アナリストの眼
「正倉院御物」と「ブランド」(2)
掲載日:2012年05月23日
- アナリスト
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投資調査室 中谷 幸司
ブランド力で見る「正倉院展」
さてブランドに該当する日本語を探し出すのは難しく、「商標」「意匠」「のれん」などですがしっくりきません。
英語Brandは、西洋において畜農家が自分の家畜が盗まれないよう区別するため焼印をつけたこと(ノルウェー古語brander=焼印をつける)という意味もあったようです。
デザイン、意匠、商標などで分け隔てられているブランドのもっとも大事なポイントはわかりやすく、区別されていて、類似品、サービスと明確に差別化されていることでしょうか。
高額ファッション品や宝飾品に限らず今やブランド構築こそが企業提供の商品、サービスが大事なポイントとされてきています。
もし究極のブランドとして「正倉院御物」、「正倉院文様」を見るなら、以下の特徴が当てはまるのではないでしょうか。
1.歴史とストーリー
「正倉院御物」は約1300年の歴史があり、およそ世界の歴史でこれほどの古さのものが完全無欠に近い状態で保存・維持されている事例はめずらしいといえます。校倉造りの倉も1300年前のままの姿がそのまま残っています。

ちなみにアマゾンで「正倉院」で検索すると750件もヒットしてしまいます。
なぜ前代未聞の大量の宝物が保管されたのか? なぜ東大寺(右図)だったのか? 恵美押勝の乱との関連は?
奈良時代~明治時代に至るミステリアスな宝物の増減の謎など。
正倉院御物はまさにブランドに相応しい歴史とストーリーに満ちています。
シャネル、ルイ・ヴイトン、ディズニー、ティファニーあるいはナイキといった成功ブランドには必ず歴史があり(長短にかかわらず)、ストーリー(場合によっては都市伝説も)があります。ブランドと由緒・由来は表裏一体の関係でしょう。
映画「ティファニーで朝食を」は不朽の名作ですが、これなど結果的にオードリー・ヘップバーンの魅力と共にブランドが永久に愛され続けるきっかけになっているかもしれません。
2.クオリティ・世界観
「正倉院御物」の品々は調度品、楽器楽具、遊戯具、仏教関係品、年中行事用具、飲食器、服飾品、工匠具など多岐にわたりますがいずれもそのクオリティ水準は高く、現代でも再現が難しい技術、技量を使ったものがほとんどです。
8世紀前後の超一流の技術由来で中国盛唐の文化を母体しながら、大陸から舶来した品々はもとより国産のものもまた、シルクロード周辺の主要文化圏、すなわち唐をはじめ、インド、イランからギリシア、ローマ、そしてエジプトにも及ぶ各国の諸要素を使ったコスモポリタンな世界観が実現されています。
確かなクオリティとその裏づけとなる世界観はまさに現代のブランドに通じる条件でしょう。
素材の良さ、使い勝手の良さ、耐久性、何度でもリピートしたくなるサービスなどはまさにブランドになくてはならないものです。
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