金融市場NOW

木材の利用で持続可能な森林サイクルへ

2022年08月23日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

企業価値の向上を目的に森林や林業との関わりを増やす企業が増加

  • 森林資源の循環を促すことは、CO₂排出削減や地球温暖化防止につながるとの見方がある。利用期を迎えた人工林を活用するなど、木材の利用はSDGsの観点からも企業を中心に注目を集めている。
  • 企業による森林や林業との関わりが増加することで、木材の循環を後押ししていくことが期待される。

近年、多数の人工林が利用期を迎えている

日本は、国土のおよそ3分の2を森林が占める、世界でも有数の森林国です。森林蓄積は年々増加しています(グラフ1)。戦後に植林された人工林(育成林)が育ち、現在、約半数が利用期を迎えています(グラフ2)。

『伐る→使う→植える→育てる』という森林サイクルを保つには国産材の利用が必要であるものの、木材輸入の自由化で相対的に安価な外国材の需要が高まったこともあり、国産材の利用が進んでいないというのが現状です。
政府は、このような事態を踏まえ、2025年までに国産材の利用を50%にすることを目標に掲げ、自治体や企業に国産材の活用を促しています。

グラフ1:国内の森林資源は年々増加している

  • ※森林蓄積(森林を構成する樹木の幹の体積で、森林資源量の目安となる)の推移
  • 出所:農林水産省 林野庁の資料、データをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:人工林のおよそ半数が利用期を迎えている

  • ※人工林の齢級別面積(2017年3月末時点)
  • *齢級は林齢を5年ごとに区切った単位。苗木を植栽した年を1年生とし、1~5年生を1齢級とする。
  • 出所:農林水産省 林野庁の資料、データをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

森林との関わりにより企業価値の向上へ

グラフ3:企業はさまざまな目的で森林に関わっている

  • ※企業が森林に関わる活動を実施する主な目的
  • 調査期間:2019年11月~2020年1月
  • 調査方法:林野庁によるweb調査
  • 回答企業:国内企業392社(複数回答可)
  • *スペースの関係上、一部表記を割愛しています。
  • 出所:農林水産省 林野庁の資料、データをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

木は樹体に二酸化炭素(CO₂)を吸収した後、酸素(O₂)を放出します。また、伐採後に木材として建築物などに利用された場合、CO₂を吸収し長期間にわたり貯蔵します。

国産材を有効活用し森林資源の循環を促すことは、CO₂排出削減や地球温暖化の防止、また国土の保全につながるとの見方があり、国産材の活用はSDGs(持続可能な開発目標)の観点から、企業を中心に注目を集めているようです。

2021年10月に施行された『都市(まち)の木造化推進法』により、木材活用の促進の対象が公共建築物から一般建築物へと拡大され、倉庫や店舗、柱や梁に木材を利用したホテルや商業施設など、これまであまり利用されることのなかった中高層建築物の木造化が進んでいます。

企業は社会貢献や地域交流、環境保全などさまざまな目的で、森林に関わっているようです(グラフ3)。投資家から企業の環境問題への取り組みや社会貢献が求められるようになった今、企業は企業価値の向上を目的に、森林や林業との関わりを増やしていくことが予想され、木材の循環を後押しすることも期待されます。

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