金融市場NOW

イラン制裁の適用除外は撤廃

2019年04月24日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

トランプ政権はイラン制裁の適用除外を認めず

  • トランプ政権は2018年11月に発動したイランへの制裁の中で認められた日本を含む8カ国・地域の原油取引に関する180日間の適用除外を撤廃することを公表。
  • その結果、WTI原油先物は65ドル超の水準まで上昇。トランプ政権はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)といった同盟国と協力して原油供給の安定(原油の増産)に取り組むことを併せて公表。

アメリカはイラン制裁の適用除外の撤廃を決定

グラフ1:原油価格動向

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

2019年4月22日、トランプ政権は2018年11月に発動したイラン産原油禁輸措置の適用除外を撤廃する方針を公表しました。トランプ大統領が原油価格が高すぎると発言していたこと、日本をはじめとして各国がイラン産原油禁輸措置の適用除外延長を希望していたことなどから、市場ではトランプ政権がイラン産原油を市場から完全に排除する可能性は低いとの見方が優勢でした。しかし、市場の想定とは逆に適用除外が撤廃されることとなったため、原油供給量が減少するとの思惑から、公表後WTI原油先物は2018年10月以来となる65ドルを超える水準まで高騰しました。(グラフ1)

グラフ2:イランの原油生産量及び輸出量

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

トランプ政権が発動した経済制裁後、イラン産原油は生産量・輸出量共に減少しています。(グラフ2)2019年3月現在のイラン産原油の輸出量は日量130万バレルとなっていますが、これは現在実施中のOPEC(石油輸出国機構)プラス(OPEC加盟国+ロシア等のOPEC非加盟原油生産国)の協調減産量の日量120万バレルを上回ります。イラン産原油の供給がなくなることで不足する原油を安定的に供給するために、トランプ大統領はサウジアラビアやUAE等と協力して、原油の増産に努めることを公表しています。サウジアラビアが増産に応じた場合には、2019年6月に期限を迎えるOPECプラスの協調減産の延長協議に影響を及ぼす可能性がありそうです。

グラフ3:米国の個人消費支出に占めるガソリン代の割合(2017年)

  • ※ガソリン代等2.4%(非耐久財の11.3%)
  • 出所:米国商務省のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

一般的に原油価格の上昇はガソリン価格の上昇を通じて、消費者の消費行動に影響し(グラフ3)、米国景気拡大を妨げる要因になるものとみられており、2020年に大統領選挙を控えるトランプ大統領は原油価格高騰を望んでいないものと思われていましたが、禁輸措置の適用除外の撤廃に踏み切りました。今回の決定に対して中国やトルコが反発していること、イランからはホルムズ海峡(イランとアラビア半島の間にあるペルシア湾岸諸国の石油輸送路として重要な海峡)閉鎖を匂わす発言があったことは、今後の原油相場の波乱要因となりそうです。

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