吉野貴晶の『景気や株価の意外な法則』

No.9
前回の改元の時の業種別騰落率について

2019年01月29日号

投資工学開発室
吉野 貴晶

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で16年連続で1位を獲得。ビックデータやAI(人工知能)を使った運用モデルの開発から、身の回りの意外なデータを使った経済や株価予測まで、幅広く計量手法を駆使した分析や予測を行う。

投資工学開発室
髙野 幸太

ニッセイアセット入社後、ファンドのリスク管理、マクロリサーチ及びアセットアロケーション業務に従事。17年4月より投資工学開発室において、主に計量的手法やAIを応用した新たな投資戦略の開発を担当する。

  • 大発会の下落は年間を通した相場とは強い相関は見られなかった。
  • 前回の改元と業種別騰落率を念のため確認すると、明確な傾向は見られなかった。

平成最後の大発会の日経平均株価は大幅続落し、昨年末と比べて452円安となりました。大発会での下落は2016年以来3年ぶりでした。幸先悪いスタートと感じる方も少なくないでしょう。ただ、その前回の大発会安だった2016年も年間を通じるとなんとか日経平均はプラスとなりました。それに、過去、1971年から昨年までで、大発会が下落した17年間を調べると、年間で12回、つまり7割が上昇しました。同じ期間で大発会が上昇した年のうち日経平均が上昇したのは6割程度ですから、これを上回っています。ですから大発会安をそれほど意識する必要はないでしょう。

ところで、今年、世の中で最も注目のビックイベントの1つが“改元”です。新元号を定める政令は皇太子さまが即位される5月1日に施行される予定で、5月1日午前0時に元号が改められます。そして、どのような元号になるかは、1カ月前の4月1日に公表される方針です。また、新天皇即位に伴い、2019年のゴールデンウィークは4月27日から5月6日まで10連休となることも決まりました。新天皇即位、新元号、そして超大型連休と3つのビックイベントが予定されているわけです。株式市場でも、これらのテーマに大きな期待が寄せられています。

既に、投資家の間では、元号が変わることから、印刷業やシステム対応需要の情報通信、そしてイベント需要の恩恵の業種や、旅行業界などが注目されてきました。そこで前回の“平成”への改元の際にどのような業種が上昇したのかを見てみることにしました。平成がスタートしたのは1989年の1月8日です。下記の表は、1989年の1月の月間の東証33業種別指数の騰落率と、1月-3月の騰落率を示しています。

今回の改元は生前退位なので前回とは異なりますし、今から30年も昔のことです。市場を取り巻く環境も大きく違っています。とはいえ、単純に前回は、どのような業種が上昇したかも、念のためチェックしておいても良いでしょう。

1989年1月に最も上昇した業種は鉱業でした。続いて、機械、ゴム製品となっています。このように見ると、前回の改元と業種株価の騰落の間に、どのような関連があったかが見え難い印象です。1月から3月までの3カ月間で見ても、鉱業と機械は持続的に上昇が見られたようです。

単純に前回の改元の時の業種別の騰落率からは、明確な傾向は見られなかったようです。ですので、当時の結果は単純な参考情報として留めておくので十分でしょう。何れにしても実際にデータを使って確認しておくことは、重要なことになります。

表:平成への改元の時期の業種別騰落率

注1)東証33業種別株価指数を用いた。 注2)騰落率の上位5業種の数値には太字とした。 出所:東京証券取引所のデータを基に、ニッセイアセットマネジメントが作成
  1989年1月 1989年1月から3月
騰落率 順位 騰落率 順位
1 水産・農林業 10.3% 4 13.3% 11
2 鉱業 18.8% 1 23.4% 3
3 建設業 6.7% 13 40.9% 1
4 食料品 5.6% 19 0.3% 24
5 繊維製品 8.6% 8 16.2% 7
6 パルプ・紙 -3.9% 33 6.5% 18
7 化学 6.2% 14 19.9% 4
8 医薬品 2.1% 27 -2.7% 29
9 石油・石炭製品 7.5% 11 3.2% 19
10 ゴム製品 10.8% 3 9.6% 14
11 ガラス・土石製品 2.9% 26 14.2% 9
12 鉄鋼 4.0% 24 14.6% 8
13 非鉄金属 8.9% 7 19.7% 5
14 金属製品 6.0% 16 8.0% 16
15 機械 12.0% 2 23.9% 2
16 電気機器 3.4% 25 2.1% 20
17 輸送用機器 8.4% 9 10.5% 13
18 精密機器 5.7% 18 8.8% 15
19 その他製品 0.0% 31 -4.9% 31
20 電気・ガス業 6.2% 15 -10.2% 32
21 陸運業 7.6% 10 13.1% 12
22 海運業 5.4% 20 18.4% 6
23 空運業 9.0% 5 0.1% 25
24 倉庫・運輸関連業 5.2% 21 6.6% 17
25 情報・通信業 -1.3% 32 -13.2% 33
26 卸売業 9.0% 6 14.0% 10
27 小売業 7.3% 12 1.2% 22
28 銀行業 1.8% 28 -1.5% 27
29 証券、商品先物取引業 4.8% 22 -3.0% 30
30 保険業 1.2% 30 -2.1% 28
31 その他金融業 4.2% 23 0.8% 23
32 不動産業 1.3% 29 1.5% 21
33 サービス業 5.9% 17 -0.2% 26

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