金融市場NOW
J-REIT市場 現状と今後の見通し(1)
2012年09月11日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
(1)国内株式との連動性が低くなりつつあるJ-REIT市場
- J-REIT市場の国内株式との連動性が低くなりつつあるように思われます【グラフ1、表1】。今年に入ってからの動きを見ますと、欧州債務危機の再燃等を受けてTOPIXは4月以降大きく下落したのに対し、J-REITは5月には下げ止まり、その後緩やかな上昇基調に転じています。3月末頃まで国内株式とほぼ連動していたJ-REIT市場ですが、その流れに変化の兆しが出始めています。
- J-REITが相対的に堅調に推移している要因として、
- J-REITが現時点で海外不動産を所有しておらず、直接的な為替リスクが無い
- 配当利回りが国内株式よりも高い(8月末時点の予想配当利回りはJ-REITが5.35%、TOPIXが2.55%)
- J-REIT市場活性化の動きが本格化し始めている
- J-REITの収益の多くは賃料収入であり、賃料は比較的景気変動の影響を受けにくい
- 尚、昨年末から今年8月末にかけての業種別(東証33業種分類)騰落率では、不動産業が値上り率トップとなっており、J-REITを含めた不動産関連セクターが相対的に堅調に推移していることが分かります【表2】。
グラフ1:東証REIT指数とTOPIXの推移

表1:東証REIT指数とTOPIX騰落率比較
(データ期間:2011年12月末~2012年8月末)
項目 | 騰落率(%、ポイント) | |
---|---|---|
配当除き指数 | 配当込み指数 | |
東証REIT 指数(1) |
16.7 | 21.0 |
TOPIX(2) | 0.4 | 1.7 |
差(1)-(2) | 16.3 | 19.3 |
表2:東証33業種上昇率・下落率上位5業種
(データ期間:2011年12月末~2012年8月末)(%)
上昇率上位5業種 | 下落率上位5業種 | ||||
---|---|---|---|---|---|
順位 | 業種名 | 騰落率 | 順位 | 業種名 | 騰落率 |
1 | 不動産 | 25.1 | 1 | パルプ・紙 | -31.6 |
2 | 食料品 | 15.3 | 2 | 海運 | -25.7 |
3 | その他金融 | 14.7 | 3 | 鉄鋼 | -24.3 |
4 | 証券・商品業 | 11.6 | 4 | 電気・ガス | -23.5 |
5 | 精密機器 | 10.4 | 5 | 空運 | -19.6 |
(2)資金流入が顕著になり始めたJ-REITファンド(公募投信)
- 公募投信におけるREITファンドへの資金流出入状況において、J-REIT市場への注目度が高まりつつあることが確認できます。7月、8月とREIT投信全体では資金流出となったのに対し、J-REIT投信は資金流入超となっています【表3】。これまでは、米国やグローバルREIT投信が資金流入を牽引してきましたが、その動きに変化が生じつつあるようです。
- J-REIT市場の出遅れ感【グラフ2】、イールド・スプレッド(配当利回り-10年国債利回り)の高さ【グラフ3】、国内不動産市況の反転期待等がその背景にあるものと思われます。
表3:REIT投信への資金流出入動向
項目 | 2012年 | ||
---|---|---|---|
4月~6月累計 | 7月 | 8月 | |
J-REIT | 189 | 167 | 143 |
海外REIT | 3,824 | -320 | -721 |
グラフ2:主要国REIT指数(現地通貨ベース)の推移

グラフ3:主要国REIT市場のイールド・スプレッド

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