金融市場NOW

EU理事会 不良債権処理への行動計画を採択

2017年07月25日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

EU(欧州連合)の不良債権処理を急ぐ姿勢が鮮明に

  • EU理事会で、域内銀行が抱える多額の不良債権処理のため行動計画を採択。
  • 銀行の資本増強や、不良債権を買い取る資産管理会社の設立などが計画されている。
  • 行動計画では短い期限での行動が求められており、EUは迅速な不良債権処理を目指す。

EUは加盟国の閣僚などで構成される政策決定機関である理事会を開き、域内の銀行が抱える不良債権処理のための行動計画を採択しました。EU域内には約1兆ユーロの多額の不良債権があり、これはEUの国内総生産(GDP)の2016年12月末時点で6.7%に匹敵し、全銀行のローン残高に占める不良債権比率はEU平均で5.1%と公表されました(グラフ1)。単純比較は難しいものの、2015年12月末時点の米国の1.7%や日本の1.6%と比較しても、EU圏では不良債権処理が遅れていることがわかります。中でも南欧諸国の比率の高さが目立ち、ギリシャは45.9%、キプロスは44.8%と特定の国に偏っています(グラフ2)。

理事会では「銀行の監督」、「債務不履行債権の回収スキームの再構築」、「不良債権を売買できるマーケットの整備」、「銀行の再編」を重要な課題と認識しており、採択された行動計画はこれらに沿った形で改革項目が列挙されています。欧州銀行監督局に不良債権処理などに係るガイドラインの作成を求め、EU域内の全銀行に適用していくことや、各国に不良債権の買い取りを行う資産管理会社の設立などを求めています。また、各銀行には不良債権への備えが欧州中央銀行(ECB)が不十分と判断すれば資本増強を求めたり、不良債権を売買できる流通市場の拡充なども盛り込まれました。

特徴的なのは上記の行動計画が、ほぼ1~2年程度の短い期限での行動を求められている点です。不良債権処理を迅速に進めていきたいEUの姿勢が鮮明になっていると思われます。実質GDP成長率(前期比)が2017年1~3月期時点で16四半期連続プラス成長を続ける等、ユーロ圏経済は回復傾向を続けており、今回の行動計画採択からはEUの景気回復へ向けた自信と前向きな姿勢が感じ取れます。

グラフ1:EU圏全体の不良債権比率の推移

EU圏全体の不良債権比率の推移
出所:欧州銀行監督局データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:EU各国の不良債権比率(2016年12月末)

EU各国の不良債権比率(2016年12月末)
出所:欧州銀行監督局データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

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