金融市場NOW

スマート農業 世界の食糧難を救う

2021年02月01日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

農地劣化などで農地面積が伸び悩み、効率的な生産が求められる

  • 今後増加が見込まれる食糧需要に見合う食糧の増産には、農業人口の減少や収穫面積の縮小といった課題があげられている。
  • スマート農業を利用した効率的な生産が、世界の食糧難を救う一助となることが期待される。

人口の増加で食料の確保が世界的な課題に

世界の人口は、新興国を中心に今後大幅な増加が見込まれています。国連は、世界の人口は、現在の77億人から2050年には97億人に達すると予想しています(グラフ1)。国連食糧農業機関(FAO)は、この人口増加に伴う食糧需要の増加に応えるには、2050年までに世界の食糧生産を2010年時点の1.7倍に増加する必要があるとしています(グラフ2)。しかし農業人口の減少や農地面積の縮小などから、このままでは将来の需要に対応できるほど生産量を増加することは困難であるとしています。

グラフ1:2050年に世界の人口はおよそ97億人へ

  • ※世界人口の予測推移
  • 出所:国連のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:世界の食糧生産の増加が求められている

  • ※世界の食糧生産量(作物・畜産物、同加工品の合計)の推移
  • *1990~2018年は実績値、2050年は、FAOの見通しと2010年の実績値をもとにニッセイアセットマネジメントが算出
  • 出所:FAOのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

農地の劣化が進行、FAOは警鐘を鳴らす

グラフ3:農地の劣化等で農地面積は横ばい推移

  • ※農地面積は1961年を100として指数化
  • ※世界の穀物農地面積と人口1人当り農地面積の推移
  • 出所:FAOのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

世界の穀物の農地面積は約50年間ほぼ横ばいで、人口1人当りの農地面積は減少をたどっています(グラフ3)。また、温暖化などの気候変動や、増産のための行き過ぎた化学肥料の投入などにより、主要穀物を育ててきた農地の一部は劣化が進行しています。FAOは、世界の農地面積のうちすでに約33%が劣化しており、2050年までに90%以上が劣化する可能性があると警鐘を鳴らしています。

  • 土壌の肥沃度が低下して農作物の生産性が悪化すること。

スマート農業の普及が食糧難を救う一助に

収穫面積が伸び悩む中、農業は高い生産性が求められており、バイデン米新政権も『生産性向上のための農業技術の開発』を公約として掲げています。近年、欧米を中心に気温や日射量の予測や収穫時期予測、給水などにICT(情報通信技術)を利用したスマート農業の開発・導入が進んでいます。例えば、国土が狭く、1年を通じ冷涼な気候であるオランダですが、スマート農業を駆使した生産性の向上により、農産物輸出量は世界第2位(2019年時点)となっています。スマート農業は、初期投資が高額であることや利用できる作物が限られるなどの課題がありますが、世界の食糧難を救う一助となることも期待され、環境保護の観点と合わせ、注目されるテーマの一つとなっています。

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