金融市場NOW

J-REIT市場 現状と今後の見通し(2)

2012年09月11日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

(3)下支え役が期待される日銀のJ-REIT買入れ

  • 日本銀行は、4月27日の金融政策決定会合で、J-REIT買入予定枠を100億円増額して総額で1,200億円としました。
  • 今年に入ってからの月別動向では、J-REIT市場が欧州債務危機等の要因で調整色を強めた5月には計6回、138億円の買入を行いましたが、市場が落ち着きを取り戻した6月以降はほぼ静観状態となっています【表4】。8月末時点での累計買入額は933億円、枠残額は267億円です。引き続きJ-REIT市場を下支えする役割が期待されます。

表4:日本銀行のJ-REIT買入実績

(2012年8月末時点)

(注)想定買入コストとは買入日の東証REIT指数(終値) の買入金額加重平均値
出所:日本銀行のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成
  回数 金額 想定買入コスト
(東証REIT指数)
(回) (億円) (ポイント)
2010年下期計 1 22 1,094
2011年上期計 9 175 1,053
2011年下期計 31 468 945
2012年1~8月計 15 268 931
  2012年1月 0 0 0
  2012年2月 3 39 905
  2012年3月 2 28 946
  2012年4月 2 34 967
  2012年5月 6 138 930
  2012年6月 1 13 883
  2012年7月 1 16 937
  2012年8月 0 0 0
合計 56 933 964

(4)増加傾向にある海外資金の国内不動産投資

  • ゴールドマン・サックスが4年ぶりに日本の不動産への投資を再開、仏保険大手アクサグループが1000億円規模の私募ファンドを設立し国内不動産投資に乗り出す等、海外投資家の国内不動産投資の動きが活発化しつつあります(表5)。
  • 資金流入増加の要因としては、これまでの地価下落により底打ち感が出始めていること、世界的に見た割安感、日本の不動産市場の流動性の高さ等が挙げられます。
  • 海外資金による国内不動産の取得が活発化すれば、地価の反転・上昇の時期を早め、J-REIT市場にも好影響をもたらすものと考えられます。

表5:海外投資家による不動産投資(計画)の例(投資<予定>金額が1000億円以上)

(2012年8月末時点)

出所:各種報道を基にニッセイアセットマネジメント作成
発表日 投資家 概要 金額
2012年8月 アクサ 仏保険大手アクサグループが、三井住友信託銀行とともに私募ファンドを設立し不動産投資に乗り出す。投資対象は東京都心のオフィスビル。1,000億円規模のファンドを設立、運用を目指す。 1000億円
2012年7月 Goldman Sachs 今年8月に専用のファンド(私募REITファンド)を立ち上げ。年金基金等から資金を集め、都心のオフィス等に投資。投資額は最大3000億円規模に。5年以内に10倍に。国内不動産への投資は約4年ぶり。 3000億円
2012年3月 Goodman Group 東京港、川崎港、横浜港に隣接するエリアの物流施設用地取得を発表。竣工時の想定資産価値は135億円超。今後1年~1年半の間に1000億円規模の物流施設を開発。 1000億円

(5)鮮明化しつつある地価の底打ち傾向

  • 8月24日に国土交通省から2012年第2四半期(7月1日時点)の「主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)」が発表されました。今回のデータでは地価の底打ち傾向が更に鮮明になりました。
  • 東京圏を例に取りますと、2008年第2四半期以降、3ヵ月前に比べて地価が「下落した」が「上昇した」を上回る状態が続いていましたが、今回のデータではほぼ同じ比率となっています。
  • 地価の底打ちは不動産デフレからの脱却を印象付けるものですが、その保有する不動産の鑑定評価額の上昇等を通じて、J-REITにも好影響を与える可能性があります。

グラフ4:地価LOOKレポート:東京圏

(データ期間:2007年第4Q~2012年第2Q、四半期)

出所:国土交通省資料を基にニッセイアセットマネジメント作成
  • 資料は3ヵ月前に比べた上昇、横ばい、下落地点の割合を示す
主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)とは

国土交通省が四半期ごとに実施・公表している地価動向調査。

全国主要都市の一等地150地区(東京圏65地区、大阪圏39地区、名古屋圏14地区、地方圏32地区)を対象とし、前回調査との比較を行う。

公示地価や路線価などが年1回の調査結果であるのに対し、地価LOOKレポートは3か月ごとであるため、地価動向を先行的に把握することができる。

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