アナリストの眼

スチュワードシップ・コードで思うこと

掲載日:2015年02月04日

アナリスト

投資調査室 醒井 周太

ここもと、ROEやガバナンス関連のニュースを新聞等で目にしない日が無いと言っても良い程、議論が高まっています。大きな変化の胎動を感じる毎日です。

2014年6月24日に「日本再興戦略2014」が公表されました。その中で、改革の10の焦点として、「コーポレートガバナンスの強化」が取り上げられました。
日本の「稼ぐ力」を高め持続的な価値創造を実現し長期的なリターンを得られる仕組み、即ち経済の「インベストメント・チェーン」の全体最適化による好循環及び持続的成長を確保することが目指されています。

この一環で、直近、以下のような法律や規範が制定されてきました。

2014年1月:産業競争力強化法が制定
2014年2月:日本版スチュワードシップ・コードが策定
2014年6月:会社法(社外取締役の導入促進)が改正

そして、2015年にはいよいよコーポレートガバナンス・コードが策定され、一連のプロセスが完成することとなります。

またこれに合わせる形で、2014年8月には、経済産業省から「伊藤レポート」も発表されました。持続的成長への競争力とインセンティブ(企業と投資家の望ましい関係構築)をめざし、様々な提言がなされています。

今回は、特に我々にとって重要なスチュワードシップ・コードについて触れてみます。
スチュワードとは、執事、財産管理人の意味を持つ英語ですが、スチュワードシップ・コードとは、日本語で端的に言えば、「機関投資家責任原則」という表現になります。

イギリスでは、2010年に金融機関によるコーポレートガバナンスへの取り組みが不十分であったことが、リーマン・ショックによる金融危機を一層深刻化させたとの反省から策定・導入されました(2010年7月公表、2012年9月改訂)。世界的には、カナダ、スイス、マレーシア、等でも制定されています。

日本版スチュワードシップでは、活動の中心として、「目的を持った対話(エンゲージメント)」が重視されています。中でも、我々が重要と改めて認識しているのが原則7です。

原則7

機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適正に行うための実力を備えるべきである。

日々の取材等で、多くのマネジメントの方々と接する機会を頂いていますが、より一層勉強に励み、教科書的なファイナンス理論に縛られることなく現地・現物との距離を縮めることで、「実力を備え」、パフォーマンスに貢献できるよう、努めていきたいと考えています。

末筆ながら、2014年末にニッセイアセットの投資調査室のアナリストを中心に「スチュワードシップ・コード時代の企業価値を高める経営戦略(企業と投資家の共生に向けて)」を出版(中央経済社)しました。
日本版スチュワードシップ・コードが導入される中、企業に対して投資家が重視する企業評価・株価評価の視点を伝え、企業価値の考え方を同じ土俵で共有し、対話促進に繋げたいとの想いで書き上げたものです。
ご参考にして頂ければ幸いです。

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