アナリストの眼
「正倉院御物」と「ブランド」(3)
掲載日:2012年05月23日
- アナリスト
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投資調査室 中谷 幸司
ブランド力で見る「正倉院展」(つづき)
3.見た目のデザイン・意匠
「正倉院文様」に見られるようにデザイン、姿、形が秀逸でまさにアートのジャンルに入るものが少なくありません。
種類としては「動物文様」「幾何文様」「植物文様」「自然文様」他など様々です。
「鳳凰」「朱雀」「花鹿」「菱」「琵琶」などの表現を見る限り、天平の工人達はアーティストだったのでしょう。
現代のブランドもまさにデザイン勝負の世界です。ロゴマークはもちろんいかにクールに見せるか、がポイントであることは言うまでもありません。「正倉院文様」にある【鳳凰】の羽根など、NIKEのロゴマーク「スウォッシュ」に相通ずるものがあるようにも思えます。(「スウォッシュ」は女神ニーケーの彫像の翼をモチーフにデザイン、飛び立つ躍動感と表現したもの)
4.露出工夫
滅多にお目にかかれないレアさの演出や操作された露出などの見せ方の工夫も特徴でしょうか。
「正倉院展」は年に一度、17日間だけ、しかも場所は古都奈良世界遺産エリアのど真ん中。 ありふれた存在でなく特別な機会や場所での露出(NY五番街や銀座などの一等地、あるいは空港免税店エリアでの出店あるいはオリンピックなどのビッグイベント会場での広告など)戦略と相通ずるかもしれません。
5.変化
「正倉院御物」は約9,000点と云われています。毎年の「正倉院展」で展示されるのはわずか60点前後ですから、全部を拝観するのに計算上は約150年!
もちろんある一定の期間でリピートして出展されるケースもあ りますが毎回、新たな変化、未知の宝物を拝観できるという意味では鮮度が維持されているといえます。
既存の製品・商品の骨格を維持しながらいかにイノベーションを行い、ブランドとしての鮮度・命を維持するのか、はまさに多くの企業が直面している課題かと思います。
しっかりしたブランド力を擁する企業の製品・商品・サービスには持続性・サステイィナビリティがあります。
なぜならブランド力があるということは競争環境下において価格を主体的に設定しながらシェアを高めるか或いは維持できるということに他ならないからです。
和菓子・老舗旅館の世界はもちろんですが長い歴史を乗り越え、事業を持続している企業はまさに勝ち組ブランド企業といえるでしょう。
株式投資の観点では企業評価において資本効率の水準、持続性が将来のキャッシュフローを想定する上で極めて重要で、企業の持つブランド力をどう評価、判断するかとまさに表裏一体かと思います。
「正倉院御物」は超越した究極のブランドでありかつ超越した人類全体の歴史宝物でしょう。 1300年は期間としては超越していますが国内外において長期にわたり持続的に競争力のあるブランド製品・サービスを提供する企業には適切な評価手法を以って投資していくことが望まれます。
また資産運用業界もその提供する商品と共に持続的な事業発展を目指すなら、相応しいブランド力の構築が必要であることはいうまでもないでしょう。
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