金融市場NOW

景気回復を見据えた新興国への資金流入が進む

2021年06月11日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

米ドル資産に逃避した資金がふたたび新興国市場へ

  • ワクチン接種の遅れが景気回復を妨げるとみられるものの、ワクチン普及後の景気回復期待は高く、新興国市場への資金流入が進んでいる。
  • 先進国を上回る高い経済成長が期待されていることや、先進諸国対比で高い利回りが期待できる新興国市場は、有望な投資先として注目が集まる。

ワクチン普及後の景気回復期待が高まる新興国

グラフ1:新興国は高い経済成長が期待されている

  • ※新興国の実質GDP成長率推移
  • *2021年以降はIMFによる2021年4月時点の予想値
  • 出所:IMFのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

欧米を中心に新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、活動制限が緩和されつつある一方、財政がぜい弱でコロナ対策費用を十分に確保できない多くの新興国で接種の遅れがみられます。20カ国・地域(G20)の首脳らが新興国へのワクチン支援を表明していることなどから、今後は、新興国における接種が加速することが期待されます。ワクチン普及後の新興国諸国の景気回復期待は高く、IMF(国際通貨基金)は、2021年の新興国の実質GDP(国内総生産)成長率が6.7%と、リーマンショック後の2010年来の伸びとなるとの見通しを示しています(グラフ1)。

景気回復期待から新興国への投資が進む

グラフ2:新興国市場の時価総額は増加傾向にある

  • ※新興国株式・債券の時価総額の推移
  • *新興国株式はMSCI EMインデックス、新興国債券はGBI-EM グローバル・ダイバーシファイドの時価総額
  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

ワクチン接種進展による景気回復を見据え、新興国市場への資金流入が加速しつつあります。感染拡大による先行き不透明感から、2020年初よりリスク性資産から米ドル資産に逃避する動きが急速に進み、新興国市場からも1,000億米ドルを超える資金が引き揚げられました。主要国の中央銀行による大規模な金融緩和などにより、新興国への資金流入は回復傾向にあったものの、新興国でのワクチン確保が懸念された今年3月には、景気回復が遅れるとの懸念から一時的に資金が流出しました。足元では、G20からのワクチン支援表明などを受け、資金流入も一因に、新興国株式・債券市場の時価総額も増加しています(グラフ2)。

  • 国際金融協会(IIF)調べ。

資金流入により新興国通貨も堅調に推移

グラフ3:米ドルから新興国通貨へ資金流入が進む

  • ※MSCI新興国通貨指数と米ドル指数の推移
  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

2020年初から3月末にかけて大幅下落した新興国通貨は、欧米諸国が経済活動を段階的に再開し始めた2020年5月下旬より上昇に転じています。代表的な新興国通貨の値動きを示すMSCI新興国通貨指数は、5月下旬より連日で史上最高値を更新しています(グラフ3)。今後の感染状況には注意が必要であるものの、先進国を上回る経済成長が期待されていることや、大規模な金融緩和が続く先進諸国対比で高い利回りが期待できる新興国市場は、有望な投資先としてさらに注目が集まりそうです。

金融市場動向一覧へ

「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点

当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。

【当資料に関する留意点】

  • 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
  • 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
  • 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
  • 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。