金融市場NOW

『2022年問題』回避へ

2018年08月22日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

生産緑地維持 宅地化抑制に向け働きかけ

  • 生産緑地が2022年に税制優遇の期限を迎え、大量の住宅用地が解放されることが懸念されている。
  • 候補は生産緑地のうち約8割と言われ、宅地供給が急激に膨らみ住宅市場が混乱する可能性も。
  • 近年、災害時の避難場所としての役割などから、都市部の農地の価値は再評価されつつある。

都市部を中心に“生産緑地”として指定され、30年間の税制優遇等の措置を受けてきた農地が2022年より順次期限を迎えることとなり、新たに大量の住宅用地が生まれることが懸念されています。放出の可能性のある地域は東京23区や、首都圏・近畿圏・中部圏内の政令指定都市や、その他整備法に規定する一部地域などが中心です(グラフ1)。候補となる土地は全国の生産緑地のうちおよそ8割と言われており、対策を講じずに農地が解放された場合、宅地供給が急激に膨らみ住宅市場が混乱することも予想されます。

生産緑地に指定されると固定資産税は農地並みに軽減されるほか、相続税の納税猶予を受けることが可能となっています。生産緑地の所有者はこのような優遇措置を受ける代わりに、建築物を建てるなどの行為が制限されるとともに、農地としての管理が求められていました。優遇措置が切れると、地主は10年の指定延長を行うか自治体への買い取り申請を選択することができ、自治体は特別の事情がない限りは農地を時価で買い取るものとされています。しかし、財政に余裕のない自治体は買い取ることは困難と言われています。実際に、予算不足等の理由から自治体による買い取りの実績はほとんどみられていないようです。これまで都市部の農地は『宅地化すべきもの』とみられてきましたが、人口減少に加え、災害時の避難場所としての役割などから、その価値が近年では再評価されつつあります(グラフ2)。農林水産省が生産緑地の新たな担い手と期待するのが企業やNPO(民間非営利組織)であり、今後はより柔軟な賃借手続きの導入などで生産緑地の維持を狙いたい意向です。

グラフ1:生産緑地は三大都市圏に集中している

※生産緑地の都市圏別内訳(2016年3月末時点) 出所:国土交通省のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:都市農地を保全すべきとの意見が多い

*三大都市圏特定市の都市住民2,000人を対象に農林水産省が2016年5月にWebアンケートを実施。 ※住民の都市農業・都市農地の保全に対する考え方 出所:農林水産省のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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