金融市場NOW

足元で低迷が続く原油価格

2020年04月17日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

OPECプラスで協調減産が合意されたものの、供給過剰懸念は解消されず

  • 3月上旬まで安定的に推移していた原油価格はOPECプラスの協調減産交渉決裂を受けて急落。新型コロナウイルス感染拡大を原因とした需要減少も価格下落要因に。
  • 4月にOPECプラスは再度協調減産に合意したものの、規模は不十分との見方。
  • 秋に大統領選を控える米国の対応に注目が集まる。

OPECプラスによる協調減産が終了

2020年3月上旬まではOPEC(石油輸出国機構)プラス(OPEC加盟国+ロシア等のOPEC非加盟原油生産国)が実施していた協調減産が功を奏し、WTI原油先物価格は50ドル近辺を底値として安定的に推移していました、しかし、3月6日に行われたOPECプラスの会合で、減産延長が合意されなかったことを受けて、原油価格は30ドル台前半まで一気に下落しました。交渉決裂後にサウジアラビアが約3割の増産(日量970万バレルから1,230万バレルへ)を公表したことを受けた需給悪化懸念も価格下落の一因となったようです。

新型コロナウイルスの影響でさらに価格下落

足元の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、各国が移動禁止等の措置を講じた結果、航空機燃料需要が減少するとの思惑から原油価格はさらに下落し、一時20ドルを割り込みました。これは2002年2月以来、およそ18年ぶりとなります。

OPECプラスは協調減産に再合意したが…

グラフ1:WTI原油先物価格の推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

足元の原油価格急落を受けて、4月9日にOPECプラスは会合を開催し、原油の大幅減産に向けた交渉を進めた結果、5~6月は日量970万バレル、7~12月は同760万バレル、2021年~22年4月までは同560万バレルの減産を4月12日に決定しました。世界最大の原油産出国である米国が今回の協調減産に参加するかに注目が集まっていましたが、米国は自発的減産を行わず、価格下落等の影響による自然減産のみによる関与という結果となりました。協調減産の決定を受けて、原油先物には買い戻しが入ったものの、新型コロナウイルスの影響等で減少した需要に見合うだけの減産量になっていないとして、買い戻し一巡後は下落しています【グラフ1】。足元では、世界的な原油需要は日量約2,000万バレル程度減少しているとの見方もあるようです。

注目が集まる米国の対応

グラフ2:MLP価格指数の推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

2020年秋の大統領選で再選を目指すトランプ大統領は、ガソリン価格を低位で安定させるために、原油価格の低下を望んでいました。しかし、足元の原油価格の急落により破綻する企業が発生するなど、米国エネルギー業界に悪影響が及び始めています。特に格付けが低いMLP等にとっては影響が大きくなりつつあるようです【グラフ2】。反トラスト法(日本の独占禁止法にあたる)により減産指示を行うことはできない米国ですが、OPECプラスの減産にもかかわらず原油価格が戻らない場合は、何らかの対応を迫られる可能性が高いものと思われます。

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