金融市場NOW

減速感を強めつつある欧州経済

2019年01月21日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

ECBの利上げ開始判断に影響を与える可能性も

  • 2018年7~9月期のドイツ及びイタリアの経済成長率は前期比でマイナスに陥る。ユーロ圏企業の購買担当者の景気見通しも悪化傾向を続ける。中国の景気鈍化等が影響か。
  • 景気減速傾向が強まる中、ECB(欧州中央銀行)の利上げ開始時期が後ずれするとの観測が強まりつつある。ドイツやフランスの10年国債金利は2018年10月初旬頃を境に低下傾向となっている。

ドイツやイタリアがマイナス成長に

グラフ1:イタリアとドイツの実質GDP成長率

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

EU(欧州連合)最大の経済規模を誇るドイツや4番目のイタリアの経済が減速傾向を強めています。2018年7~9月期の実質GDP(国内総生産)(前期比)はドイツが14四半期ぶりに、イタリアが17四半期ぶりにマイナス成長に陥りました(グラフ1)。EU加盟28カ国を合わせたGDPに占める比率は、2017年時点でドイツが約2割、イタリアが約1割、合計で約3割に上ります。両国の経済成長の鈍化は欧州経済に悪影響を及ぼすおそれがあります。

ユーロ圏企業購買担当者の景気見通し悪化

グラフ2:ユーロ圏製造業・サービス業PMI

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

ユーロ圏(EUのうち単一通貨ユーロを使用する国々)(2018年12月末時点で19ヵ国)企業の購買担当者の景気見通しを示すPMI(購買担当者景気指数)も低下傾向を強めています。2018年12月時点のPMIは製造業、サービス業とも前月から低下しており、特にサービス業の低下幅は大きく更に悪化が続きそうな勢いです(グラフ2)。

米中貿易摩擦による中国景気の減速が影響か

PMIの悪化等には、2017年時点でEU貿易額(輸出と輸入の合計、ユーロベース)の約15%を占める中国経済が米中貿易摩擦により減速傾向を強めていることや、英国のEU離脱を巡る混乱等が影響しているものと思われます。

ECBの利上げ開始が後ずれする可能性も

グラフ3:ドイツとフランスの10年国債金利

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

ECBは国債や社債等を対象とした資産の買入れを2018年末に終了しましたが、利上げについては今年夏までは実施しない方針を示しています。その利上げについてですが、ドイツの景気減速等を背景に開始時期が後ずれするとの見方が勢いを増し始めているようです。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、景気減速懸念や物価の落ち着き等を背景に、利上げの早期停止姿勢を示したことも、後ずれ観測を勢いづかせているものと思われます。ドイツとフランスの10年国債金利は2018年10月初旬頃をピークに低下傾向となっています(グラフ3)。景気減速を示す指標が更に増加する可能性もあり、利上げ開始時期についてECBは難しい判断を迫られそうです。

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