金融市場NOW

EUがIT大手企業の監視を強化

2018年05月02日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

個人情報やプラットフォーマー利用ユーザーの保護を強化

  • EU(欧州連合)が、プライバシー等個人の権利の保護や寡占化が進むデジタル市場での公正な競争確保の取り組みを強化。
  • 当動きはプラットフォーマーの管理コストの増加をもたらす可能性も。行き過ぎた規制はIT技術革新を阻害するとの見方も。

EUがIT大手企業への監視の強化に乗り出しています。背景にはデジタル市場での寡占化を防ぎ、公正な競争を確保すると共に、プライバシー等個人の権利の保護を強化する目的があるとされています。4月26日、EUの執行機関である欧州委員会は加盟国と欧州議会に規制案を提案しました。50人以上を雇用して売上高が1,000万ユーロ(約13億円)以上の、外部の企業にインターネット上のプラットフォーム(基盤)を提供しているプラットフォーマーと呼ばれる企業が対象となります。本社所在地の有無にかかわらず、提供するサービスを使用する相手がEU域内に居住していれば対象となります。新規制案では、プラットフォーマーが守らなければならないEUレベルのルールが明確化されます。たとえば、ネット検索ランキングで取引先企業の商品やサービスの順位をつける場合、その評価基準などを情報開示するよう義務付けられます。偽ニュース対策の強化もプラットフォーマーに求められます。新規制案は早ければ2019年に承認される可能性があります。

5月25日からは、検索履歴等を活用して個人の好み等を特定する「プロファイリング」と呼ばれる手法に対して異議申し立てが出来る権利を盛り込んだ「一般データ保護規則(GDPR)」の適用が始まります。これらの動きはプラットフォーマーの管理コストの増加やユーザーの減少をもたらす可能性もあります。尚、規制が行き過ぎると投資・研究意欲を後退させ、IT分野の技術革新を妨げる恐れがあるとの指摘もあります。

1. EUが検討するプラットフォーマー規制案

対企業

  • 一方的・不公正な取引を規制するため、(1)検索ランキングにおける評価基準の開示義務付け、(2)不当な取引を迫られた企業を救済するための苦情処理制度の導入等を行う。

対個人

  • 偽ニュース対策として、7月末までに行動規範を作り、自主規制を強めるように要求。年末までに偽ニュースが減らない場合には法規制導入も検討する。

出所:欧州委員会公表資料等各種情報をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

2. GDPRの概要

GDPRとは

  • 「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)」の略称で、欧州経済領域(EEA=EU加盟28カ国およびノルウェー等31ヵ国)の個人データ保護を目的とした管理規則で、2018年5月25日から適用が開始される。
  • 違反企業に対して厳しい罰則が定められている。個人データの取り扱いに関し適正な管理が行われていなかった場合には、最大で当該企業の全世界年間売上高の4%以下または2千万ユーロ(約26億円)以下のいずれか高い方が制裁金として課される(個人情報の扱いに違法性が認められる場合等は更に重い制裁金が課される)。組織の規模、公的機関、非営利団体等関係なく原則として対象となる。
  • EEA内に支店や現地法人などが無くても、EEA所在者の個人データをネット取引等でやり取りする場合は対象となる(日本企業も対象となる可能性がある)。

出所:欧州委員会公表資料等各種情報をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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