金融市場NOW

最近の原油価格動向

2019年07月02日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

米国とイランの対立が今後原油価格を大きく左右する可能性も

  • 原油価格は4月に2019年の高値を記録したものの、米中貿易摩擦再燃による世界景気減速懸念等を受けて反落。
  • OPECプラスが7月の総会で協調減産継続を決定する見込みとなり、原油価格は下げ止まる。
  • 米国とイランの対立には注意が必要。

4月、5月の原油価格は乱高下

WTI原油先物価格は、4月下旬に2019年の高値を記録しました(グラフ1)。イラン産原油禁輸の適用除外措置の打ち切りが決定されたことやベネズエラの政情不安等を受けて、供給が不足するとの懸念が生じたことが原因と思われます。5月に入ると米中貿易摩擦問題の再燃による世界経済減速懸念等を背景に、EIA(米エネルギー情報局)は需要見通しを引き下げています(グラフ2)。そのため市場では供給が過剰となるとの見方が台頭し、4月の高値から一転1月の水準である50ドル/バレル近辺まで反落するなど、値動きの荒い展開となりました。

グラフ1:WTI原油先物価格

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:EIAによる原油需要の見通し

  • 出所:EIAのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

6月に原油価格はいったん下げ止まる

OPEC(石油輸出国機構)プラス(OPEC加盟国+ロシア等のOPEC非加盟原油生産国)は原油価格を安定させるために協調減産を実施しており、その期限が6月末となっていました。しかし、対象国間の意見の相違等の理由からOPEC総会の開催時期が延期されており、市場には不透明感が漂っていました。6月19日にOPECより7月1日~2日にかけて総会が開催されることが公表され、市場では協調減産が継続されるとの見方が優勢となり、WTI原油先物価格は反発しました。

原油価格の安定はトランプ大統領には望ましい

原油価格は4月~6月にかけて大きく動きましたが、7月のOPEC総会で減産延長が決まれば、不確定要素の1つが解消されたとして、原油価格は安定した推移になるものと思われます。一般的に原油価格の上昇はガソリン価格の上昇を通じて、消費者の消費行動に影響し、景気拡大を妨げる要因になるものとみられています。また、原油価格の下落は、エネルギー関連企業の業績悪化を通じて、株価下落につながる可能性が高いものと思われます。2020年の大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領にとって、米景気が堅調であることは自身の成果をアピールするポイントになると思われるため、原油価格が安定することは、望ましいものであるとみられてます。

米国とイランの対立には要注意

6月13日に原油輸送の要衝であるホルムズ海峡で石油タンカーが攻撃を受けたこと、6月20日にイランが米国の無人偵察機を撃墜したこと等を原因として米国とイランの対立が深刻化しています。米国は「タンカー攻撃はイランの仕業」と非難し、6月24日にはイランの最高指導者のハメネイ師を含む複数の政府高官の金融資産を凍結しました。一方で、イランはタンカー攻撃への関与を否定するとともに、米国の制裁を非難しています。米国とイランの対立については、原油価格に影響を与える可能性が高い事象として、注意が必要と思われます。

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