吉野貴晶の『景気や株価の意外な法則』

No.10
「節分天井、彼岸底」は本当か?

2019年02月07日号

投資工学開発室
吉野 貴晶

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で16年連続で1位を獲得。ビックデータやAI(人工知能)を使った運用モデルの開発から、身の回りの意外なデータを使った経済や株価予測まで、幅広く計量手法を駆使した分析や予測を行う。

投資工学開発室
髙野 幸太

ニッセイアセット入社後、ファンドのリスク管理、マクロリサーチ及びアセットアロケーション業務に従事。17年4月より投資工学開発室において、主に計量的手法やAIを応用した新たな投資戦略の開発を担当する。

  • 元々、米相場に由来するアノマリー。
  • 節分天井、彼岸底は過去20年では傾向が見られなかった。
  • 1月に上昇した方が、節分からお彼岸までの株価は平均的に上昇した。

昔から、株式市場で良く知られたアノマリーに「節分天井、彼岸底」があります。節分で株価が天井を付けて、その後は調整場面となり、お彼岸で底を付けるというものです。2月3日が今年の節分でしたが、節分を過ぎて、今後の株価がどのように推移するのでしょうか?そこで、実際に過去の日経平均株価を使って、節分天井、彼岸底を検証してみました。ところで、お彼岸といえば、3月の春分の日前後です。しかし、もともと、このアノマリーは米相場が由来です。そして彼岸は秋のお彼岸を指していたといわれます。9月が稲刈りの最盛期です。ちょうど、収穫の時にお米の供給が増えるため、お彼岸のころに安値を付けるということです。であれば、高値は、ちょうど収穫前をイメージされる読者も少なくないでしょう。実際には2月初旬の最も寒く、お米以外も含めて食料の確保が難しい節分の時期が高値になるということです。このように考えると、確かに米相場の需給と関係するアノマリーが株式市場にも当てはまるというのは、ちょっと不思議です。株式市場では、次のように解釈されています。新春相場で1月は期待先行で株高となりやすく、2月に入り、こうした期待が一服した時点で天井をつけて、3月のお彼岸まで調整が進む。そして、そのあたりで調整が一巡するというものです。そこで実際に過去20年間(1999年-2018年)の日経平均株価を使って調べました。古くからの検証をしなかったのは、以下の理由からです。近年、市場を取り巻く環境も大きく変わっているため、昔ながらのアノマリーにも変化が見られています。ですから、比較的足元にかけての傾向をとらえるために、あえて期間を絞りました。節分からお彼岸までの騰落率の平均をとった結果は表1です。

20年間のうちで上昇した年の割合を見る勝率は50%(上昇は2年に1回)とそれほど良いとはいえませんが、騰落率の平均はプラスとなりました。節分天井、彼岸底とはいえない状況です。

ところで、先ほど1月に期待で上昇したことの修正のスタートが節分天井といわれると、お話ししました。2019年の1月の日経平均株価は3.7%上昇しました。それでは、こうした1月に上昇した後の場合はどうなるでしょうか?表2では、1月に上昇した場合と、下落した場合を分けて節分からお彼岸の日経平均株価騰落率を集計して見ました。その結果、1月に上昇した方が、平均騰落率もプラスに大きいことが分かりました。どうやら足元までの20年間の傾向では、節分から彼岸までは、比較的パフォーマンスが底堅い傾向が見られたようです。さて、今年はどうなるのでしょうか。

表1:節分からお彼岸までの日経平均株価の平均騰落率

出所:日本経済新聞社のデータを基に、ニッセイアセットマネジメントが作成。
騰落率(平均) 勝率
2.01% 50%

表2:1月が上昇した年のほうが、平均騰落率が高い

出所:日本経済新聞社のデータを基に、ニッセイアセットマネジメントが作成。
1月上昇後 1月下落後
2.51% 1.40%

注1:節分の日が休日の場合には、前立会日。 注2:お彼岸は3月の春分の日とした。同日は休日のため、遡った前立会日を用いた。 注3:分析期間:1999年から2018年。

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