金融市場NOW

公的年金の資産残高と投資行動

2017年09月27日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

公的年金の国内株式投資は抑制された状態が続く可能性も

  • 2017年6月末時点で、公的年金の「株式等」と「外国証券」の合計額が過去最高を更新。
  • GPIF等が定める基本ウエイトとのかい離状況等から判断して、公的年金による国内株式買入れは抑制され、外国証券投資が中心となる可能性も。

日本銀行が9月20日に発表した2017年4~6月期資金循環統計(速報)のストック(残高)データによると、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や共済年金等の公的年金が保有する「株式等」と「外国証券」の合計額が前期比5.0%増の112.3兆円(各々46.7兆円、65.5兆円)となり、3期連続で過去最高を更新しました。米国の景気・企業業績拡大等による世界的な株高、日米金利差拡大観測等を受けた円安等による評価額の増加が追い風となりました。一方、「国債等(財政投融資債(注1)含む)」は債券から株式等リスク性資産への資金シフト方針のもと、前期比4.3%減少の72.2兆円となりました。ピーク時2001年7~9月期の176.0兆円からは約100兆円減少しています。

上記統計のフロー(売買)データによると、2017年4~6月期に公的年金は「株式等」を0.20兆円売り越しました。売り越しは4四半期連続です。GPIFと3共済(注2)のポートフォリオ(2017年6月末時点)に占める「株式等」のウエイトが、目標とする基本ウエイトをほぼ達成しているためと思われます。また、「国債等」を1.00兆円売り越しました。売り越しは16四半期連続となります。一方、「外国証券」は0.14兆円買い越しました。買い越しは13四半期連続です。基本ウエイトとのかい離をみると、GPIFと3共済の国内株式投資は抑制された状態が続きそうです。

  • 財政投融資を行なう資金の調達のために発行する債券
  • 国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団

グラフ1:公的年金の資産残高(ストック)

公的年金の資産残高(ストック)
出所:日本銀行のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:公的年金の売買状況(フロー)

公的年金の売買状況(フロー)
出所:日本銀行のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

表1:GPIFと3共済の資産残高(ストック)

※2017年6月末時点  私学とは日本私立学校振興・共済事業団

出所:GPIFや3共済のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成
項目 GPIF 3共済 GPIF+3共済 基本
ウエイト(%)
金額(兆円) ウエイト(%) 金額(兆円) ウエイト(%) 金額(兆円) ウエイト(%)
  国家公務員(兆円) 地方公務員(兆円) 私学(兆円)
国内債券 45.5 30.5 13.7 4.1 8.4 1.1 41.2 59.1 32.4 35.0
国内株式 36.4 24.4 8.3 1.3 6.1 0.9 24.9 44.7 24.5 25.0
外国債券 20.2 13.5 3.8 0.4 2.9 0.4 11.5 24.0 13.2 15.0
外国株式 35.7 23.9 6.9 1.3 4.7 0.8 20.9 42.6 23.4 25.0
短期資金 11.4 7.7 0.5 0.4 0.0 0.1 1.5 12.0 6.6
合計 149.2 100.0 33.2 7.6 22.2 3.4 100.0 182.4 100.0 100.0

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