金融市場NOW

J-REIT市場 現状と今後の見通し(3)

2012年09月11日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

(6)J-REITの活性化に向け積極化する規制緩和等の取組み

  • 昨年12月24日に、「日本再生の基本戦略」が閣議決定されました。その中に、"J-REIT市場の活性化"が盛り込まれています。不動産投資市場の活性化による資産デフレからの脱却を図るための取り組みです。
  • こうした背景を受け、米国REIT市場の制度等を参考に、規制緩和をめぐる動きが本格化してきました。これまでに明らかになった検討項目としては、【表6】の通りです。資金調達手段の多様化等に関しては、自己投資口(自社株買い)の解禁が注目されています。当制度は米国、オーストラリア、カナダ等のREIT市場では既に認められています。自己投資口の取得が解禁となれば需給の改善に繋がることが期待されます。
  • これまでJ-REIT市場が、年金等の大口の資金を呼び込めなかった理由として、1)市場規模が小さく、流動性が乏しいこと、2)米国REITに比べて制度面や実務面での制約が多く、将来の成長の妨げになる、といった点が挙げられていました。
  • 規制緩和の動きはJ-REIT市場の厚みを増し、年金等の新たな資金を呼び込むきっかけにもなるものと思われます。

表6:これまでに明らかにされた規制緩和等の取組み

(2012年8月末時点)

出所:各種報道を基にニッセイアセットマネジメント作成
<1> 資金調達手段の多様化、自己投資口取得(自社株買い)の解禁等
内容 関連省庁等 スケジュール
  • 株主割当増資の解禁等資金調達手段を多様化することで資金繰りを容易にし、信用力の強化を図る。
  • 自己株式取得を解禁し、需給の改善を図る。
金融庁 2013年の通常国会での投信法改正案の提出を目指す。
<2> 税制優遇措置の検討
内容 関連省庁等 スケジュール
  • 米国REIT市場の拡大をもたらしたUPREIT(アップリート)( Umbrella Partnership REIT)と類似の制度を導入し、J-REIT市場の拡大を図る【グラフ5】。
  • 現在は、土地や建物などの現物を組合に出資する際、譲渡益にかかる税金は出資した年度中に納める必要がある。
  • この課税の繰り延べを認め、所有者が出資に応じた持分権を他に売却したときに初めて課税する仕組みに改めるもの。
国土交通省
金融庁
経済産業省
2014年度の実現を目指す。
<3> 海外不動産取得の実質解禁
内容 関連省庁等 スケジュール
  • J-REITが海外不動産を取得すること自体は2008年の東証の上場規定改定で認められた。しかし、以下の制約等から、現時点では海外不動産の保有しているJ-REITは無い。
  • 海外では不動産会社が作る特定目的会社(以下SPC)が不動産を保有しているケースが多い。不動産を取得する場合にはSPCの株式を買う必要があるが、現在は株式の過半を保有することは禁止されている。海外のSPCの株式を取得する場合は例外とする対応を行うもの。
  • 保有不動産の地域分散により、地震リスクや賃料変動リスク等を軽減したり、又、高い成長力が見込める新興国の不動産を組入れることでJ-REITの魅力が増す可能性がある。
政府 2013年の通常国会での投信法改正案の提出を目指す。
<4> 病院対象のJ-REIT(ヘルスケアリート)の普及
内容 関連省庁等 スケジュール
  • 施設を借りて運営する病院・介護事業者とJ-REITとの間でトラブルが起きないよう賃料等の指針をまとめる。
  • 米国ではヘルスケアリートが広がっており【グラフ6】、日本も高齢化対策の一環として環境を整備する。又、建替えの推進等により病院等の耐震性の強化を図る。
  • 介護施設は入居する高齢者からの安定した賃料支払が見込め、組入れを行うJ-REITの値動きが穏やかになることが期待される。
国土交通省
金融庁
厚生労働省
近く有識者や3省庁による検討委員会を発足させる。

グラフ5:米国REIT時価総額推移(UPREIT制度導入前後)

出所:NAREITデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

グラフ6:米国REIT業種別構成比

出所:NAREITデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

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