金融市場NOW

J-REIT市場 現状と今後の見通し(2)

2012年05月31日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

J-REIT市場の活性化(不動産デフレからの脱却)

日本銀行は、4月27日の金融政策決定会合で、J-REIT買入予定枠を100億円増額して総額で1,200億円としました(前ページグラフ1) 。買入実績は、5月18日現在で累計858億円、残り枠は342億円です(表2)。 日本銀行の買入には、J-REITの株価を下支えして資金調達環境の悪化を防ぎ、J-REITを通じた不動産取引の活発化による不動産デフレからの脱却を図るという目的もあるものと思われます。実際J-REITは公募増資等による資金調達により、新規の物件取得を拡大させています(表3、グラフ2)。
昨年12月24日に閣議決定された「日本再生の基本戦略」の中にもJ-REIT市場の活性化が掲げられており、資金調達手段の多様化等の検討が開始されています。

表2:日本銀行の買入消化状況(2012年5月18日時点:億円)

出所:日本銀行のデータを基にニッセイアセットマネジメント作成
買入予定額 消化額 消化率(%) 残り枠
1,200 858 72 342

表3:2011年のJ-REITの主要取得物件

出所:各種報道を基にニッセイアセットマネジメント作成
取得日 取得価格
(億円)
投資法人 資産名称、主用途 取得先
2011年 9月1日 363 日本ビルファンド 三菱重工ビル(準共有持分60%)、オフィス 三菱重工業
11月15日 608 ジャパンリアルエステイト 赤坂パークビル、オフィス 三菱地所

グラフ2:年別物件取得金額

出所:不動産証券化協会、各社データを基にニッセイアセットマネジメント作成

国内実物不動産への海外資金の流入増加(地価の底打ち)

5月25日の各社の報道によれば、ゴールドマン・サックスが4年ぶりに日本の不動産への投資を再開し、その規模は1,000億円程度になるとのことです(表4)。 資金流入増加の要因としては、これまでの地価下落により底打ち感が出始めていること、世界的に見た割安感、日本の不動産市場の流動性の高さ等が挙げられます。 海外資金による国内不動産の取得が活発化すれば、地価の反転・上昇の時期を早め、J-REIT市場にも好影響をもたらすものと考えられます。

表4:最近発表された主な海外投資家による不動産投資計画の概要(投資予定金額が1000億円以上)

出所:各種報道を基にニッセイアセットマネジメント作成
発表日 投資家 概要 金額
2012年5月 Goldman Sachs 今夏に専用のファンドを立ち上げ。年金基金等から資金を集め、都心のオフィス等に投資。投資額は1000億円規模に。国内不動産への投資は約4年ぶり。 1000億円
2012年3月 Goodman Group 東京港、川崎港、横浜港に隣接するエリアの物流施設用地取得を発表。竣工時の想定資産価値は135億円超。今後1年~1年半の間に1000億円規模の物流施設を開発。 1000億円
2012年2月 グロブナー 今秋を目処に1000億円規模の日本の不動産に投資するファンドを立上げ。欧州の景気後退は安定した日本の不動産投資に追い風になるとの判断。 1000億円

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