吉野貴晶の『景気や株価の意外な法則』

No.12
「ミクロ・サプライズ指数」から相場を読む

2019年10月02日号

投資工学開発室
吉野 貴晶

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で16年連続で1位を獲得。ビックデータやAI(人工知能)を使った運用モデルの開発から、身の回りの意外なデータを使った経済や株価予測まで、幅広く計量手法を駆使した分析や予測を行う。

投資工学開発室
髙野 幸太

ニッセイアセット入社後、ファンドのリスク管理、マクロリサーチ及びアセットアロケーション業務に従事。17年4月より投資工学開発室において、主に計量的手法やAIを応用した新たな投資戦略の開発を担当する。

  • 事前のアナリスト予想と、実際の決算発表で着地した営業利益を比較。
  • ミクロ・サプライズ指数は足元は中立まで回復。
  • 第2四半期決算発表では、ミクロ・サプライズ指数の回復に連動した堅調な相場が期待される。

年度上半期が終わり、3月期決算企業の第2四半期決算発表が注目を集める場面です。前回の第1四半期決算発表(7月中旬から8月中旬)は、特に外需企業などを中心にネガティブな決算発表をする企業も少なくありませんでした。世界的な景気減速や米中貿易問題などの影響もあり、特にセルサイドアナリストが予想する四半期決算の数字を大きく下回る営業利益を発表する企業が見られ、株価が大きく下げる場面も見られました。さて、10月中旬から始まる第2四半期決算発表はどうなるでしょうか。

そこでミクロ・サプライズ指数を使って足元までの傾向を見て見ましょう。同指数は、東証1部企業のなかで、セルサイドアナリストが3人以上フォローしている銘柄を対象に、次の様な分析を行います。四半期決算発表の時に、会社が発表した実績の営業利益が事前のアナリストの予想より大きく上回って着地した銘柄数から、大きく下回って着地した銘柄数を引いて、それを実際の分析対象銘柄数で割って求めます。ここで事前のアナリスト予想より大きく上回ったというのは、アナリスト予想の平均+標準偏差を基準としています。これを上回って実績の営業利益が着地した銘柄が何銘柄かをカウントします。同様に、アナリスト予想の平均ー標準偏差を下回って営業利益が着地した銘柄数をカウントし、そこから引いています。これを過去120歴日(約4カ月)で集計したものをミクロ・サプライズ指数と呼ぶことにします。グラフが0%より上方にあることは、実際の決算発表で営業利益が、事前のアナリスト予想より大幅に上方で着地した銘柄が多かったことを表します。

図:ミクロサプライズ指数とTOPIX

  • 分析期間:2013年9月27年から2019年9月26日(6年間)
  • 出所:IFISと東証のデータを基に、ニッセイアセットマネジメントが作成

このミクロ・サプライズ指数ですが、TOPIXの推移と並べて見ると、その山と谷が概ね連動していることが分かります。事前のアナリスト予想に比べて、決算で公表された利益が“悪かった銘柄”が多い時には、相場が下げて、逆に“良かった銘柄”が多い時には、相場が上場する傾向となっています。

さて足元はどうでしょう。9月26日には-1.1%とほぼ“0%”の水準近くまで戻してきました。市場で織り込まれているアナリスト予想と比べると、ネガティブサプライズの決算発表銘柄が多かった傾向が改善されています。今回の第2四半期決算発表では、この回復トレンドの持続と相場の一段の回復が期待されます。

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