金融市場NOW
J-REIT市場 現状と今後の見通し(3)
2012年05月31日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
都心のオフィス供給のピークアウト(空室率・賃料の改善)
都心5区の賃貸オフィス空室率(平均)は、足元高止まりしています。これがJ-REIT市場の上値を抑える要因ともなっています。(グラフ3)
国内景気が回復傾向にあるにもかかわらず、空室率が低下しない原因のひとつとして、「オフィスの2012年問題」があります。これは東京23区での新規オフィスの供給量が大きく増加し、その結果既存の物件の稼働率に悪影響を及ぼすとの見方です。(グラフ4)
ただし、この新規供給も6月でピークを超えると見られます。また東京都心5区の賃料は大きく下落しており、新規ニーズを呼び込みやすい水準ともなっています。
復興予算の本格執行等により国内景気は回復基調が続いていると思われます。6月の新規供給のピークを過ぎれば、空室率の改善が進むものと見られ、それが後の賃料底打ち・上昇に繋がっていくものと考えられます。
尚J-REITは耐震性の優れた物件を多く保有しています。都心5区に比べ、J-REITが保有するオフィス(全国)の空室率は低い水準にあります(グラフ5)。また昨年3月の震災以降、空室率の低下が顕著になっています。借手が震災対応力を重視し始めた結果ですが、改めてJ-REIT保有物件の競争力の高さをうかがい知ることが出来ます。
グラフ3:東京都心5区の空室率
(2002/1~2012/4:月次)

グラフ4:東京23区の大型ビル供給状況・予想
(1986年~2016年:年次/2012年~2016年は森ビル予想)

延床面積1万?以上のオフィス用途部分が対象
グラフ5:東京都心5区・J-REIT保有オフィスの空室率推移

出所:三鬼商事、投資信託協会のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成
- 今年4月の4年半ぶりの新規上場、日銀による買入枠の増加、海外投資家の国内不動産への回帰など、J-REIT市場が好転に向かうための条件が徐々に整いつつあると思われます。
- 欧州債務危機等の要因で株価は足元調整ムードとなっていますが、J-REITの収益環境は着実に改善していくものと思われます。今後のJ-REIT市場の反発局面入りが期待されます。
金融市場動向
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