吉野貴晶の『景気や株価の意外な法則』

No.4
インナーウエア(下着)

2018年01月25日号

投資工学開発室
吉野 貴晶

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で16年連続で1位を獲得。ビックデータやAI(人工知能)を使った運用モデルの開発から、身の回りの意外なデータを使った経済や株価予測まで、幅広く計量手法を駆使した分析や予測を行う。

投資工学開発室
髙野 幸太

ニッセイアセット入社後、ファンドのリスク管理、マクロリサーチ及びアセットアロケーション業務に従事。17年4月より投資工学開発室において、主に計量的手法やAIを応用した新たな投資戦略の開発を担当する。

男性用インナーウエアが売れると株価は上がる!?

  • 男性用インナーウエアの市場規模は日経平均と連動。
  • インナーウエア市場に関して、男性用市場規模÷女性用市場規模は、日経平均に先行した動きが見られる。

今回、皆さんにご紹介する、景気や株価の意外な法則は、『インナーウエアと株価の関係』です。寒さが最も厳しくなる大寒(1月20日)を越えても、まだ寒い日が続きます。気象庁の各種データ・資料のウエブサイトでは、1981年以降の日ごとの気温の平均値を見ることができます。東京は2月の初めまで、平均して最低気温が1度を下回る寒い日が続くようです。ところで寒い時期には「防寒下着は外せない」という方も少なくはないのでしょうか?近年は各メーカーから、様々な防寒下着が出されており、どの下着が良いかなど、こだわりを持つ人もいるようです。

下着は、冬は防寒、夏は冷感とこだわる人もいますし、肌触りなどの面で高級品を好む人もいます。しかし、周りの目に触れるものではありません。「見えないものだし、高いものでなくて十分」と考える人も少なくないでしょう。そして、こうした感覚は人々の所得や景気とも密接に関係しています。景気が悪く所得も減るのであれば、人の目に触れるものではない、下着にかけるお金は削られ易くなるでしょう。そこで、実際に男性用下着の市場規模と日経平均の動きを重ねて見ましょう。株価は現在の景気だけでなく、先行きに対する市場の見通しも反映されるため、下着にお金をかけようと考える人々の意識との連動性も、より高く見られるかもしれません。市場調査で知られる矢野経済研究所は毎年、インナーウェア市場に関する調査結果を公表しています。直近は2017年10月に発表された、2016年の結果です。

グラフ1で見ると、メンズインナーウェア市場規模と日経平均は、ある程度、連動している傾向が見られます。

グラフ1:メンズインナーウェアと日経平均

※日経平均は年末値。インナーウェアの市場規模は暦年。 出所:矢野経済研究所「インナーウェア・レッグウェア小売市場に関する調査を実施(2017年)」(2017年10月6日発表)と、日本経済新聞社のデータを基に、ニッセイアセットマネジメントが作成。

グラフ2:メンズインナーウェア÷レディスインナーウェアと日経平均

※日経平均は年末値。インナーウェアの市場規模は暦年。 出所:矢野経済研究所「インナーウェア・レッグウェア小売市場に関する調査を実施(2017年)」(2017年10月6日発表)と、日本経済新聞社のデータを基に、ニッセイアセットマネジメントが作成。

ところで意外な結果も見つけました。グラフ1では男性用下着市場と株価の関係を見ましたが、女性用下着市場のケースはどうでしょう?実は、関係性が低く、むしろお互いの相関係数は若干ですがマイナス(-0.015)となりました。つまり女性用下着の売り上げは、株価や景気が低迷しても底堅い関係があったのです。

今一度、関係を整理しましょう。男性用下着の売り上げが増える時は株価が上昇します。一方、女性用下着の売り上げは株価や景気が低迷しても底堅いということです。何故、このような関係になるのでしょうか?景気が良く、人々の所得が良くなれば、男性も下着にまでこだわる余裕がでるのかもしれません。それに対して、女性の場合は、金銭面の余裕と関連性が低いのかもしれません。

そこで、景気や株価に対して敏感な男性用下着の市場規模を、女性用下着の市場規模で除した指数を作ってみました。このように指数化することで、男性用下着の市場規模の敏感な動きが、より顕著に反映されます。そして敏感に動くことからも、株価に対して先行した関係も見られるようです。

グラフ2では、メンズ÷レディースの指数を株価に対して2年間先行させてグラフを作りました。この指数が上昇するトレンド(グラフ中の矢印)の時には、株価も連動しています(指数を先行させているため、実際には株価がその後に遅れて連動しています)。

足元ではメンズ÷レディースの指数は高い水準になっております。引き続き、将来も株高を期待したいところです。

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