 欧州債務問題の再燃観測等から、東証REIT指数は1000ポイント回復を目前に足踏み状態となっています(8月末東証REIT指数:973.44ポイント)が、当債務問題がこれ以上悪化しないなどの期待感が高まれば、J-REIT市場(東証REIT指数)は水準を切り上げる可能性もあるものと見ています。
金融市場動向
関連記事
- 2025年02月20日号
- 機械学習の手法を活用しシクリカル株に投資(前編)
- 2025年01月23日号
- 成長性を評価する定量指標(1)
- 2025年01月17日号
- 【アナリストの眼】データが導くヘルスケアのイノベーション
- 2024年12月13日号
- 【アナリストの眼】食品企業の挑戦:インフレ継続をチャンスに変えられるか
- 2024年11月18日号
- 【アナリストの眼】KDDIがローソンと挑む「ソーシャル・インパクト」は、株主の期待に応えられるか?
「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点
当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。
【当資料に関する留意点】
- 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
- 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
- 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
- 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
- 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。