吉野貴晶の『景気や株価の意外な法則』

No.14
SARSが懸念された2003年を振り返って

2020年01月29日号

投資工学開発室
吉野 貴晶

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で16年連続で1位を獲得。ビックデータやAI(人工知能)を使った運用モデルの開発から、身の回りの意外なデータを使った経済や株価予測まで、幅広く計量手法を駆使した分析や予測を行う。

投資工学開発室
髙野 幸太

ニッセイアセット入社後、ファンドのリスク管理、マクロリサーチ及びアセットアロケーション業務に従事。17年4月より投資工学開発室において、主に計量的手法やAIを応用した新たな投資戦略の開発を担当する。

  • 2003年は初頭から世界的に株価は調整。
  • 2003年は5月以降、日本株は年末にかけて上昇トレンド入り。

新型肺炎拡大による世界景気の後退懸念から株価が軟調です。目先の株式市場では今後の行方を見極める姿勢が強まる可能性があります。こういった場面では、過去に似たことが起こった局面を振り返ることが、将来を予測するうえで、役立つかもしれません。そこで同じくコロナウイルスによるSARS(重症急性呼吸器症候群)が拡大した2003年の当時の相場を振り返ってみましょう。2002年11月に中国広東省で非定型性肺炎が発生したとの報告がありましたが、実際に世界的にSARSの認知が広がったのは、2003年2月にベトナムやカナダでの発症が確認されてからでした。それまでは、中国で新インフルエンザが流行しているといったニュースや、マイコプラズマ肺炎説など様々な情報が錯綜し、真相が見え難くなっていました。

今回のコロナウイルスによる新型肺炎に関しては、当時と状況が異なっています。現状での専門家の見方は明確ではないですが、SARSなどに比べて感染力は低いとされており、当時とは衛生状況やリスクへの対応も改善しています。その一方で、人の移動が活発となり、感染が国を超えて拡大するリスクも指摘されています。このように環境が異なっていることは認識したうえで、当時の相場を参考に振り返ってみましょう。図は2002年10月末を基準に日本と米国、中国株の推移を見ています。

図:2000年終盤から2003年の日本、米国と中国株の動向

  • 注)データは月次サイクル
  • 出所:Bloombergのデータを基に、ニッセイアセットマネジメントが作成

当時の傾向を見ると、日本株は中国株と同様に2003年4月までは調整傾向が見られました。米国は2003年初は弱含みましたが、少し早く3月から反発を見せています。SARSにより中国経済への影響は少なからず見られたとの報告もあり、2003年以降の株価の下落要因の1つとなったようです。ただ、当時の経済環境は、米国では2001年9月の同時多発テロ等からの景気後退から抜け出す場面であったこと、日本では金融機関の不良債権処理問題の解決に向けた最終場面であったことなど、2003年初は世界的に厳しい経済環境であったことは考慮しておく必要があるかもしれません。とはいえ、2003年5月以降に世界的に株高傾向が強まったことは、今回も今後の相場を考える上で注目したいものです。

また、2003年からの東証33業種別指数の騰落率も見てみました。当時の業種別物色の傾向も今後の相場を見るうえで参考になるかもしれません。1月から3月までの3ヵ月間の騰落率と、6月までの6ヵ月間の騰落率を見ています。SARSの影響が見られたとはいえ、根強い中国経済の発展期待による荷動き需要見込みから海運業のパフォーマンスが良好でした。また、中国での自動車生産需要で高品質の日本企業の鉄鋼需要が高まり鉄鋼業種のパフォーマンスも良好でした。年初から6ヵ月間でみると、年末に向けた相場の回復期待もあり証券・商品先物取引業のパフォーマンスが良好でした。SARSとの関係は明確に見られない業種物色となっていますが、当時の物色を念のため頭に入れておくとよいでしょう。

表:2003年の年初からの業種別騰落率

  • 注)東証33業種別株価指数を用いた。また騰落率の上位3業種の数値には太字とした。
  • 出所:東京証券取引所のデータを基に、ニッセイアセットマネジメントが作成
  2003年初から3ヵ月 2003年初から6ヵ月
騰落率 順位 騰落率 順位
1 水産・農林業 1.7% 9 9.1% 14
2 鉱業 -4.0% 17 6.5% 20
3 建設業 2.9% 6 20.7% 5
4 食料品 3.5% 5 6.5% 21
5 繊維製品 3.7% 4 20.1% 6
6 パルプ・紙 -7.9% 24 -0.4% 29
7 化学 -3.2% 16 7.5% 18
8 医薬品 -6.5% 22 -4.1% 32
9 石油・石炭製品 -2.4% 14 7.1% 19
10 ゴム製品 -2.4% 13 14.1% 13
11 ガラス・土石製品 -0.1% 11 19.8% 7
12 鉄鋼 6.6% 3 34.6% 2
13 非鉄金属 -4.7% 20 23.9% 4
14 金属製品 -10.9% 29 6.3% 22
15 機械 0.7% 10 18.1% 9
16 電気機器 -6.9% 23 8.9% 15
17 輸送用機器 -10.5% 27 8.3% 16
18 精密機器 -2.6% 15 18.8% 8
19 その他製品 -8.8% 26 -3.1% 30
20 電気・ガス業 2.3% 8 4.4% 25
21 陸運業 -4.7% 19 3.5% 26
22 海運業 12.0% 1 34.7% 1
23 空運業 -4.4% 18 5.6% 23
24 倉庫・運輸関連業 7.0% 2 16.9% 12
25 情報・通信業 -2.2% 12 17.9% 10
26 卸売業 2.6% 7 17.8% 11
27 小売業 -8.4% 25 -4.4% 33
28 銀行業 -13.7% 32 1.2% 27
29 証券、商品先物取引業 -5.5% 21 26.4% 3
30 保険業 -10.8% 28 5.0% 24
31 その他金融業 -13.1% 31 7.6% 17
32 不動産業 -12.5% 30 0.3% 28
33 サービス業 -15.8% 33 -3.8% 31

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